第18倭 湧き出るスムと生み出されしチカラ
稽古と捜査の日々の様です…。
…僕達はあれから暫く稽古と捜査の日々を繰り返しています。
ウガヤ兄は付与霊呪~融合発動後の立ち回りについて、ミチヒメはアビヒコから受け取ったヌプルを元にトゥムを発動させた上でウカムレさせ、メル=ストゥ=マェを発動させる事、そしてそのまま動く事。そのまま戦える事を目標にしています。今日はどうやらウガヤ兄を相手に打を放っている様ですね…。ウガヤ兄は己自身ではなく武具のみの発動なので…一歩誤ると大変な事になるので全力の集中を以て相手をしています…。
アビヒコは二人にそれぞれエトゥッカさせた後、自身のヌプルと二人のトゥムをウカムレしようとしています…。
「くっ…!二人のトゥムをうまくそれぞれの半身で受け取らないと…!」
半魔状態になった上でどちら側にどちらのトゥムを受けるのが良いのか思案しているみたいです…。
「…ウガヤ兄みたいに…何かハイヨクペになら…簡単じゃないでしょうか…?」
「…でもそれだとぼく自身は生身で何もキロラスヌ=ネされていないからすぐにやられてしまう…」
「…オトゥイマシルンアイコヌカラするその弓と矢にトゥムとヌプルを込めてウカムレエトゥッカさせてみたらどうでしょうか…?」
ヤチホコの言になるほどそうかとアビヒコは早速試してみる。
元々ヌプルの扱いに長けているアビヒコは難なくヌプルをクとアィエに伝わらせていく…。
力強さの必要な弓とクカにはウガヤの…そして速さと鋭さの必要な矢にはミチヒメのトゥムをそれぞれ流し込み、自身のヌプルと釣り合いをとりながら練り上げていく…。
(くっ…!今のぼくには…この二人のトゥムに釣り合わせるだけのヌプルは…弓と矢で精一杯…とてもケゥエ全てなんて出来きれない…これは…この方法が…オウペカだ…!)
アビヒコは自身のヌプルと二人のトゥムをク、弦、アィエそれぞれに伝わらせ、先に宿らせていたヌプルとウカムレエトゥッカさせていく…。
存在力が明らかに変化して…常時輝きを放つクとアィエが顕れた。
「ミチヒメー!これ…玄武で受け止めてみて!」
ミチヒメはその言葉に咄嗟に反応し玄武へトゥムを注ぐ。
玄武は自身のヌプルとウカムレエトゥッカさせ己を万能の盾へと変貌させていく…!
「全防完盾!」
アビヒコはそれを確認した後クカを引き絞りアィエを放った。
鈍い金属音と共に激しい掘削音が鳴り響いた。
見ると盾と化した玄武より一筋青い雫が滴り落ちる…!
「…素晴らしき威力…。並のカムイでは防御困難…!」
玄武は自身の損傷を鑑みて確信の元そう返答してきた。
確かに本来の彼らは自然の盟主の…それも王の位階のモノ達である。
並のカムイを大きく超えた耐久力を誇る。
ミチヒメに付き従う四柱の内…特に皆の盾となり防御の要たる玄武に対し、まがりなりにも損傷を与えたのである…これはミカヅチや…あの主でさえ…当りさえすれば相応の被害は免れないであろう。
「これは…うかうかしてられない~!アビヒコがこれだけの事するのなら…わたしだって…はぁぁぁ…!」
「ま、待つトラ!これ以上のトゥムの解放はカラダが…!」
「大丈夫!わたしは…わたしを信じる!…いっけぇ~!」
「ゲン!セイ!スー!」
ビャッコは慌てて仲間に声をかけた。
「…承知!」「…引き受けた…!」「わかりましたわ…!」
ミチヒメは己を中心に圧倒的なチカラが凝縮された光球を形成しながら宙に浮く。
しばらく膨張し続けたかと思うと今度は急速に内に向かって圧縮されていく…。
その圧縮された力が解放されるように爆風が吹きトイェクテクパッセが舞う。
視界が晴れた後…そこには眩い純白のアミプを纏ったピリカメノコが…ミチヒメであった。
「や、やったぁ!ばっちし大成功~♪」
今までの限界を超えた解放に成功し喜びを露わにしていると…四獣たちの厳しくしかりつける声が矢継ぎ早に聞こえてきた。
「バッカヤロー!オレサマたちがの助けがなかったらとっくにプスチャカしてるわ~!」
「…間一髪間に合って良かったである…!」
「冷や汗モノでしたわ!ミチヒメさん今度からは…」
「斯様な危険犯す前事前相談絶対!」
珍しく玄武まで声を荒げて応えた…相当に危険だったと伺える…。
「現在…解放したチカラの七割を我々が吸収・内包。現状ここが限界点。」
