第27倭 トノンするシオンとヤオヨロズ観ずる亡国姫
いしきすまいとおもえどしぜんアン=フスコトイ(長い夜)を過ごしたヤチホコは…?
「…お、おはようございます…」
このルース宅においては…クンナノイペの準備に誘われて一行で一番早く目覚めて降りてくるのがヤチホコである。
いつもなら喜び勇んで準備の馨しさを楽しみながら挨拶するところであるが…食いついてくる気配すらない。よろめきながら力なく歩いて席に向かっている。
「おはようヤチホコちゃん…大丈夫?」
香が心配そうに尋ねるとヤチホコは力なく応えた。
「は、はい…大丈夫…です…」
ヤチホコはまったく大丈夫そうではない返事をして力無く椅子に腰かけた。
(…目にクマ…消沈気味…葛藤の様子…なるほどな…)
ルースは香に耳打ちした。軽く頷いて香がヤチホコの隣に座り優しく頭を撫でながら話し始めた。
「…ヲノコだもんね♪…ア=オマプ=ペだって気づいちゃった?」
ヤチホコは驚いて飲んでいた水を吹き出して香を見る。
「…スセリちゃんも…ミチヒメちゃんも…とぉってもイイヨマプカだもんね~♪」
微笑みながらそう言う香のコッパラも大概無防備で…意識すまいと思えど自然に視線が追ってしまう…。
「ふふ、良いよ、見ても♪ さわってみてもイイよ♡…興味あるんだよね…♪」
ミチヒメやスセリ同様の…起伏が少なくなだらかで滑らかで慎ましやかな身体つきでアスカンネ=ピリカを同居させながらもまごうことなきモイレ=マトゥと言う、キンラ=ピリカとも言うべき魅力を備えた肢体である。
「イラムモッカなどではなく、処理できないイレンカ抱えてエランナクするより、理解して納得して行動して解消した方が建設的だもんな!」
ルースがその様に助言してきた。
(…確かにその通りです…しかし…香さんにそんなことを…僕がもしもしたとして…ルースさんは気にしないのでしょうか…?)
同意しながらもその様に思案し躊躇しているヤチホコへはさらに伝える。
「…ポンウタリに大切な事を教えて悩みを解消してあげる。とってもイイ事じゃない♪」
そう言ってきた香は見た目はマッカチに観えてもやはり大人の女性である。
ルースも香がどの様なイレンカでヤチホコに接しているのかを理解している為優しく見守っているのであろう。
ヤチホコはマク=ケ=サム=アして…おずおずと手を伸ばし触れてみた…。滑らかな手触りであるのはスセリ達と同様であるが、どちらかと言えば張りのある硬さを感じるスセリ達とは全く対照的な柔らかさであった。
「ビンカンな所だから…優しく包むようにね…気持ちはワカるケド…ソコばかり弄らないでね…」
香はヤチホコの頭を優しく抱えて自分の胸元に顔を押し当てた。
「…そっと、やさしく、ね」
そのイタクを聞いた後…ヤチホコはコッパラからトット~トットヌムと…イレンカのままトノンされるシホンの様に…ラムハプル…しかしソンノ=コトゥステクに求めた。
欲求と罪悪感と羞恥心と好奇心が入り交じり…強烈に交感神経優位となり血圧心拍数上昇顔面紅潮全身振戦で強くエサムペルイルイなのを感じながらもラム=アサムからラム=シリネするのを観じた。
「…ウコサムペ=ピリカなイレンカで触れ合うと…とってもラム=シリネするでしょ?」
「…はい! すごくエサムペルイルイしますが…とてもラム=シリネします…♪」
香は微笑んで頷きながら無心に求めるヤチホコの頭を優しく撫でていた。
「…落ち着いたかな…?」
「あ!…は、はい…!」
そのイタクにヤイヌパし、頬を紅潮させて俯きながら応えた。
「ウコサムペ=ピリカのイレンカでカムカを触れ合わせるのはとても良いコト。イタクに出来ないイレンカも…伝えられるからね♪…トノンは栄養だけでなく…ウコサムペ=ピリカのイレンカ、そして…トゥムや…ヌプルもラムハプルするモノなの♪そうやって…ヤチホコちゃんも…エピリカクル=レスパされてきたはずだよ♪」
ヤチホコは確かにペンラムコトロにとてもあたたかいナニカが宿った気がした。
先程までの苦しさはもうない。
「さぁって…朝食を仕上げちゃうから、少ししたらみんなを起こしてきてね♪」
「あ、はい!」
