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第95倭 決勝! そしてアシンノ=パイェ=カイ

とうとう決勝ですが…?

「決勝! ここまで勝ち進んだモノだけが得られる栄光! ラージャ(ルーガル:王)の両腕たる側近! ヴァジュラ様方への挑戦権である!」


 その言の葉と共に片方のモノが飛び降りてきた。常軌(じょうき)(いっ)した巨体が音もなく宙に舞う羽の如くふわりと比武(コラムヌカラ=)(ミンタラ)へ降り立った。


「信じられない身軽さですー! 一体どうやったらできるですー?」


「…オヌシハ武ヲ知ラヌデアルカ…。アタワリシチカラノミデ勝チ上ガルトハ、ソノ可能性、素晴ラシキナリ!」


「…一応僕流の技はありますので、コラㇺ・ヌカㇻ(比武)でお見せしますー!」


「…オモシロイ…。胆力モ一流デアルナ…!」


「××××さーん! 頑張ってくださーい!」


 アメは言の葉(イタク)に出来ない呼び名でシンノ=パセを応援した。


「アメさん…! 頑張るので見ててくださいー!」


 そう返し、いつもと変わらぬ穏やかな表情ながらも氣力(トゥム)を練り上げていく。


「…! マサカ…! オモシロイ…! 我等モ(つか)イレンカ(ヲモヒ)変エテカラハジメテノ全力ガ出セソウデアルナ…!」


「あっちゃ~! ニイちゃん挑んじまったのかい! …。…。ええい! こうなりゃヤケだ! 全部ニイちゃんに賭けてやるぜい!」


 そう言って家主は任された全額をすべてシンノに賭けた。


「…ありがとですー! まかせるですー!」


「サァ…ドコゾナリ好キニ打ツガ良イ…!」


 そう言うや否や、ヴァジュラ=ダラの氣力は見る間に上昇し膨れ上がっていく…!


「ウェンテ=ハィヨクぺ=(破甲撃)キㇰ!」


 激しく打撃音が鳴り響くもヴァジュラ=ダラは微動だにせず平然と受け止めた!


「…ヤルナ。ソレデハコチラノ番ダ…! 行クゾ…! ヌゥン!!!」


「××××さぁーん!」


 シンノ=パセは両手を交差させて受け止めていた…!


「~~~! す、すごいです…! これははじめてのトゥムアスヌ(チカラ強さ)ですー!」


 言い終えるとシンノは片膝をついてしまった。


「良クゾカリ・ラマトゥ(輪を廻る)セズニ耐エタナ! ナラバ…次ハ…我ガニスパケ(兄上)ヨリ伝授サレシ極ミ…受ケルガ良イ…!」


「これは…全力出しても平気そうですー! いきます!」


 そう言うとシンノも氣力(トゥム)をさらに高めていった。


「全力解放…! 目覚めよ! カムイエウンケゥエ(神威之色身体)!」


 その掛け声と共にシンノ=パセの氣力は跳ね上がっていく。


「バ、バカナ…! カムイエウンケゥエ(神威之色身体)ダト…?」


「この…ケゥエ(身体)を得てからはイウェンテㇷ゚=ヤィカ(魔獣化)ラは出来ませんが…それよりも…強いですよー!」


 シンノの身体がみるみる変貌していく…! 我々の知る甲殻類(こうかくるい)…いや、カブトムシやクワガタ等、甲虫(こうちゅう)の様な光沢のある漆黒(しっこく)の装甲に全身が覆われていく…。


「…さあ準備できましたよー、いつでもどうぞ!」


「…ソノトゥムアスヌハ…確カニカムイエウンケゥエ…! シカシ…ソナタ、メル=ストゥ=マゥェ(輝く根源のチカラ)(ごと)ク…ウカムレ=エトゥッカ(融合発動)(かな)ワヌノカ…?」


「あーゆーの苦手でまだです…」


 シンノは少し申し訳なさそうに(こた)えた。


「…ナラバ心シテ受ケヨ…! 行クゾ! ヌゥン! コォォォオ! …トゥム・シ=パセ・ケ(闘氣究)ゥエ・チ・コトゥイエ(極発勁)…!」


 ヴァジュラ=ダラはどっしりとした構えから大きく踏み込んで震脚(しんきゃく)し、同側(どうそく)上肢(じょうし)(はげ)しく打ち出してきた! 螺旋状(らせんじょう)両脚(りょうあし)から(こぶし)まで氣力(トゥム)がうねりながら()け上がってくるのが()える…!


