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第94倭 コラㇺ・ヌカㇻノミ開始!

ハルマヘラを後にテルナテへと…

テルナテは摩訶陀(マガダ)国の支配する島である。故に定期的に本軍が徴収(ちょうしゅう)に来る。管理を任されるものは殆ど左遷(させん)に近く、国王(ルーガル)の目も届かない為好き放題していたが…並の奴隷や一般民(ウタラ)では遥か遠くの本国にいる国王へ領主(コロ=クル)横暴(おうぼう)を伝えに行く事は叶わなかった。

領主が退屈しのぎに興奮(こうふん)を求める(ところ)から比武を行う比武台…闘技場とそこで戦う闘士、剣闘士が生まれていき、身分の低いモノ達の立身出世の唯一の道となっていった。優れた闘士は本軍への登用もあったのである。闘士として戦う事は危険ではあるが、島で奴隷として働くよりは一試合でも命がけで出た方がよほど実入りが良かった。


「…ここでなら…ニイちゃんがチカラ出しても平気なヤツらがわんさかといるぜ」


「…たしかにそうですねー。…何名かは強いトゥム(氣力)を観じますー。ここで優勝したらいいですー?」


「…カンタンに言うねぇ…。ここの中はエィキ・クル(権能の遣い手)しかいないと言うのになぁ。ニイちゃんよほどの自信だな」


「…フツーの方では僕の相手にはならないですよー?」


シンノ=パセはにこやかに(こた)えた。


「お、親方…! 今回はいつものコロ=クル(領主)のヤローだけじゃなくって、あ、あのお方達も来られているようですぜ…!」


「…あちゃ…そいつは優勝は絶対出来んな! ニイちゃん…悪い事は言わねえから仮に勝ち進んでも優勝はあきらめな、イノトゥ()が惜しけりゃな」


「…! そんなすごい方が来てるのですかー?」


「お、おい何嬉しそーに言ってやがるんだ? ニイちゃん…アンタもたいがい並外れて立派だが相手が悪い。アチラさんは緋徒(フィト)の規格を超えちまってるからな~」


シンノはさらに高揚(こうよう)して応える。


「良いですねー! 僕はそーゆー相手をいつも望んでいますからー!」


「おそらく二番手にでもなりゃピリカメノコ(べっぴん)さんは取り戻せると思うから、イノトゥだけは大事にしろよ!」


「わかりましたー!」


(…最近ウチのコロ=クルの非道(ひどう)さがどこぞより漏れてラージャ(王:ルーガル)の側近たるあのお方達が来るっていうウワサは本当だったな…。だとしたらあのピリカメノコさんものニイちゃんに(かえ)されて…身売りした奴は…! まあ…オレらはコロ=クルに命令されただけだからな…。もらうモノもらったらとっととオサラバ…だな!)


親方はそう思案し自分の身の安全の算段をつけ、


「…さあ着いたぜ…! 最初にあたる様なヤツに負けるなよ! ニイちゃんにしっかり賭けとくかんな!」


「賭け…? 誰が勝つか当てっこもしてるんですねー」


「そう言うこった。新入りとはいえそのケゥエ(ガタイ)だ、勝ち進むほど実入りは減るだろうがな!」


「なるほどですー。…では僕とアメさんの分として僕の勝ちに賭けてもらっておいても良いですー? あとで元金はお返ししますのでー」


「へっ! 大した自信だな! 良いだろう! しっかり稼がせてもらうとするか!」


「ゼ…シンノ…さん…? …。…! まさか…!」


「そうですー。僕一人ならいらないんですが…今後ゼッタイ必要なので…これで買わせてもらいますー!」


「ヤチホコ君達のお話に出てきた…あの…!」


「はい、あのロクンテゥ(帆掛け舟)を買おうかなと! 確かヤチホコさんはトゥムによって速さがすごく変わると言っていたはずですので、この広いモシリを動くのにはとても便利だと思いましたー」


