第100倭 カムイ=アリキキノ=ウニタンパクテ(カムイの全力かけっこ)
ヤ=マ=タイを後に進む一行…
「さっきは良~いカンジでしたねゼストさん♪」
「ええミチヒメさん♪ おかげで更に頑張れるですー!」
「本当にいつもまっすぐで良いですね♪」
「ヤチホコさんありがとうですー♪」
「…良くも悪くも駆け引きや化勁は苦手そーだわ…♪」
「キクリちゃんど~やらそうみたいね~♪ あ、でもでもきっとゼストさんの場合って…ニガテを頑張るよりも得意なことを伸ばす方がイイかもね~♪」
「ミチヒメさんのアレもいつかきっとモノにしてみせるですー! でも今は得手を先に伸ばすですー!」
「それが良いと思うよ。じゃあいいかな? クスターナへ…跳ぶよ?」
アビヒコがそう言い、皆の頷きを確認して瞬時に旅する門を起動させた。
「クスターナへ!」
「…ここは…ニタィ
のようですねー」
「そーよ。クスターナエコィカのニタィの奥、アタシ達が疾ればすぐに着くわ…!」
「そーですかー。では…行きましょー!」
ゼスト・リウスはそういって帆掛け舟に飛び乗った。…しかし他のモノは…乗ってこない…?
「…? アレ、みなさん乗らないですかー?」
「ふふふ♪ ゼストさん、わたしたちならホンキで疾ったほ~がちょっち疲れるけどロクンテゥよりも迅いですよ♪」
「そーなんですか? 僕も…ソィヤさんに助けてもらったら出来ますかねー?」
(ごめんなさいゼストさん…今のワタシ…この姿を保つだけのヌプルしかなくて…チカラ貸してあげられませんの…)
「…もーそこ悲しそうにしないほーが良いわ! アタシがチカラ貸してあげるから…疾るくらい出来るわ…!」
そう言うとキクリはソィヤへ霊力を注ぎ始めた。
「キクリちゃんそれしたらぼくみたいにチカラ尽きちゃ…」
「ふん♪ アビヒコ…アタシこれでもカムイよ…! みてなさい!」
キクリがそう言うと急激に彼女の存在力が上昇していく…!
「…このモシリに住まラムハプル=モシリ=コロ=クルよ…アタシにチカラ貸して欲しいわ!」
キクリがそう呪を唱えると…四方八方より権能が…霊力が集束してきた!
(…ああ…! これなら…出来ますわ…! ゼストさん! カムイエウンケゥエ…エトゥッカですわ!)
そう言ってソィヤはゼスト・リウスの背後より抱きつき重なり合って同化していく。
「き、きたですー!」
爆風と共にゼストは先の白い衣を纏った姿に変化した。
「これで…誰がイチバンかわからなくなったわ…♪」
「今日はぼくも自分のチカラで一番になるよ!」
「あ、アビヒコ、僕も負けませんからね!」
「二人共ちゃぁ~んとわたしについてきてね♪」
「それならミヅチもなってみる! クラミツハさぁん!」
「かしこまりました…トゥム、ヌプル注ぎ込み…ウカムレ=エトゥッカいたします…!」
額の闇龗と共に両眼が輝きはじめ、力の渦が巻き起こる。軽く宙に舞いミヅチの頭上より衝突したと思えた瞬間、渦は真上に吹き上がり…ミヅチであったモノはまったく別の姿へと変貌した。長身で裏地が紅に染まった漆黒の外套を纏い、中にはトゥニカとプラッカエを纏いし存在と化していた。
「ミヅチ…その姿…とってもステキだわ…! そしてその…存在力も…!」
「本当ですー! みなさんホンキ出すとケタ違いにチカラがあふれるですー!」
「ものすご~いチカラだけど、これってあの刻のヴァジュラさんたちのよ~なカンジがする…?」
「うん…どうやら…このミヅチ…イウェンテㇷ゚に近しき存在らしく…チカラを解放した場合斯様になると八俣さまより聞いていたのだ」
(…自分の事はやっぱりミヅチて言うんだね…)
小声でアビヒコが言うと
(アビヒコそこはそっとしておくべきだわ…!)