「それでも…今までの2~3倍は自身のトゥムが増しているはずですわ♪」
「加えて…我らが変化せし衣…そなたのケゥエがプスチャカせぬ為のモノであり…」
「今まで以上にお前の動きを助けるぜ!」
「まず…わたしのラプ無しに飛べているでしょう?」
言われてミチヒメは足元に視線を動かすと…地上は遥か下方であった…。
「そしてそのまま自在に動け…」
「必要に応じて足場もつくり…」
「動きの感知と同時に最大加速可能」
「へぇ~!それってあの…本気になったおとーさんのよ~なヤツ?…どぉれ…やっ!」
ミチヒメが試しに軽く前方へ跳躍し打を放とうとしてみると…
ウガヤ以外の全員の視界と感覚から消え去り、大分離れた所で風斬り音と衝撃波が起ったことによりそちらを見やると…拳を放ち終えたミチヒメが観えた。
「すすす…すっごい突き!…!あ痛っ!!」
「恐らく今は百数える程が限界であろう…」
「ソーだぜ!危ないからそのあとはオレサマタチが強制的に解除するからな!」
「むむむ…確かに…これは仕方ないわね…一突きでもかなり身体に負担来るもの!…でも…一突きで終わりそうな凄さだわ!…そしてこれを完全なメル=ストゥ=マェで解放したら…!」
ミチヒメは戦慄を覚える程の凄さと伴う危険性を…己の身体で実感しながらそう言った。
「ちょっとちょっと!近くにスムだまり、あるわよ~♪」
突然何処からともなくその様に聞こえてきた。
声の主を追ってみると…例のルースの道具?であった。
卵の様な形であったがいつのまにかポン=ラプ=コシムプにになっている。
半透明の羽をはためかせながらそのモノは言葉を伝えてきた。
「ここから北に120歩、北東に74歩、東に28歩よ~!」
明確に詳細な指示を出してきた。どういう仕組みかはまるで理解が及ばず、何らかのカラクリによるアイヤイなのか生きているのかさえも理解不能なモノであるが…指示の通りに歩いてみた…。
「ここ!ここ!ここをオウリしてオウリして~♪」
「どの位までオウリしたらイイの?」
スセリがそう尋ねると…
「ここから下に300~500歩ぶんくらい♡オウリオウリして~♪」
相当な深さである…。頑張ってオウリしているヤチホコを止めてウガヤが前に出る。
「…参佰~伍佰歩分で…あるな?」
小さな羽妖精にウガヤはそう尋ねた。
「そ~よ~♪それで出るわ~♪」
「承知仕った!むぅん!」
急激にトゥムを高めだしイペオプへ伝わらせていく。
「アビヒコ!頼む!」
「はい!ラムハプル=ヌプル!ウカムレエトゥッカ!」
槍の存在力が増していきカンナ=カムイの形に具現化していく…。
「頼むぞ我が相棒よ!」
龍と化したイペオプは大きく嘶いて応えた。
それを聞いてウガヤも頷いてその場で大きく跳躍し、落下の勢いを加えて技を放つ!
「極大全貫穿撃突!」
凄まじい勢いで地面が削られていく!
良く観ると槍が当たる前に地面が螺旋状に吹き飛んでいる!
龍と化すほどの膨大なトゥムにヌプルを融合させメル=ストゥ=マェを帯びさせ、すべてを貫く力となりて掘り進む。
しばらくして巻き上がる土砂が落ち着き静まり返った…。
一拍おいて穴の奥から鳴動と共に何やら音が響いてきた。
「む!皆一旦離れるぞ!」
ウガヤの掛け声と共に全員その場から離れた。
鳴動と音はますます大きくなり…何かが噴き出してきた。それは…
「く、黒い…水…?…いやこのつやのある光り方は…」
「黒いスムですね♪ ウガヤ兄やりましたね!すごいです!」
(…もはや全員カムイの域では…じゅーぶんに緋徒ですら超えていると思いますが…)
そうイレンカ巡らせたヤチホコであったが口には出さずにそっとラムの内に秘めておいた…。
(…思えば皆あのおとうさまの系譜ですから…当たり前なのかもしれませんけどね…
ウガヤ兄はタギリ姉と共にハヤスサノヲさま…おとうさまの子…僕らのイリウタラです。ミチヒメはそのタギリ姉のポンメノコですからね。アフプカレとなってミチヒメとウエイリワクネとなったアビヒコの方がもっとすごいかもですね。
…一緒にいると引きずられるに強くなるのでしょうか?強くなりたい理由とイレンカがあったのですかね?スセリちゃんも僕も…実のおとうさまはスサノヲさまですが…チカラ…足りないからイレスミチの所へ送られたのでしょうか…?