「さあ! 来るですー!」


 シンノ=パセは真っ向から受け止めるつもりで構えた。


「…カリ・ラマトゥ(輪を廻る)スルデナイゾ…!」


 激しい打撃音(だげきおん)()(ひび)く。…シンノの姿がない…! ヴァジュラ=ダラの打ち出した拳の先を目で追うと…比武(コラムヌカラ=)(ミンタラ)周囲に(つく)られた壁に身体ごと減り込(め こ)んでいた!


「~~~!!! すっごいです…。このケゥエ(身体)でなければ危なかったです…!」


 そう応え、よろめきながらも身体を起こしシンノは立ち上がった。


「…本当ニヤルナ…! 次ハ…避ケテモ良イゾ…。コレガシンノ・ウカムレ・マゥ(真に融合せしチカラ)エダ…!」


 そう言うとヴァジュラ=ダラは何やら印を結び集中し始めた…。


「ヌゥゥ…トケアイテキワマレ…!」


 その言の葉と共に先ほどとは異質の気勢が吹き上がっていく。


「ああ! ××××さぁん! それはダメです! 避けて下さい!」


 歓声を切り裂いてアメの絶叫にも似た声がシンノ=パセの元へと届いた。


「…わかります…これは…全てを打ち倒すモノ…ですね…でも…大丈夫です…きっと耐えきってみせるです!」


「…行クゾ! ヌゥン! コォォォオ! トゥム・シ=パセ・ケ(闘氣究)ゥエ・チ・コトゥイエ(極発勁)=シンノ・キク(・真打)!」


 螺旋状に駆け昇るその力は、まさに観えるモノも観えざるモノもあらゆるモノを吹き飛ばさんとしながら拳へと伝わっていく! 一瞬ヴァジュラ=ダラが震えたかと思った直後、強烈な打撃音と共にそれは炸裂した!


「いやぁーっ! ××××さぁーん!」


 舞い上がる砂塵が収まり視界が晴れてくると…ヴァジュラ=ダラの拳をシンノが交差した両腕で受け止めていた。


「ああ! ××××さぁん! 良きです~!」


「…つ…強い…です…!」


 シンノ=パセがそう一言漏らすと同時に身体中に亀裂が入り、シンノが神威之色身体(カムイエウンケゥエ)と呼びしモノが解けてしまった。


「…ソノケゥエ故受ケラレタノダ…! オ主ノ武デハ…本来ナラバ受ケシ直後ニカリ・ラマトゥ(輪を廻る)シテイタデアロウ…! ヌプル(霊力)トゥム(氣力)ウカムレ=エトゥッカ(融合発動)セシ刻コソシンノ=マゥエ(真なるチカラ)ニ至レリ!」


「ヌプル…あのモシリ(世界)では索敵(さくてき)位しか使っていませんでしたね…そして…武と技が…確かに僕には足りないようですね…でも…アメさん返してもらうためにも…負けられないです!」


 息を整えて氣力を鎮め反対に今度は霊力(ヌプル)を高め視力に集中させてシンノは眼前の巨人を観る。自身も並よりはるかに大柄ではあるが…目の前にいるヴァジュラ=ダラは規格が違う。身の丈は優にシンノの倍はあり数倍の巨躯を誇る。その上で融合発動(ウカムレ=エトゥッカ)による輝く根源のチカラ(メル=ストゥ=マゥェ)も使いこなす。


