表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
11/105

第11倭 上伽耶へ

海を渡り半島に入り北上していく…。

 ミチヒメ達のヤレパチプ(万能大型船)に並走してロクンテゥを走らせる。

 海を越え陸に乗り上げ、長閑(のどか)な風景の中しばらく走り行くと何やら一つ長大な壁に囲まれたチャシ()いや…もっと巨大な城の様なモノが見えてきた。


「…久々に来ましたけど、変わらずいい所ですね~♪」


 ヤチホコは吹き抜ける風の心地良さを感じ、景色を眺めながらそう言った。


「うん…ここは…アチャポ(叔父さま)…ウガヤさまが守ってくださっているから…ね…」


 頷きながらミチヒメは答えた。

 開門してもらい領地の中へ入っていくと…アビヒコは本殿ではないあらぬ方向を指さしながら…


「あっちでウガヤさまが待っているから早く行こう」


 そういうアビヒコに案内されて一行はウガヤの居城に入っていく。

 先程より…正確には陸に上がり少し荒野を走り抜けたあたりからミチヒメは何やら元気なさそうにしていた。


(…あの…荒野になっていたさらに向こう側の方に…下伽耶(アラカヤ)が…ヲモヒ…かえしていたのでしょうか…?そしてその原因こそ…)


 ヤチホコはらしからぬ静けさを醸し出しているミチヒメのうしろからそっと肩をたたいて話しかけた。


「もしかして…さっきの…ミカヅチたちが…?」


「…うん。アイツらが…わたしの故郷…下伽耶を滅ぼしたの…。だから…絶対に許さない! でも…わたし…わたしたち…その…親玉を…倒してきたはずなのに…?」


(確かにあの刻契約を交わしたはず…他のクニへの侵略はもうしない…と…)


 ミチヒメの話では…再びミカヅチはパセ=コル=モシリ(高句麗)に住まうオロチ族の軍と結託して侵略しまわっているらしい。

 なんでも聖なる戦(ペケレロルンペ)だと吹聴しながらだと聞く。


「…クニグニのウタラ(民たち)ロンヌ(殺めて)していて…ペケレ(聖なる)…ですって…そんなわけない!!!」


「…ミ、ミチヒメ…!」


「…ご、ごめんねヤチホコくん…でも…まだどうしてもどこかでホンネレ(許すこと)できないの…! ましてや…あんな風に再びシカイェカイェ(暴れまわって)していたらなおさら…!」


 ヤチホコはもっともな意見だと思い頷いて聞きながら思案していた。


(他のモノを傷つけたりして…ペケレ…ロルンぺ…として成り立つモノなのでしょうか…?)


 思案しながらついていくとそこは鍛錬場であった…。

 小さな小屋のようなチセ() もある…。


(…ウガヤ兄はどこであってもウガヤ兄な様でですね…♪)


 ウタラ()を守る為…武の道を極める為…それ以外事はとんと無頓着なイランマカ=(無骨な)ラメトコ=アイヌ(武人)である。

 功績に見合う住まいを賜れどもっぱらこの鍛錬場にいるらしい。

 それどころか困ったウタラを居城にかくまったり住まわせたりしていると聞く。


「…久しいな! 元気そうであるが…何かあったようであるな…?」


 こちらを見据え穏やかな口調でそう話しかけてきた。


「…実は…ミカヅチが…ヤチホコくんたちロクンテゥを襲っていて…! でも助けが来て…逃げられちゃったの…」


 無念のイレンカ(ヲモヒ)ありありな状態でミチヒメはそう伝えた。

 ウガヤは少しだけ表情を変えたが…ミチヒメの方を向いて優しく伝えた。


「…良くぞ守ってくれたな!」


 そういってかがんでミチヒメの頭を撫でた。

 ミチヒメは少しだけ頬を赤らめ照れくさそうに、でも嬉しそうにしていた。


(…ウガヤ兄の前では単なるマッネポ(娘さん)のようですね♪)


「…明日…領主殿から彼のモノ等に対し話があるとの事。ヤチホコ達も来ると良い。もちろんミチヒメ達は当然出頭する.…今日はゆっくり休むと良い…。ここは我には不釣り合いだが客人を迎え入れるには都合がいい。」


