表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
27/90

第27倭 トノンするシオンとヤオヨロズ観ずる亡国姫

いしきすまいとおもえどしぜんアン=フスコトイ(長い夜)を過ごしたヤチホコは…?

「…お、おはようございます…」


 このルース宅においては…クンナノイペ(朝食)の準備に誘われて一行で一番早く目覚めて降りてくるのがヤチホコである。

 いつもなら喜び勇んで準備の(かぐわ)しさを楽しみながら挨拶するところであるが…食いついてくる気配すらない。よろめきながら力なく歩いて席に向かっている。


「おはようヤチホコちゃん…大丈夫?」


 (シャン)が心配そうに尋ねるとヤチホコは力なく応えた。


「は、はい…大丈夫…です…」


 ヤチホコはまったく大丈夫そうではない返事をして力無く椅子に腰かけた。


(…目にクマ…消沈気味(しょうちんぎみ)葛藤(かっとう)の様子…なるほどな…)


 ルースは香に耳打ちした。軽く(うなず)いて香がヤチホコの(となり)に座り優しく頭を()でながら話し始めた。


「…ヲノコだもんね♪…ア=オマプ=ペ(可愛い娘)だって気づいちゃった?」


 ヤチホコは驚いて飲んでいた水を吹き出して香を見る。


「…スセリちゃんも…ミチヒメちゃんも…とぉってもイイヨマプカ(めんこくてカワイイ~)だもんね~♪」


 微笑みながらそう言う香のコッパラ(胸元)も大概無防備で…意識すまいと思えど自然に視線が追ってしまう…。


「ふふ、良いよ、見ても♪ さわってみてもイイよ♡…興味あるんだよね…♪」


 ミチヒメやスセリ同様の…起伏(きふく)が少なくなだらかで(なめ)らかで(つつ)ましやかな身体つきでアスカンネ=ピリカ(清楚さ)を同居させながらもまごうことなきモイレ=マトゥ(大人の女性)と言う、キンラ=ピリカ(神がかり的な美しさ)とも言うべき魅力(みりょく)を備えた肢体(したい)である。


イラムモッカ(からかい半分)などではなく、処理できないイレンカ(ヲモヒ)抱えてエランナク(悩む)するより、理解(りかい)して納得(なっとく)して行動(こうどう)して解消(かいしょう)した方が建設的(けんせつてき)だもんな!」


 ルースがその様に助言してきた。


(…確かにその通りです…しかし…香さんにそんなことを…僕がもしもしたとして…ルースさんは気にしないのでしょうか…?)


 同意しながらもその様に思案(しあん)躊躇(ちゅうちょ)しているヤチホコへはさらに伝える。


「…ポンウタリ(子供)に大切な事を教えて悩みを解消してあげる。とってもイイ事じゃない♪」


 そう言ってきた香は見た目はマッカチ(少女)に観えてもやはり大人の女性(モイレ=マトゥ)である。

 ルースも香がどの様なイレンカでヤチホコに接しているのかを理解している為優しく見守っているのであろう。

 ヤチホコはマク=ケ=サム=ア(意を決する)して…おずおずと手を伸ばし触れてみた…。滑らかな手触りであるのはスセリ達と同様であるが、どちらかと言えば張りのある硬さを感じるスセリ達とは全く対照的な柔らかさであった。


「ビンカンな所だから…優しく包むようにね…気持ちはワカるケド…ソコばかり(いじ)らないでね…」


 香はヤチホコの頭を優しく抱えて自分の胸元(コッパラ)に顔を押し当てた。


「…そっと、やさしく、ね」


 そのイタク(言の葉)を聞いた後…ヤチホコはコッパラからトット(乳房部)トットヌム(乳頭部)と…イレンカのままトノン(授乳)されるシホン(赤子)の様に…ラムハプル(優しく)…しかしソンノ=コトゥステク(一心不乱)に求めた。

 欲求(よっきゅう)罪悪感(ざいあくかん)羞恥心(しゅうちしん)好奇心(こうきしん)入り交(い ま)じり…強烈(きょうれつ)交感神経(こうかんしんけい)優位(ゆうい)となり血圧心拍数(けつあつしんぱくすう)上昇(じょうしょう)顔面紅潮(がんめんこうちょう)全身振戦(ぜんしんしんせん)で強くエサムペルイルイ(胸が波打つ)なのを感じながらもラム=アサム(心の底)からラム=シリネ(満たされ安らいでいく)するのを観じた。


「…ウコサムペ=ピリカ(慈しみあう)イレンカ(ヲモヒ)で触れ合うと…とってもラム=シリネするでしょ?」


「…はい! すごくエサムペルイルイしますが…とてもラム=シリネします…♪」


 (シャン)微笑(ほほえ)んで(うなず)きながら無心(むしん)に求めるヤチホコの頭を優しく撫でていた。


「…落ち着いたかな…?」


「あ!…は、はい…!」


 そのイタク(言の葉)ヤイヌパ(我に返る)し、頬を紅潮(ほお こうちょう)させて(うつむ)きながら(こた)えた。


「ウコサムペ=ピリカのイレンカでカムカ()を触れ合わせるのはとても良いコト。イタクに出来ないイレンカも…伝えられるからね♪…トノンは栄養だけでなく…ウコサムペ=ピリカ(慈しみあう)のイレンカ、そして…トゥムや…ヌプルもラムハプル(惜しまず与える)するモノなの♪そうやって…ヤチホコちゃんも…エピリカクル=レスパ(大切に育てる)されてきたはずだよ♪」