アメは普段の口調から想像しにくい頭の冴えをみせる彼に感心した。


「流石です! とっても良きです! 親方さん、よろしくお願いしますね!」


「お、おう! まかせておきな!」


満面の笑みを浮かべお願いしてくるアメの美しさに照れてしまい空を見上げながら親方は応えた。


「さあ…頑張っていきますよー!」


闘士としての登録等は親方が手配してくれた。会場は円形状の観覧席に囲まれた処であった。周囲には天幕が立ち並び、闘士の受付や観客の食事の提供や、先の話にあった賭けの受付をしていた。


「…じゃぁオレはコロ=クルの処へ…アメさんを連れて行くから、お前は賭けの手続きをよろしくな」


家主にそう伝えアメと共に領主の滞在している一段高く設置された天幕へ向かっていった。


「…で、優勝せしモノには…と掲げておくのはいかがなモノでしょうか?」


「それは名案だ。こたびのコラㇺ・ヌカㇻ(比武)がより一層盛り上がるであろう」


「あのお方達が来られている故…他者の優勝はあり得ません。そしてこの(かか)げ方であれば…問題ないかと…」


「で、あるな。実際に(めと)る場合は初夜権を行使で…と」


「いづれにしても儲かる訳であるな…! 万一の場合はちと惜しい気もするがな…」


領主はアメを()める様に()てそう言った。


「まぁ、余の部下が勝てば金で話がつくであろうし、あの方達は女性(にょしょう)なんて興味なかろうて…」


「おっしゃる通りで。ではその手はずで…」


「良い。まかせたぞ…!」


「はっ!」


返事をしてアメを一瞥し親方はその場を去っていった。


「しかしこれはまたこの辺りではめずらしいカㇺカ()の色であるな! どこぞよりコィヤンケ(漂着)したか?」


「…ええ…別のモシリ(世界)よりこの地へ参りました」


「ほう…声も良いのう…♪ これは今度のコラㇺ・ヌカㇻノミ(比武祭)が終わるのが楽しみであるな…♪ おい…このモノに見合うアミㇷ゚()を持て!」


そう言うとどこからともなく召使達が(あらわ)れてアメを着替えさせた。


「…これは…かなりのサラㇺペ(上等な布)で造られたモノと見受けます…」


「わかるか? どうやらそれなりの身分の出であるな? これはマガダ=モシリのラージャより賜ったドゥム=ニンガル(王女)のアミㇷ゚よ…! しかしこのアミㇷ゚に負けず着こなすあたりは流石よのう…♪」


「…ドゥム=ニンガルの…ですか…。なるほど納得の質…良きです♪」


滑らかな着心地に納得し満足気にそう応えたアメの品位漂う所作は、領主が一瞬気圧(けお)される程のモノであった。


(…このモノ…本当に王族の如き振る舞いをみせおるわ…)


上辺だけではない真なる品の良さを観じ、領主は手を出すのを躊躇(ためら)ってしまっていた。


場所は変わり天幕の立ち並ぶ中、シンノは何やら説明を受けている様子である。


「…はい、これで参加出来ます。無理せずイノトゥ第一にされて下さい…」


「わかりましたー、ありがとうですー」


シンノは受付にそう応えて控室を見回した。確かに皆氣力(トゥム)(つか)えそうではあった。ある程度の気勢を感じるモノもいる。


(…アメさん…待っていてくださいね…すぐに迎えに行きますー!)


「…以上をもって開催の挨拶とする。なお、今回の優勝者はこちらのピリカメノコと婚姻権も手にすることが叶う。皆のモノ、(うるわ)しいドゥム=ニンガル(姫君)の前故、一層の奮闘をチパ=チパ(期待する)してるぞ!」


その言の葉と共に登場したアメに観客からも歓声が湧き上がった。もちろん闘士、剣闘士達も殆どのモノがその麗しさを目にした途端己を激しく鼓舞(こぶ)させていた。


アメが壇上から見回すと…いつもの優しい面持ちの偉丈夫を見つけたので目くばせして微笑みかけた…どうやら全員自分にされたと思ったらしく…闘士達の士気は激しく高揚した…!


