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大学にいても標的になるだけ。
俺がいなくなることで智明たちが標的になるかもしれないと思っていたが、高橋の嫌がらせの標的は自分だけなのでなんともないらしい。
この時期から休みが増えると単位がきつくなっていくが致し方ない。
智明と藤井さんが高橋の行動を見てくれているので、変わったことがあれば連絡をくれる手筈になっている。
ということでやってきました我が実家。
親父に用事があって帰宅することに。
連絡済みなので親父の帰宅を待っている状態。
待っているのも暇なので携帯で冬乃の動きを見ていると、ホテルの場所が移っている。
今回は市外で職場まで電車で30分ほど遠いところになっている。
高橋にでも見つかったのかと心配になる。
が、出来ることはない。
彼氏として、男として情けない。
彼女と再会し、支えていこうと思っていたのに。
嘆いていても仕方ない。
ただ待っているだけで冬乃は帰ってこないし、傷つき続けるような気がする。
俺の手の届かないところに逃げていくそんな予感すら。
あいつは弱くない。でも強くもない。
優しい真面目が故に甘えることが出来ずに一人で抱え込む。
日々のストレスに加え抱える問題もある。
キャパシティオーバーになるのも時間の問題。
危ういバランスの上で成り立っている。
普通の女の子。
色々と考えているうちに親父が帰宅。
ドアをノックされ『話があるなら俺の部屋に来い』とだけ伝えると階段の降りる音が聞こえた。
「悪いな親父。仕事で疲れているところ」
「構わん、息子の話ぐらい聞く余裕はある。それより早く言え」
「あぁ」
思い切ってマンションの惨状、犯した人間が高橋遊という人物であることを伝えた。
「そうか。風俗嬢に対する事件は珍しくもないため俺のところはその件について話が来ていなかったな」
「高橋遊について知っていることは?」
「お前の交際相手である白雪について俺に言ってきたのは別人だったが、高橋と交友がある人物かお前の自宅がバレていたことから探偵でも雇ってるかもしれん」
「やっぱりそういうことになるのか。親父のその根拠は?」
「証拠らしいものはない推測だ。ただ高校時にも男女間の問題として前科がある。罰金程度で済んでいたが」
「金さえあればなんとでもなるってことか」
「金は力だ。警察一人が足掻いても平和にはならん」
「おう……」
世知辛い。
警部という階級にいる人物から聞きたくはない。
「事実は事実だ。ただ恋人を守るだけなら警察関係なしにお前も出来るだろう」
「あぁ」
「出来ないことは親に頼れ。お前はまだ子供だ一八から成人になったがそれは分類上だけの話だ」
黙って親父の話に耳を傾ける。
「社会も知らずに大人になるのは無理だ。そのために親がいる。社会で生きていくための術を教え育む、それが教育だ」
「ありがとう」
素直にそう言えた。
「本当に白雪冬乃のことを好いてるのがわかった。なら結果を出せ」
「結果?」
「自分で考えろ」
話は終わりだと言うように親父は立ち上がり部屋を出ていった。
扉が締まる瞬間『今回は力を貸すところはないが、見回りの強化だけはしといてやる』と心強い言葉を貰った。
その数日後。
智明たちから連絡があり高橋が『明日は彼女とデートする』と嬉しそうに話していたと報告を受けた。