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憧れの彼女  作者: 「」
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力なく二人して布団の上から動けないでいた。

精根尽き果てるとはこのことだろう。

敷かれている布団は湿気を含み、それとは違う湿り気も混じり不快にも感じるが立ち上がる元気すらない。

私ってこんな感じやすい体質だったんだ……。

19年付き合ってきたこの身体にも知らないことはあったんだと感想に耽り、股に垂れた粘性の高い液体を指ですくい口に含んだ。


にがぁ~。

何してるんだろ……。私……。


自分の無意識の行動に赤面。全身がこの数時間感じた恥ずかしさと気持ち良さとは違う体温の変化。

恐る恐る隣にいる彼の顔見やると、けだるげなまま天井を見つめていた。

恥ずかしい一面を見られずに安堵する。

お互いの恥ずかしいところ見せ合い弄り合い、男女のそれを、してしまったというのに私はまだ生娘のような心持ちだ。

自分で願ったことだけれど、彼に溺れてしまった私は息を吹き返した。

彼という存在を媒体に死にかけた私の心は蘇生された。

自分の覚悟も諦めもまだ弱いのだ。

大学生。

休学しているけどれど、私はもう大人だと思っていた。お酒を飲める年齢にも近づいている。自分で決め生きいく。

その実、ただ周りに振り回され光ある場所にふらふら忍び寄る虫みたいなものかもしれない。


自重気味にため息をつき、ようやく戻ってきた体力を使い上半身だけ起こした。

ティッシュ代わりにしているトイレットペーパーを15センチ程度で切り取り後処理をする。

お布団はどうしようもないから裏返しにしてれば今日はどうにかなるだろう。明日にでも洗わないと血のあともシミになりそう。

そんなに目立つものでないし、気にしなくもいいかな。



「春人くん着替えよう?」



身体の熱は冷めていない。心もまだ温かい。

けれどこの家はそれを蝕む。



「あぁ、うん」



気のない返事でぼんやりしてる春人くんの身体を抱き上げなら起こしてあげる。

彼の身体もまだ熱い。

ただそれだけの事実に隙間風に侵された私の心にまた温かみをもたらした。

きっと春人くんは私の王子様だ。




「冬乃先輩……」

「なぁに?」



彼の手が私の顔を優しく撫で付ける。

ゆっくりと顔と顔が近づき、



「……んっ」



私の吐息が漏れる。

毒で死ぬ私を生き返らすただ一人の王子様。

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