「た、確かにお城と見紛うほどです! ナ・ラ(奴国)にはこんな…チャシどころではない巨大な建物はありませんからね…♪」


 謁見用の大広間にて接待を受けるも、ヤチホコ達にはすべてが初めてのモノばかりであり、驚いたり喜んだりしながら堪能していた。

 その様子をウガヤもミチヒメも嬉しそうに眺めていた。


「わぁーっ! すっごい広い! こんなところでオスス(入浴)していいの?」

 その広さに驚きながらスセリはそう言った。

 ミチヒメはにこやかに応える。


「もちのろん♪ さぁヤイフラィエ(身体を洗って)してトゥルサク(キレイ)にしてセセキワッカ(湯舟)に入りましょ♪」


「うん♪」


 その後も嬉しそうにはしゃぎながら話す声が聞こえてきていた…。


「…あちらはとてもウコンヌペッネ(嬉しそう)カチリケ(じゃれあって)ていますね…いいですね…♪」


 その声を聴いてヤチホコは…壁のあちらこちらを見やっている…。


「…どこ探してもあちらの方をヘヘウパ(のぞき見)なんてできないからね…」


 呆れたようにアビヒコはそう言った。


「…ヲノコも年ゆけばメノコのアトゥスパ()に興味ありて当然であるな…」


 ウガヤは穏やかにそう言った。


「ですよねですよねウガヤ兄♪ どこからか見えるところありませんかね…?」


「…壁に穴はないが…入りたければあちらに一緒に行って来れば良いであろう?」


「あ♪ そう言われてみればそうでしたよね♪ …ではさっそく…♪」


 そそくさと上がって隣の間へ移動すると…誰かがいる気配が。


「こんばんは~こっちにも入らせて下さ…あ、あれ?」


「あら? ヤチホコくん、こっちのセセキワッカにも入るの?」


 そういう声の主は…すでに湯上りに着る汗を良く吸う衣を羽織っていた…。


(…トゥルサクも…速いのですね…)


「はっはぁ~ん♪ お年頃になってきたのねヤチホコくんも♪ また今度ね♪」


 そう言って声の主…ミチヒメは軽く目配せしながら額に唇を軽く押し当てた。


(わ!わっ♪ 胸元がゆるいから…♡)


「くぉらヤチ! どこ見てんの! このエパタイ(おバカ)~!」


 衣の隙間より覗くなだらかで慎ましやかな双丘に目を奪われ呆けている間にスセリからキツイ一撃が…。


「…そんなに見たいなら…ボクだって…」


「ふふっ♪ そ~よね~スセリちゃん♪ もう~イイヨマプカ(カワイイ~)なんだから♡」


「ミ、ミチヒメちゃんったら~! ど、どうやら聞こえてないみたい…ほっ…」


 安堵の域を突き胸をなでおろし、ミチヒメにそう言いながら横目にアムソ()を見やると…無様に伸びている一人のヲノコが…。


「…ありゃりゃ…スセリちゃん一人で運べる~?」


 そこに一人またヲノコが。


「…あぁ、やっぱり…。スセリちゃん…ぼくが運ぶよ…よっと!」


 そう言うとアビヒコはウェントゥム(魔闘氣)を噴き上げて変貌するとアムソに横たわるヤチホコを片手で担ぎ上げて歩いて行った。


「…あの刻は…チカラかなりあるんだね!」


「そぉよ~♪ アレをした時のアビヒコはけっこう頼れると思うよ♪」


「ホントだね♪」


 聞こえてくる二人の声にまんざらでもない気分でアビヒコは運んでいった。


「ありがと! じゃぁ…おやすみ!」


「うん、このくらいはね…おやすみ…」


 そう言ってアビヒコもミチヒメの待つトゥムプ(寝室) へ戻っていった。


「…ぼく…今日ちゃんとできてたかな…?」


「うん…とても…ね♪ さぁ寝ましょ♪」


「うん…♪」


 そう言うとミチヒメに抱かれてアビヒコは眠りについた。

 明日は領主に会いに行く日…しかし今日は色々ありすぎたせいか…

 四人とも緊張どころではなく泥のように深く眠りについた。

明日は領主の謁見です。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