 ヤチホコは確かにペンラムコトロ(胸の内)にとてもあたたかいナニカが宿った気がした。

 先程までの苦しさはもうない。


「さぁって…朝食(クンナノイペ)を仕上げちゃうから、少ししたらみんなを起こしてきてね♪」


「あ、はい!」


 いつもの通りの素敵なクンナノイペを笑顔で摂り終える頃、ルースが話し始めた。


「実はうちの領主から連絡があって、ポロ=モシリ(大国)(みかど)が我々と直接会って話したいらしい。…良ければみんな一緒についてきてもらえるかな?」


「あ、領主って…楽浪郡(ローランジュン)太守崔理(たいしゅチェリ)さまからですか?」


「そうだ。どこに一番関心持たれたのかはわからないけどな。…良いかな?」


 一同心よく了承し全員で向かう事になった。

 一旦北上し、パセ=コル=モシリ(高句麗)を背にし山々を迂回しながら南西の方角へ渤海(ボォハィ)沿岸を進み黄河(フゥァンクァ)に沿って都たる雒陽(ルゥォヤァン)を目指す。

 その道程は…このモシリに一番近いトゥスクル=モシリ《巫女の治めし国》からパセ=コル=モシリまでの倍以上あると言う。現在のヤチホコ達でも二~三日はかかるらしく、シピネ(身支度)を整えてからの出立(しゅったつ)の様である。


「ホントはアトゥイ()越えてまっすぐ行くともっと速いんだケドね~!…臨湽(リンツゥィ)はあんまり治安(ちあん)良くないみたいだからちょっと避けておこっ!って思ったんだよね~♪」


 ヤレパチプ(大型万能船)の甲板の上でレラ()を浴びて気持ちよさそうにしながらミチヒメはそう言った。


「そうなのですね。…あ、そう言えば…ミカヅチ…さんは…?」


「…わたしはなんにも聞いてないけど~?」


 ミチヒメは知らないらしくそう答えた。


「あぁ…なんでも…行かねば、会わねばならない場所と緋徒(ヒト)がいると言って旅立っていったな」


 甲板に上がってきたルースが代わりにそう応えた。


「そうでしたか…。では…あの刻の…“正しきこと”…観えたのですね…」


「だろうな。あれはマク=ケ=サム=ア(決意を秘めた)な目だったからな」


 エシカルン(思い出す)しながらルースは(こた)えた。


「…過去の話聞きし今、同情の余地(どうじょう よち)はあろうとも…自身もまたウェンプリ(罪を犯す)せし故…ヤイヌパ(我に返る)されし今は…辛いであろう…」


 怒りや苦しみや悲しみ…恐怖(きょうふ)焦燥感等(しょうそうかん)…様々なイレンカがトゥケチャロマプ(両刃の剣)越しに伝わってきたのをエシカルンしながらウガヤもそう言った。


「たんっじゅんにワルモノだったら憎み切れたんだけど…ね…。みんな…ヤオヨロズたちも…ミカヅチを()つよりも…生かしてイレンカクワ(贖罪しょくざい)させるコト…そしてミカヅチ(彼女)自身にも救いがあるようにって…そう言っているみたいな気がするの…♪」


 目を()せ耳を()ませながら…(あまね)くモノに宿ると言うヤオヨロズ(精霊)達となった下伽耶(アラカヤ)ウタラ()達の声ならぬ声を(かん)じ取ったかの様にミチヒメはそう言った。


「そうトラ…!ヤオヨロズとなってるみんなのイレンカは…大体そんなとこトラ♪」


「大分…モシリを行き交うヤオヨロズ達のイレンカも観じられるようになりましたね♪」


「うん…。なんか…あの刻…五芒封印(ウブ=イキネイペカ)の為みんながわたしの中に入った…?あの後から…前となぁんかちがう気がするのよね~♪」


 ビャッコとスザクの言葉に対しミチヒメはその様に応えた。

 辺りを見ると日が暮れ始めていた。今日はこの辺りで休もうとの声が聞こえてきた。

優しいイレンカ(ヲモヒ:想い)でお互いにウコサムペ=ピリカ(慈しみあう)のが何より大切ですよね♪その上で触れ合うからこそ…尊く素敵である…僕はそう思います♪


ミチヒメはアノ後からナニカが変わったようです…?


地名などの説明ですm(__)m

雒陽:らくよう:漢時代の書き方、首都。 洛陽:現代

黄河:フゥァンクァ そのまま黄河の事です。支流に洛水があり、洛陽が隣接します。

臨湽:リンツゥィ。青洲(現在の山東省)にある地。


用語説明ですm(__)m


振戦:ふるえの正式名称です。体温維持の為にふるえるのは「ふるえ熱産生」と言います。(シバリング:体温低下時に状態保持の為に筋の不随意的振戦により熱産生を行う事です)


アスカンネ=ピリカ:アスカンネ=清潔だ、きれいだ+ピリカ=美しい、上質だ→「清楚さ」としました。

ウコサムペ=ピリカ:互いに思いやりがある→「慈しみあう」 としました。

ラム=シリネ(シンネ):sinneがsirne(sirine)由来らしいので語源と思われるこちらを使いました。元々満足する、安心するの意味で、そこから「満たされ安らぐ」としました。

ラム=アサム:心+底で「心の底=(心底の意)」としました。

ソンノ=コトゥステク:ソンノ=本当に、真に+コトゥステク=夢中になる→「一心不乱」としました。

マク=ケ=サム=ア:マッケサマ。内心の決意。※元々の語源は先に書いたとおりの単語の集合です。アイヌ語(古代の大和言葉も)は一音一音に意味がありますので、なるべく語源に近くと言う事でです。「意を決する」「決意を秘めた」等に意訳しました。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