いつもの通りの素敵なクンナノイペを笑顔で摂り終える頃、ルースが話し始めた。
「実はうちの領主から連絡があって、ポロ=モシリの帝が我々と直接会って話したいらしい。…良ければみんな一緒についてきてもらえるかな?」
「あ、領主って…楽浪郡の太守崔理さまからですか?」
「そうだ。どこに一番関心持たれたのかはわからないけどな。…良いかな?」
一同心よく了承し全員で向かう事になった。
一旦北上し、パセ=コル=モシリを背にし山々を迂回しながら南西の方角へ渤海沿岸を進み黄河に沿って都たる雒陽を目指す。
その道程は…このモシリに一番近いトゥスクル=モシリ《巫女の治めし国》からパセ=コル=モシリまでの倍以上あると言う。現在のヤチホコ達でも二~三日はかかるらしく、シピネを整えてからの出立の様である。
「ホントはアトゥイ越えてまっすぐ行くともっと速いんだケドね~!…臨湽はあんまり治安良くないみたいだからちょっと避けておこっ!って思ったんだよね~♪」
ヤレパチプの甲板の上でレラを浴びて気持ちよさそうにしながらミチヒメはそう言った。
「そうなのですね。…あ、そう言えば…ミカヅチ…さんは…?」
「…わたしはなんにも聞いてないけど~?」
ミチヒメは知らないらしくそう答えた。
「あぁ…なんでも…行かねば、会わねばならない場所と緋徒がいると言って旅立っていったな」
甲板に上がってきたルースが代わりにそう応えた。
「そうでしたか…。では…あの刻の…“正しきこと”…観えたのですね…」
「だろうな。あれはマク=ケ=サム=アな目だったからな」
エシカルンしながらルースは応えた。
「…過去の話聞きし今、同情の余地はあろうとも…自身もまたウェンプリせし故…ヤイヌパされし今は…辛いであろう…」
怒りや苦しみや悲しみ…恐怖や焦燥感等…様々なイレンカがトゥケチャロマプ越しに伝わってきたのをエシカルンしながらウガヤもそう言った。
「たんっじゅんにワルモノだったら憎み切れたんだけど…ね…。みんな…ヤオヨロズたちも…ミカヅチを討つよりも…生かしてイレンカクワさせるコト…そしてミカヅチ
目を伏
「そうトラ…!ヤオヨロズとなってるみんなのイレンカは…大体そんなとこトラ♪」
「大分…モシリを行き交うヤオヨロズ達のイレンカも観じられるようになりましたね♪」
「うん…。なんか…あの刻…五芒封印
ビャッコとスザクの言葉に対しミチヒメはその様に応えた。
辺りを見ると日が暮れ始めていた。今日はこの辺りで休もうとの声が聞こえてきた。
優しいイレンカ(ヲモヒ:想い)でお互いにウコサムペ=ピリカ(慈しみあう)のが何より大切ですよね♪その上で触れ合うからこそ…尊く素敵である…僕はそう思います♪
ミチヒメはアノ後からナニカが変わったようです…?
地名などの説明ですm(__)m
雒陽:らくよう:漢時代の書き方、首都。 洛陽:現代
黄河:フゥァンクァ そのまま黄河の事です。支流に洛水があり、洛陽が隣接します。
臨湽:リンツゥィ。青洲(現在の山東省)にある地。
用語説明ですm(__)m
振戦:ふるえの正式名称です。体温維持の為にふるえるのは「ふるえ熱産生」と言います。(シバリング:体温低下時に状態保持の為に筋の不随意的振戦により熱産生を行う事です)
アスカンネ=ピリカ:アスカンネ=清潔だ、きれいだ+ピリカ=美しい、上質だ→「清楚さ」としました。
ウコサムペ=ピリカ:互いに思いやりがある→「慈しみあう」 としました。
ラム=シリネ(シンネ):sinneがsirne(sirine)由来らしいので語源と思われるこちらを使いました。元々満足する、安心するの意味で、そこから「満たされ安らぐ」としました。
ラム=アサム:心+底で「心の底=(心底の意)」としました。
ソンノ=コトゥステク:ソンノ=本当に、真に+コトゥステク=夢中になる→「一心不乱」としました。
マク=ケ=サム=ア:マッケサマ。内心の決意。※元々の語源は先に書いたとおりの単語の集合です。アイヌ語(古代の大和言葉も)は一音一音に意味がありますので、なるべく語源に近くと言う事でです。「意を決する」「決意を秘めた」等に意訳しました。