(全身よどみなくメル=ストゥ=マゥェが流れていますー。これは同等のチカラを持ってじゃないと勝負にならないです…)


ふと以前のやり取りが脳裏に浮かぶ…。


「…やあゼッポン♪ キミは本当に素晴らしいエナジー(氣力)を持つのにハーモニクス(融合発動)出来ないのか。…いつの日かこの地を離れ先を目指す(トキ)は必須だぞ?」


「…ピンときませんねー。その刻はまた頑張りますー」


「しかしそのエナジー、前世かなりチカラを持つモノであった様だな」


「そうなんですー? よくわからないですがみなさんの為になってるので良いと思ってますー♪」


(…あの刻きつねさんにキチンと教わっておけば良かったです…)


 眼前のヴァジュラ=ダラとの彼我の差を痛感しながらシンノは彼の地でのやり取りを思い返していた…。


「良ク戦ッタ。…ソレモコレデ終ワリダ…!」


「ゼ…シンノさぁ~ん! その眼のまま周囲を観て下さぁい!」


 シンノはアメの声を聴き、言われたとおりにしてみた。今まで全く気付かなかったがそこかしこに精霊神(ヤオヨロズ)がいて忙しなく動いていた。


「それこそがチカラの提供者ヤオヨロズ(精霊神)です。そのまま自分の内なるヌプルに集中して見つめて下さい!」


 言われたとおりにすると…ある…! 己の中に存在する霊力…その源となるナニカが確かにある!


「そこに向かってヤオヨロズ(精霊神)達からチカラを賜り取り込んでください!」


「…みなさん…僕にチカラを…貸して下さいー!」


(…ごおうごお~キミは境涯が足りないよ~♪)


(るるりるら~今のままではできません~♪)


(ささらさら~ボクも力をかせないや~♪)


(ずずんずん~ワレも今のそなたではできぬ~♪)


(ヤオヨロズさんたちの…声…? 今の僕では…ダメですか…?)


「! ヤオヨロズ達がチカラを貸してくれない? あ、危ないです!」


 アメは身を乗り出し柵を超えて闘技場に降りてきた。


「××××さぁ~ん! そのままではー!」


 二人の間に入り両手を広げてアメは言った。


「はぁはぁ…勝負ありです!」


 ヴァジュラ=ダラは眼前に顕れたおよそこの場に不釣り合いなモノに対し(たず)ねた。


「…ドウ言ウ意味カネ?」


「観ての通りです! ゼッ…シンノさんにはヤオヨロズ(精霊神)がチカラ貸せずヌプルを高めて己がトゥムとウカムレ=エトゥッカ(融合発動)出来ません! その状態で貴方(あなた)の…その技を受ける事は…逃れようのないカリ・ラマトゥを受け入れる事になります…。今は…彼はまだその刻ではありません…!」


「…アメさん…? 僕…まだ…やれま…」


「せんです! 今これを受けたら絶対にダメです!」


「…一旦始マッタコラㇺ・ヌカㇻ(比武)は…決着カ降参無シニハ止メラレヌ…」


「…このモシリ(世界)での…強さの深さと広さ…高さを…観じられましたよね? それで良きです! ここで退いても…この方のいる高みを目指せば良いのです! ハッキリ言います。シンノさん…このコラㇺ・ヌカㇻの結果から…あなたはまだ負け方を選べるほど極めてはいなかった…そう言う事です!」


