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魔王だって恋をする  作者: 桃白白
1/4

初対面だって恋をする




――――――――――ここはソーヤ大陸。魔王が大陸の侵略を企て、剣や魔法などが存在している、いわゆるファンタジー世界である。そんな大陸の、魔族も侵略を企てないであろう、辺境の森の街道で、その少年は歩いていた。


「♪♪♪♪♪」


少年が機嫌良さそうに鼻歌を口ずさんでいる。どうやら向かっている方向から考えて、森の方に向かっているのだろう。

その少年の名は、ロアと言った。今年で14歳の彼は、ヘイン村という田舎の小さな村で育った。8歳の時に親が行方不明となり、一人で村のはずれの山小屋に住んでいた。彼はお金がなく、自給自足の生活を余儀なくされていた。

おそらく、自給自足のため、山菜でも山に採りに行こうとしているのだろう。


少し歩いていると前方から、貧相な皮衣を着、フードを被っている不思議なオーラを纏った者が近づいて来ていた。


「こんな山中に一人でどうしたんだろう......?俺もだけど......」


ロアがそう思って不思議に思って首を傾げた瞬間、颯爽と風が吹き、その者のフードが着用者の顔を隠すのを辞めて、着用者のまるで絹の様な灰髪と、少女の顔を顕にした。


ロアはその少女の容貌を見て、目を見開き、感嘆の声を漏らした。


「え..かわいい......」


灰の色の髪に、輝きを放ち、透き通ったルビィ色の瞳。まるで天使、いや堕天使の様なその少女の姿を見て、ロアは少女に一目惚れをしてしまったのだ。


次の瞬間、本当に、いつの間にか少年は少女の正面に向かっていた。

少年は、清流の様に呟いた。


「好きです!」


ロアは真っ直ぐで正直な少年であった。

いや、不器用と言った方が正しいかもしれない。

ロアは思い立ったら行動するタイプ......の究極系だったのだ。

元々、友人も何もいなかったからかもしれない。

名前を聞いたりするのをかっ飛ばして、最初に好きと......。

これには酒場のナンパ男でも感服である。


「あ....え..!?」


少女は頬を赤らめて理解に苦しんでいた。

急に好きと言われたから?

いや、それだけではない。

少女は魔王だった。世界の諸悪の根源、魔王。恐れられたその魔王の名は、リアと言った。

リアは、好きと言われたのは初めてだったのだ。

しかも、名も知らぬ少年に。


「急に何を言ってるのだ!お主は!ワシは恐れ高き魔王じゃ!身の程をわきまえよ!」


魔王は冷静に答えた。と、自分では思っていた。

魔王だと言えば、相手も怖がって逃げるだろうと思ったのだ。

でも、そんなことは恋に落ちた少年の前では無意味だった。

いや、人間達が考えていた魔王の性の通り、リアが本当に悪の根源、強欲で無慈悲な魔王だったのなら、ロアにも効果があったかもしれない。だが、リアは魔王である以前に年頃の少女であったのだ。少女は自分の恥の感情を隠し切ることは出来なかった。魔王に相応しい様に、言葉の語尾に「じゃ」とか「のだ」とか言っているのも少しでも自分を大人っぽく、相応しい魔王っぽくしようとしていただけだった。


「じゃあ、貴方の元で僕も働くので、一緒に居させて下さい!料理とか出来ますよ!」


――――――――――――――――――――――――――――――――――「はあああああああ!!!!????」


ロアの言ったことがリアに理解出来るはずもなかった。だって魔王なのだ。皆怖がるはずだ。

それなのに.....。


「嫌じゃ!お前みたいな人間を雇えるわけあるか!」


リアはその華奢な身体から生えている魔族の羽根を使い、飛翔して逃げた。

でも、ロアは足が尋常じゃないくらい速かった。ロアからは逃げられない。


その後、リアはやっとの事で魔王城の玉座の間まで帰って来た。リアが安心したのも束の間、ロアは

自分の足で魔王城に着いてしまったのだ。


ロアはそのまま魔王城のトラップを掻い潜り、玉座の間に辿り着いた。


そこにはリアがいた。


「ここで働かせて下さい!」


「お主!なんで魔王城にまで来れて、はたまた中に入れるんじゃ!おかしいじゃろ!」


リアは純粋な疑問を投げ掛けた。だがロアの答えはリアの予想を大きく覆すものだった。


「あなたの事が好きだからです!」


リアは赤面した。まるで大衆の面前で恥ずべきことをしてしまったの様に。あるいはそれ以上に。


「......もう良い、勝手に働け!」


「はい!」


リアは少年の熱情に屈し、溜息をついた。


――――――――いや、熱情に屈したから、だけではない。リアはロアの価値について考えたからだ。

ロアは他種族と魔族の和解への架け橋になるかもしれない器だ。

魔王城を単独突破できる程の力。

それをもってすれば、人間の民も屈するかもしれぬと思ってのことだった。


「クックックッ......」


魔王は不敵な笑みを浮かべて、嗤っていた。........まあ、本当にその魔王の思惑が果たされるのかは、分からないが。


これは、魔王と少年の恋物語。


そして、世界を救うかもしれない物語。


これはその、出会いの物語である。

















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