まぁ、オオクニさま…イレスミチもたいがい緋徒離れしていますが…。)
色々と考え込んでしまっているヤチホコの肩を叩きながらアビヒコは言う。
「何をぼーっと考え込んでいるんだい?ぼくは大急ぎでとうさんに知らせてくるからちょっと支えてもらっていていいかな?」
アビヒコはそう言うや否や力なく崩れ落ちそうになったのでヤチホコは慌てて身体を支えた。
良く観ると…何となくだが何かが宙に浮いているように観えた。
(ぼくはヌプルケゥエでとうさんに知らせてきます、待っていてください)
皆の頭にアビヒコの声ならぬ声がそう響いたかと思うと…宙に微かに観じた気配が完全に消えてしまった…。
ヤチホコは現段階で彼らに追いつこうとムリしすぎない様にラムに誓った…。
皆から離れたアビヒコは目を閉じ、強いイレンカで生家を、父を念じていた。
しばし後に目を開けると…そこはなんと露丝の中にあるアビヒコの実家であった。
アビヒコがヌプルを高めると目の前の鐘が鳴りだした。
父にヌプルケゥエで話しかけるときの合図らしい。
「お!はっやいなー!さっすが!どれどれ…」
ルースは何やら珍妙なシッコトゥッカネとキサラ=ムクッケを取り出し、自分の机の上の突起を押した。
「えーえー、きこえるかアビヒコ…お!そこか!」
(…とうさん、スゴイ量の黒いスムが地中から噴き出たよ!)
「そうかそうか!…ではそちらにウタラを送るので…囲いを造りワッカオトッの様にしてもらう。汲み上げて貯蔵できる大きな樽も用意させる。あ、くれぐれもアペは使うなよ?とても燃えやすい上に爆発することもあるからな!」
ルースがさらっととんでもない事を言っていたがきちんと聞き届け、
(解りました!みんなにもそう伝えておきます!…一旦向こうに戻ります)
「おぉ!ソーしてくれ!お疲れ!」
ルースの視界からアビヒコの半身と思われる存在が消え去った。
眼鏡と耳当てを外し一息つく。その表情は意外にも微妙であった。
(…これで…これをもとに色々と造りすぎると…さらに…あちらとこちらが…乖離してしまう未来へ推し進めてしまう…。だからと言って以前の文明を今の我々に造れる訳もない…。私には既にトゥムもヌプルもなく…カムイ=マェは喪われて久しいからな…)
ルースがその様に思考を巡らせていると…急にナニカに覆われて視界を遮られた。微かに並び立ち存在する柔らかな感触が顔に伝わってきた。
「どうしたの?珍しく悩んでる?…話…きこーか?」
アビヒコの母でルースの妻でもある香が話しかけてきた。
「お、おぉ!…アビヒコ達、無事見つけたんだよ!…でもな、と、言う事は…」
「ちょい待ち!なんか話難しくなりそうだから…代わる!」
そう言って香は近くの椅子に座り背もたれに寄りかかった。
すると…髪の色がみるみる変わっていき、背丈や身体つきも変貌していく…。
暫くしてゆっくり目を開けたその姿は…。
「…本当にソックリだよな…ま、当然だけどな。」
「…それ故に私にもご好意を寄せて下さったのかしら…♪」
気品あふれる佇まいから丁寧に穏やかな口調でそう言われ狼狽しながらルースは応える。
「バ、バカ、それも…あるけどそれだけじゃない!レンカクス=ラムの元にヒルコと懸命に生きる姿にだな…」
優しく真っすぐな瞳で見つめ笑みを浮かべながら言う。
「ええ…承知しておりますわ…マイマスター…♪」
「よせ、恥ずかしい」
「ふふ…香の刻の私とはケンカ友達の様ですのに♪」
「アイツとは本当にそうだな。気の合う仲間と言うカンジだ」
「確かにそうですわね…貴方様…あの子には…一切そう言うヲモヒ込めし事、なさりませんもの…♪」
「当り前だ。あんなお子様体型は範囲外だ。しかしアイツはアイツで興味深い人格ではある」
「趣味の合う仲間…なのでしょうね♪…今の香は…今の貴方様と同様…ほぼ普通のウタラですものね」
「だから…主に…そしてヤツに見つからないでこうしていられる」
「仰せの通りでございますわ…。それで…クンネ=スムと燃料とその加工の文明への影響…ですわね?」
「そう、そうだ!さすがだな…!このまま進むべきか…」
「…確かに…迷います…。ですが…貴方様も私も…文明がそちらへ歩みし未来は…既知…でございますわ…?」
「…だな…。なら…今はまだ時期尚早だな」
「私もその様に思いますわ…。」
「わかった!ありがとう!あぁ、なんだ…その…」
香…?は優しく微笑んでそっと抱きついてきた。ゆるりと首に手を搦め唇を重ねてきた…。
「ラムハプル=エラマス=ルスイ♡…私のあの子と共に…」
「…ありがとう…」
暫くして服も髪も元に戻り、力なく崩れそうになるのを支えて抱えそっとアマソトキに寝かせる。
「…生きとし生けるモノすべてに…幸あれ…!」
穏やかな寝息を立てている香を優しく見つめながらルースはそう呟いた。
みな着実に成長を重ねています…。
香…は一体…?ルースは…?