「…負け方を選べる極みに…いない…ですか…そ、それでも僕は…アメさんを解放する為…優勝しないとです…」


「…ソコナメノコムスメノ解放ナラバ問題ナイ。我々ハソノ不正ヲ確カメ、戒メニ来タノダカラナ…!」


「…そう、そうなのですね…。じゃぁ…自分のウェウェク(未熟)さを悔いながら挑戦しなくても…良いですね…!」


「左様デアル。等シキ高ミニ至リシ後、尋常(じんじょう)ニ勝負致セバ良イ」


「…解りましたー。…僕の…負けです。参ったですー!」


「…勝負あり! 勝者、ヴァジュラ=ダラ様!」


 歓声が沸きあ上がる。その中にはシンノの健闘を讃える声も混じっていた。


「…せっかくのカムイエウンケゥエ(神威之色身体)も…莫大なトゥム(氣力)も…技と使い方がウェウェクではイコロ()の持ちぐされでした…」


「こちらでは極めしモノはメル=ストゥ=マゥェを(つか)え…さらにカムイ(神威)となられている方も存在しているはずです…!」


「それは…今の僕では絶対に勝てませんねー…」


「はい…その通りです…。でもこれでまた強くなりましたです♪ 己と相手の力量をきちんと見極める事…それも大切なチカラ(権能)ですから!」


「そう言えば…あの刻…ヤチホコさんは…みなさんを束縛していたモノが…観えていて…見事断ち切っていましたね…」


「その通りです! トゥムはシンノさんよりはるかに弱かったですがあの場の誰もが出来ないチカラと技を…スセリちゃんと協力して放ち皆を解放して下さりました!」


「…ヤチホコ…ソノ名ノ響キ…オオトシノモシリノモノカ?」


「…オオトシ…さんは確か…ヤチホコさんのニスパケ(兄君)だと聞き及んでいます…!」


「アノモノノユㇰ()ナラバ…キット今ノ我ト同様ノチカラ遣エルデアロウ…!」


「オオトシさんの事はご存じなのですかー?」


「…尋常ナ勝負ニテ一度負ケテオル…素晴ラシキトゥムコロクル(闘士)デアル…!」


「…ヴァジュラさんが尋常な勝負で…! すごいですねー!」


「ウム…。何ヨリ我等ガイウェンテㇷ゚=ル(魔道)()チカケタ(ところ)ヲ救ッテクレタノデアル…。ソノ恩ハ計リ知レヌ…!」


「そうだったのですか…。…ここから彼らのモシリまでは遠いのでしょうかー?」


「ナカナカニ遠イ、ガ、シンノ…ソナタノトゥムナラバ…ロクンテゥ(帆掛け舟)ヲ用イレバ数度スクス=トイ(明るく日の差し込む昼)(めぐ)ル頃ニハ行ケルデアロウ…!」


「…コラㇺ・ヌカㇻ(比武)を勝ち抜いてそれも得ようとしていたのですー…」


「コノポンモシリ()何艘(なんそう)カアル。好キナノヲ選ンデ遣ウガ良イ」


「本当ですー?」


「我ト闘イ生キ残レタ事、ソシテソナタノ更ナル可能性ニ対シテノ褒美(ほうび)デアル!」


「ヴァジュラさま…本当にありがとうございます…!」


 アメは深々と頭を下げた。


「良イ。ソレヨリシンノヨ…メル=ストゥ=マゥェ(輝く根源のチカラ)ヲ身ニ纏イシ後、ソノ刻コソ全力デ我ト尋常ニ勝負セヨ…ソレガ見返リデアル!」


「…わかりましたー! 必ず身に着けて強くなって…再戦ですー!」


「技ノ研鑽(けんさん)(おこた)ルデナイゾ? トゥムニ技ガマッタク釣リ合ワヌ!」


「はい! その辺りも含めて学んできますー!」


「ウム! 刻ニ…シンノヨ、ソナタノソノ熱キイレンカニ対シ新タナ名ヲ送リタイ…我ガモシリヨリ遥カ西方ニアル…インペリウム=ローマ(帝政ローマ)ノ更ニ西ニ住マウモノ達ノイタクで…“ゼスト・リウス”…“熱キ奔流”ト言う意味デアル…恐ラク…ソコナアメガ呼バント欲シタ名に近キ音ト思ッタガ…如何(いかが)デアルカナ?」


「…ゼスト・リウス…た、確かにとても近いですー。でもこちらのイタクなので言えるですー♪」


「シ…いえ…ゼストさん♪ 私もとっても良きと思います♪」


(しか)ラバ()ヲ取リ計ラオウ…! ヴァジュラ=ダラノ名ニオイテココニ宣言イタス! コノモノ、“シンノ=パセ”ハ今ヨリ“ゼスト・リウス”デアル!」


 ヴァジュラ=ダラがそう言い切ると(にわ)かにシンノ=パセの身体が輝きだし…上空より文字を(かたど)った様に観える光がシンノ目掛けて降り注いだ!