と、すかさずキクリも小声で返した。
「? 何か問題があったであろうか?」
ミチヒメは一本指で頭を掻きながら困り笑いを浮かべて応える。
「だいじょう~ぶよ~♪ ま~でもこれでいつものかけっこ、行くよ!」
「かけっこ…です…?」
「あ、はい! 一番遅いとミチヒメの組手のご褒美が待っています♪」
「それは本当にごほーびですー♪」
「…先ほどのコラㇺ・ヌカㇻであんな目に遭っていてそう言えるのは流石あのモシリでエコィキカムイと呼ばれていたゼストさんですね♪」
「あそこでは…生きる為と…みなさんの為にエコィキすることがすべてでしたからねー」
「…こちらのモシリではそれ以外の楽しみもいっぱ~いあるんですよ~♪」
「…アタシに勝てたら…オヌマンイペをごちそーしてあげるわ…!」
「がんばるですー!」
「ミヅチも…この姿は尋常ならざる空腹に見舞われる故…嬉しきなり…!」
「あ、確かに僕も全力出しますとものすごぉくおなか減りますからね♪」
「ふ~ん、そ~なのね~♪ はい、じゃ、もう一度仕切り直しでいくわよ…用意…いい?」
「はい!」
「はっじめぇ~!」
ミチヒメの掛け声とともにいち早く飛び出したのは…ヤチホコであった。例の前方の空気を効率よく削り取る方法で駆け抜けていく。
「あ! あんな方法で…! よぉっし! みんな、行くよ!」
ミチヒメは四獣のチカラを出来得る限り解放して一気に加速。独特の意匠をあしらったロインクロスが豪快にめくれ上がり純白の下帯が露わになるも前傾した瞬間程無く収まる。ヤチホコよろしく前方の空気を上手にさばいている様である。
「今日はそれぞれ自分のチカラのみで競うわ…! アタシも次元跳躍はしないから…言い訳は無しだわ!」
「うん…! マニィ、ぼくらも全力で!」
「わかったわん♡」
「み、みなさんすごいですー! ソィヤさん! いくですー!」
(了解ですわ…! 現状の限界まで…いくですわ!)
「ヤチホコ…カムイでもないのに…チカラは使いよう…そーゆーことね! アタシも行くわ! 岩筒男乃尊!」
キクリが叫び命じると岩でできた筒が顕れてキクリを筒の先に詰め、後方からせり上がってきた巨大な岩盤が筒の後方を激しく強打すると、キクリは大筒の玉よりも迅く発射され跳んでいく! 爆風の様な圧力で押し出された為瞬時に衣がすべてまくり上がり、下帯まで丸見えになったが、すぐに前方への加速力で元に戻され、今度は胸元が開けるもお構いなしに飛んでいった。その勢いは…彼らが放つ矢よりも迅く、みるみるヤチホコに追いつき、一瞥して追い抜いていった。
「今日はアタシの…勝ちだわ!」
キクリが目的地へ到着しそうになると、影より黒いナニカが飛び出し、目印の岩へ到着直前、岩影から誰かが顕れた!
「…まさかこんなチカラがあるなんて…やられたわ…!」
「シリクンネ司りしルーガルのチカラの一端…テレケクリヒ…!」
全身黒ずくめのモノはそこまで応えると光に溶ける様に消え去り…元のミヅチに戻った。
「え? あ! ミヅチ…そうでしたか…! すごいですね!」
次点で到着したヤチホコが状況を観てその様に応えた。
「…戦いに関することは割とカンが良いんだよね~ヤチホコくん♪」
追いついてきたミチヒメがヤチホコを観ながらそう言う。
「あ、ミチヒメ迅かったですね…! でもなぜあのスザクのラㇷ゚遣わなかったのですか?」
「いちお~今回自分のチカラのみってくくりでしょ? だからメル=ストゥ=マゥェを纏う以外にあの子たちのチカラ借りるのは無しかな~と思いました♪」
「あ、なるほどですね♪ あ、アビヒコも来ましたね♪」
「ふう…。ある迅さからのマゥマゥエの逆らうチカラが凄すぎてこれ以上は…今は出来ないようだね」
「…その姿になってメル=ストゥ=マゥェ遣えているだけでもちょっち前に比べてすっごく上達していると思うわよ♪」
「…そ、そうかな?」
「とってもすごいってマニィも思うわん♡」
「…はぁはぁ…! やっと追いついたですー! みなさん迅すぎですー!」
「あは♪ その状態をよくこの距離もたせたわ! ほめてあげるわ♪」
キクリはそう言うとふわりと浮かび上がりゼストの頬に唇を押し当てた。
「ありがとです…でも皆さんにはこの状態でも全くかないませんです…」
「…当たり前だわ。だからソィヤさんのチカラ出せるよーにしに行くんじゃない…!」
「そーですよね…! しかし…みなさんよりも大きいトゥムを持っているのに…少しくやしく…すごく残念ですー!」
「…そのイレンカ…とても大事だわ…! それがきっと生長のストゥとなるわ!」
「…頑張るですー!」
ゼスト・リウスは力強く頷いて応えた。