(…いいですねー! 皆さんアメさんに乗せられて先ほどよりさらにチカラが増してますー。楽しくなりそうですー♪)


シンノは相手となる面々のチカラが増した事を心底喜んでいた。


「…それでは第一戦のトゥムコロクル(闘士)、前へ!」


「…確か僕でしたねー。はーい! 今いくですー」


どうやら相手は戦槌(せんつい)遣いの様である。


(…楽しめると良いですね…)


「はじめ!」


銅鑼(どら)()と共に比武が始まった。戦槌遣いは氣力(トゥム)を高め己の武器へと(とお)し威力を高めている。


「思ったよりけっこうすごいトゥム(氣力)ですねー♪」


嬉しそうなシンノを観て舌打ちしながら


「…こいつを喰らってもそれが言えるかな? ニイちゃん!」


言うや否や大きく振りかぶり打ち下ろしてきた!


「あ、危ないです! シンノさん! よけて!」


アメの声が届く前に激しい衝突音が鳴り響き、打撃の風圧で砂塵が舞い視界が(さえぎ)られた。砂煙が晴れて観えてきたのは…それを両手で受け止めているシンノの姿であった。


「…かなりの威力でしたねー! これなら僕も少し開放しても大丈夫ですねー♪」


そう言ってシンノは自然体に構えた。


「な! バカな! アレをトゥムなしで受けたのか!」


「そうですー。でもこのままではさすがに受け切れなさそうですので…トゥムを解放します…」


そう言った瞬間シンノから爆風の様に氣力が吹き上がる!


「…なんだそりゃ…! なんてデタラメなチカラ…」


戦槌遣いは知らずの内に後ずさりしてしまっていた…。


「…それ以上下がると敗北とみなされるぞ!」


審神者(サンガ)の声に我に還り足元を確認すると…戦槌遣いは確かに己が後ずさったのだと、気圧されたのだと認識し、屈辱(くつじょく)から激昂(げきこう)した。


「おおお! 屈辱なり! このイレンカ(ヲモヒ)ある限り負けぬ!」


再度自身の極限まで氣力を練り上げ戦槌へと伝わらせていく…!


「良きですー♪ さあーいきますよー!」


シンノはその言の葉と同時に大きく身体を()じりながら後方へ()()り構える。


「分かりやすすぎだな! そんなの(かわ)せば全く当たら…!」


「…ウェンテ=ハィヨクぺ(破甲)=キㇰ()!」


シンノは身体を大きく捻ったまま後ろ足のつま先を軸にして方向を定め、戦槌遣いの目の前に前足で踏み込み、(ひね)り上げた上体を踏み込みの反動で勢い良く解放し投げつける様に拳を()ち込んだ!

戦槌遣いは咄嗟(とっさ)に手中の相棒で受け止めようと試みるも(あめ)細工の(ごと)くひしゃげて貫かれ強烈に撃ち込まれた!


「ぐほぉ!」


そのまま比武(コラムヌカラ=)(ミンタラ)の柵まで吹き飛んで激突してしまった!


「やりましたー♪」


「勝者、シンノ=パセ!」


シンノ=パセはこの比武で加減を(つか)んだらしく、(ことごと)く一撃で倒し勝ち上がっていった。


勝ち進んでいっているようですね…!


用語説明ですm(__)m

・エィキ・クル:使う+者→「権能の遣い手」としました。

・コロ=クル:持つ、所有する+者→「領主」としました。

・ピリカメノコ:美しい女性→「べっぴん」さんと親方の言の葉は訳しています。

・コラㇺ・ヌカㇻ:力量、度胸を試す→「比武」としました。

・コラㇺヌカㇻ=ミンタラ:比武+庭、外庭、広場、土間→「比武台(闘技場)」としました。

・コラㇺ・ヌカㇻノミ:比武+祭→そのまま「比武祭」としました。

・ドゥム=ニンガル:王女(シュメール語)

・ラージャ:王、ルーガル ラージャはサンスクリット語です。

・トゥムコロクル:チカラ+持つ+者→「闘士」としました。

・ウェンテ=ハィヨクぺ=キㇰ:破壊+武具、鎧、打つ、殴る→「破甲撃」としました。


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