「…!? …痛くも何ともありませんね…! あ! こ、これは…僕の認識まで…僕は…ゼスト・リウスであるってなっていますー!」


「左様。コノモシリ全テヲ見守リシ…シ・パセアンペソネプ(大いなる真理)ヘト誓イシ故…今後ハ“ゼスト・リウス”トシテソノ名ノ通リ熱キイレンカニテ邁進(まいしん)スルガ良イ…!」


「ありがとうございますー♪ 名前の通りに頑張りますー!」


 ヴァジュラ=ダラはおそらく微笑んで頷いた。


「ソシテアメヨ…。“アメノオハバリ”ノママデモ良イガ、オオトシ達ノ住マウモシリデノ主タルイタク(言の葉)ニテ名乗ル方ガ良イデアロウ…故ニ…“カンナ=サㇻ=(天の尾を)トゥィエムス(切る儀刀)”ト名乗ルガ良イ…!」


「ア…いえ、カンナさん! こちらもぴったりなお名前だと思いますー♪」


「確かにそうですね! …これは私も儀が必要ですか?」


「…ソナタノ場合ハ名ノ意味ヲ違エテオラヌ故…ソノママデ良イ」


「…イレンカ廻らせる際はどちらにしても共通の意味を浮かべることになりますから…確かに問題なきですね!」


「ウム! ゼスト・リウス、ソシテカンナ=サㇻ=(天の尾を)トゥィエムス(切る儀刀)ノコレカラガ良キモノデアル様ニ!」


 ヴァジュラの祈祷によって二人の身体はほのかに優しく輝いた。


「…サテ…此度(こたび)主催(しゅさい)デアルコロ=クル(領主)ヨ…」


 問題無さそうな内に逃げ出そうとしていた領主はその場で飛び上がって固まった。


「ははは、はぃぃぃぃ!」


「今後モコノコラムヌカラ=ミンタ(闘技場)ラノ運営ハ任セル。ガ、レンカクス=ラム(自由意思)持チシモノヲ一方的ニ拘束シ、(あまつさ)ヘ賞品ニスルノハ許セヌ」


「ももも…申し訳ございませぬ…! 今後一切斯様(かよう)な事は…!」


「ソレカラ本国デハ廃止(はいし)サレテイル故…奴隷(どれい)解放(かいほう)シ、労働者(ろうどうしゃ)トシテ正当ナ報酬(ほうしゅう)ノモト働カセヨトラージャ()ヨリノ命デアル!」


「か、かしこまりましたぁ~! 今後はキチンといたしますぅ~!」


 領主の二つ返事は悪党らしからぬがそれも()む無きである。己の三倍の背丈で下手すると十倍の体格を(ほこ)るであろう存在が理性的に正論を問うのである。


「マカセタゾ…! キチントセヌト…次はラージャガ直々ニ参ル事トナルデアロウカラナ…! ソノ意味…解ルデアル…ナ?」


「ははははぃぃぃ~! もちろんでございます~!」


「…デハ、コノモノヘ勝者ノ報酬トロクンテゥヲ…!」


「はは…! …? 勝者は…ヴァジュラ様では…?」


「我ト闘イ…マトモニ数撃受ケテナオ、カリ・ラマトゥセズ生キテイル…ソレダケデ優勝ト言ッテモ良イト思ウガ?」


「た、確かに…!」


「我等ハコノケゥエ故並ブモノ無クテ久シイ。要ハ…嬉シイノダ…! 中々オラヌカラ…ナ!」


 ヴァジュラ=ダラはそう言って笑ってみせた。


「ありがとうですー! 前の様にイウェンテㇷ゚=ヤィカ(魔獣化)ラ出来たら同じくらいの大きさになれたのでヴァジュラさんも戦いやすかったと思うです」


「…恐ラクメル=ストゥ=マゥェ(輝く根源のチカラ)…ソシテソノ上ノチカラノ解放ニリレシ刻…ソノ身ノ有リ様マデ自在トナルデアロウ…! ラム=アサム(心の底)ヨリノアリキキノ(精一杯)(はげ)ムガ良イ…!」