「じゃ~まずは茶屋に寄って行きましょ♪ ゼストさん…組手はそのアト…ね♪」
「は、はいですー…」
一行は茶屋にてのどを潤した後、街のはずれにある純陀の店へと向かった。
「おもしろいエカシだけど腕は確かだわ…!」
「チャッチャ~久しぶり~♪ 元気にしてましたぁ?」
ミチヒメは扉を二、三回叩きながら話しかけた。
「おぉ? おー! 久しぶりだべさ♪ なんも、元気だべさ♪」
髭を蓄え背丈はやや低めだが逞しい体つきの老人であった。
「こんにちはー! 純陀さんですー? 僕はゼスト・リウス、こちらのソィヤ=イトゥンナㇷ゚さんに…憑代となるケゥエを造って頂きたくて来たですー!」
「おお? なるほど…こりゃマニィやイリチと同種のラマトゥだべさ。…うん、これなら材料さあれば問題なぐ出来るっしょ♪」
「本当ですー? うれしいですー♪ ところで材料ってなんですー?」
「んだな…まんず羊脂白、羊脂…あと…黒玉…だべさ」
「それを見つけて持ってきたら良いですー?」
「ああ! それでこの子のケゥエさきっともってんまぐ出来るべさ」
「どこにあるですー?」
「…さっき来たニタィを流れるペㇳをさらに奥へ行った…処だわ…!」
「行くですー! 純陀さん失礼するですー!」
「ああいう性分のやつぁめんこぐで憎めんしょ…良い奴だべさ」
「わたしもそ~思うなぁ♪ ゼストさんてすごくまっすぐな緋徒だよね♪」
「ですね♪ すべてにおいてとても真っすぐですよね♪」
「…真っすぐで…不器用で…確かににくめないわ!…」
「じゃあそんなゼストさんの為にも…良いモノを探そうかな…!」
アビヒコは例の銀色の姿へ変化した。
「…いつも感心します…! 良く建物の中で解放できますよね…!」
「ヤチホコは…チカラが大きいのと…無駄な放出が多すぎなんだと思うよ」
「そうなのですね…。今度うまく開放する練習もしてみますね♪」
「それはしといたほーが良いわ…ムダ多すぎだもの!」
「あ、は、はい…そうですね…頑張ります…!」
「じゃぁぼくはスクナヒコ・ナになるから…誰かケゥエ観ていてね」
「あ、それでは僕がアンナさんとお留守番していますね。みんなが行った方が良いイコロ=タㇰが見つかると思います♪ 僕はどうもそちらは苦手な様ですからね…」
「…そーね! 準備いいかしら? じゃーアンナ、よろしく頼むわ…!」
キクリは天神に仕えしアンナを取り出してかざした。
「よし、アンナさん…!」
「…かしこまりました…ヌプル…トゥム…共に必要量まで充填完了…エウンヤィカㇻ…! スクナヒコ・ナ…エトゥッカいたします…!」
アンナの言の葉でアビヒコは“小さき観ずるモノ”へ変化していく…。
「…完了いたしました、これより本体のイノトゥの維持にかかります…」
「よし…じゃぁ行こう。キクリちゃんよろしく…!」
キクリはスクナヒコ・ナをそっと両手で抱え上げた。
「あら? ミヅチちゃん…さんは?」
「…ミヅチはアノ姿の反動でしばらく動けないわ…!」
「やっぱあれだけの強さと特殊なチカラ…反動も大きいのね~」
「あ、そう言えば…僕らも遣い始めはケゥエが大変でしたよね…!」
「そ~だったわね~。たしかに、最初はアチラコチラがタイヘンだったぁ~」
ヤチホコとミチヒメの言の葉に少し意外そうにキクリが応える。
「…そーゆーものなのね…アタシ何ともなかったから気付かなかったわ…!」
「クシナダさまの血を継ぐモノは…ケゥエも普通の緋徒よりもさらに強いのでしょうかね…?」
「…たしかに母様はラムハプル=モシリ=コロ=クルのケㇺリㇳ…ケゥエはフツーのカムイより強いかもしれないわ…!」
「…あれ~じゃぁなんでミヅチちゃんわたし達みたいになっているのかしら…?」
「可能性としては…生まれつきじゃない…アシンノマゥエだからかな?」
「なぁるほど♪ アビヒコさっすがラムアン~♪」
ミチヒメは感心してスクナヒコ・ナ状態のアビヒコ褒めながら頬ずりした。
「え、い、いや他に考えられないと思ったから…」
アビヒコは動転しつつも応えようとしたが…耳まで紅潮させて語尾が聞き取れない状態になってしまった…。
「…そーね…きっとアンタの言うトーリだわ…やるわね♪ はいコレごほーび♡」
キクリもそう言の葉をつなげ、同時に少女の姿となってスクナヒコ・ナ状態のアビヒコを衣の胸元に入れて優しく抱きすくめた。
「キ、キクリちゃ…!」
「あ…その状態でも…出ちゃうのですね…」
ヤチホコがどこにあるか判別しがたいから鼻から出血しているスクナヒコ・ナ感心していると…ミチヒメは音もさせずにキクリの胸元で真っ赤になって目を回しているアビヒコを素早く掴み取り自分の胸元へ放り込んだ…!