「わかったですー! では…先ほど教えてもらった彼らの住むと言う…モシリ=イキリ=ナ・(統一奴之国)ラへ行ってくるですー!」


「ウム。腕ヲ上ゲシ後マタアオウ!」


「おお? ニイちゃん…このポンモシリ()から出ていくのかい? 短い間だけど仕事の手伝い、ありがとな!」


 二人の会話を聞いて家主が声をかけてきた。


「こちらこそアマソㇳキ(寝床)イペ(ごはん)、本当に感謝ですー!」


(もう)けは…すっからかんだが…なぁに親方も文句は言わんだろう。何せヴァジュラさまの攻撃を受け止めるような奴相手じゃな!」


「…ソノ賭ケハ…コノ…ゼスト・リウスモ勝者トナッタ故…ドチラニ賭ケタモノ達ニモ領主カラ配当ヲ出サセル故ラムシリネ(安心する)スルガ良イ♪」


「ほほほんと~ですかぁ? やったぜニイちゃん! オマエさんのイタク(言の葉)信じて良かったぜい♪」


「オヌシ等ノ(ろく)モ正当ニセヨト命ジタ故…一層仕事ニ励ムガ良イ!」


「何から何まで…大した助かりっぷりですわ! 仲間も喜ぶと思いますわ!」


 ヴァジュラ=ダラは優しく微笑みながら(うなず)いた。


「ラージャの意向デアル…。スベテノウタラニ出来得ル限リ等シクピリカ(幸せ)ヲ…! 我々ハソノ為ニ各地ヘ(おもむ)イテイルノダ…」


「さぞや素晴らしきルーガルなのでしょう…! 良きです!」


「ラージャコソ…(かつ)イウェンテㇷ゚=ル(魔道)(いざな)ワレタガ…オオトシ()ニヨッテ救ワレタ…エカンナイ=ラムエト(いにしえの英)ク=カムイ(雄神)降臨(こうりん)サレスベテガ丸ク収マッタ…シカシ、ソレマデニ(うしな)ワレシイノトゥヤ苦シミノイレンカハスグニハ消エヌ。故ニコウシテ各地ヲ(めぐ)ッテイルノダ…」


「犯してしまった過ちは消せはしません…が、別の事で(つぐな)えると…私もそう思います!」


 カンナ(アメ)は軽く拳を握り締(にぎ し)めながらそう応えた。


「ソノイタク(言の葉)…我ノラム()モ救ワレタ気ガイタス…有難キ…!」


「私も…主と共にはからずもウェンプリ(罪を犯す)し、彼のモシリへと()とされた身ですから…! でも…償えたと見做(みな)されたからこうして…緋徒(フィト)として出てこれたと思っています…!」


「…ゼスト・リウスハ…ソウカ…マダデアッタカ…! カムイエウンケゥエ(神威之色身体)ニ至レドメル=ストゥ=マゥェスラ発セヌハソノ為デアッタカ…!」


「…その通りです…! 彼のモシリではそもそも殆どのモノがウカムレ=エトゥッカ(融合発動)出来ませんので…トゥムの強弱で決着がついていましたが、こちらではそうはいきません…。彼に…それをわかって欲しく今回のコラㇺ・ヌカㇻ(比武)に参加させたのです」


「…ナル程…。スバラシキ冴エデアルナドゥム=ニンガル(姫君)ヨ…! 今後トモ…ゼスト・リウスヲソノラムアン(賢さ)サデ導ク事…我カラモ頼モウ…! 我ノ今一番ノ楽シミハ…ゼスト・リウスヨ…ソナタノ生長デアルカラナ…!」


「…かしこまりました…! 私も…ゼストさんには更なる高みを目指してもらいたいので…出来る限り協力させてもらいます!」


「ウム…! 二人ノアシンノ=パイェ=カイ(新たなる旅路)ピリカ(幸せ)ヨアレ! デハ…一旦サラバダ!」


 そう言ってくるりと背を向けヴァジュラ=ダラは去っていった。


(…我モ…ソシテ我ガニスパケ(兄上)デサエモ楽シマセルトゥムコロクル(闘士)トナリテ戻ルガ良イ…!)


「…さあ…私たちも…ヤチホコさんたちのいるナ・ラ(奴国)へ向かいましょう!」


「了解ですー!」


「ロクンテゥじゃどれだけかかるか…ほらこれを持っていきな! 何、さっきコロ=クル(領主)さんが渡しに来たんだわ、だから遠慮なく、な♪」


「助かるですー!」


 ゼスト・リウスは家主から食料と水をもらい船着き場へ向かった。


「どれでも良いと言っていましたねー。何か違いはあるのでしょうか?」


 一見しただけではどれも同じ様に観える。


(…オ主ノトゥムナラバ…)


 ヴァジュラ=ダラの言の葉(イタク)を思い出し順番に氣力(トゥム)()めて触れてみた。すると一(そう)帆掛け舟(ロクンテゥ)がぼんやりと(かがや)きだし何としゃべりだした!


「…行き先を命じて下さい…」


「…これですねー! これに乗っていきますー!」


「コイツぁたまげた! このチㇷ゚()ってこんなチカラあったのか…!」


「? いつもトゥムを籠めて乗ってはいなかったのですー?」


エィキ・クル(権能の遣い手)の方々は…トゥムコロクル(闘士)となられてチェㇷ゚・コィキ(漁労)ニホセ(伐採)の為にロクンテゥに乗ったりなんかしないからな!」


 家主は改めて権能の遣い手(エィキ・クル)との差を観じた。


「良いよなぁ~! オレらも遣えればもっとラクに仕事できるのになぁ~」


「強いイレンカでチス()を動かそうと押し続けてみてくださいー! いつの日かきっと動きますー。それがトゥムによってチカラが増幅された状態ですー! 大切なのは…絶対に動く、動かせるチカラが自分にはあると信じて強いイレンカを発する事ですー!」


「…イレンカ(ヲモヒ)か…。よし! 明日から毎日仕事の後試してみるわ!」


「頑張るですー! 僕もヴァジュラさんに勝てるように鍛えてきますー!」


「…それに比べたらなんかカンタンに出来る気がしてきたぞ!」


 家主も頑張ってみる事にした様である。


「ではー行ってくるですー!」


「ああ! 気ぃつけてな~!」


 皆に見送られてゼスト・リウスとカンナ=サㇻ=(天の尾を)トゥィエムス(切る儀刀)は旅立った。


やはり挑んで…そして負けはしたけど、それ以上に素晴らしいモノを得た様ですね♪


用語説明ですm(__)m

・トゥムアスヌ:チカラ強い

・ニスパケ:兄を継承で呼ぶ言の葉。兄上、兄さまなどの意味。

・イウェンテㇷ゚=ヤィカラ:魔物、悪魔+変身する、化ける、姿を変える→「魔獣化」としました。

・エカンナイ=ラムエトク=カムイ:いにしえの+勇敢な、勇者+神、神威→「いにしえの英雄神」としました。

・チェㇷ゚コィキ:魚とりをする、漁労をする

・ニホセ:伐採、木を伐り倒すこと

・アシンノ=パイェ=カイ:新たに+をする→「新たなる旅路」としました。

・チㇷ゚:舟、丸木舟。参考:ヤレパチプ(陸:ヤ+大型船:レパチㇷ゚→大型万能船)

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