「あ! ミ、ミチヒ…!」
鼻粘膜の存在すら疑わしい小さな仲間は再度盛大に噴血して失神しまった…。
その状態を観て上機嫌でどうだとばかりにミチヒメは言う。
「へっへ~ん♪ わたしの刻のほ~がいっぱい出たみたいね♪」
「…アンタ意外とオコサマなのね…! そしてアビヒコの事もまんざらでもないよーね♪」
キクリはミチヒメの言動が意外だったようで少し驚きながらそう応えた。
「え? あ、ま~たしかにさいきん頼れるよ~になってきて…ちょっちステキだな~とイレンカ抱く事も出てきたかも…ね♪」
「…アビヒコは前からけっこう頼れる緋徒だわ…!」
あからさまに不満げな表情でキクリが応える。
「そっか~…。キクリちゃんも…アビヒコがアリキキノしているトコ…観ていてくれたんだね…♪」
「…そーよ。アビヒコ…すごく頑張っているわ…! アタシはとても偉いと思っているわ!」
はっきりとそう応えるキクリに対しミチヒメは感謝と喜びのヲモヒ露わに抱きついた。
「う~ん…うれしい~♪ アビヒコのことちゃぁ~んと理解してくれるメノコ…いたのね~♪」
「…お兄ちゃんの次位にステキだと思うわ…!」
「ええ! それってばアマムさんのよ~にアビヒコのこともシ・エラマ…むぐむぐ…!」
「…そーゆーのは…本人どーしで言うモノ…だわ!」
ミチヒメの反応をさらに上回り口を塞いでキクリが応えた。
「…ふぁ、ふぁふふぁふぁふふぃ…!」
口を塞がれたまま感心してミチヒメはそう応えた。
「あ、あの…そ、そろそろゼストさんお手伝いに行った方が…良くないですかね?」
普段とは反対にヤチホコが正論を切り出した。二人とも我に還り口々に言う。
「…そーだったわ…!」
「なっははは…すいませんそれが大事でした…」
「きっと着く頃にはアビヒコも目覚めるでしょうし…そのまんま行って来て下さい…!」
キクリとミチヒメは協力して全速力で採集の地へと向かっていった。
あとは良い宝の玉を見つける事ですね…!
用語説明ですm(__)m
・トゥニカ:古代ローマの服装、現代のチュニックの様なモノ。
・プラッカエ:帝政ローマ時代のガリア人(ヨーロッパ在住ケルト人集団)が使用していたズボン。
インド・ヨーロッパ語の語根、「bhrg」(英語のbreak:壊す、分ける)より。
・エコィキカムイ:戦う+神→「戦神」としました。
・ロインクロス:古代のスカートの原型。腰布。
ミチヒメのはモノはアットゥス=トゥスクル謹製の特殊なモノである。
・テレケカント:跳ぶ+天、宇宙→「次元跳躍」としました。
・テレケクリヒ:跳ぶ、はねる+影→「移跳影」としました。
・チㇲプㇲニㇲパ:岩+矢筒、はじける+紳士→「岩筒男乃尊」としました。
・アシンノマゥエ:新たな+チカラ、威力、より。




