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「さむっ」
漫画の新刊を購入しファミレスで夕飯を済ませ、帰宅の途につく。
智明とはファミレスを出て別れた。
今日の天気予報では晴れだったが、空を見上げれば曇っており寒さも相まってすぐにでも雪が降りそうだ。
自宅までまだ結構な距離が開いているが、降る前にはコタツで温もりたい。
少しでも距離を稼ごうとしていつもは通らない繁華街方面へ向かう。
もうすぐ高校を卒業するが、今は高校生。
できるだけこういう所には近寄らないほうがいいだろうけど。
夕方ということもあってちらほらと大人たちが歩いており、チャラそうなお兄さんたちが光輝く看板の前で待機していた。
この通りは、独特な雰囲気がある。
道を歩くのは基本が男性を占め、女性はあまり見かけない。見かけることがあっても少し派手なお姉さんたちがいるだけである。
足早に通りを抜け、少し先にある公園を横切る。
ベンチには先程の通りに用がありそうな大人たちが時折スマホなどで時間を確認していた。
なんとなしに、あたりを見回しながら歩いているとこの公園には珍しく女性の姿があった。
垢抜けていない、この付近には滅多に見掛けない。長く伸ばした烏の濡れ羽色。
それが逆にここでは目立っていた。
「……」
っ。
時が止まったかのように感じた。
出口に向かっていた足先は方向を変える。
暴れる心臓の音を無視する。
「……冬乃先輩?」
俺の上ずった声に彼女は驚きながら、ゆっくりと見上げる。
大きな瞳は驚きから不安な色に変え、安堵に落ち着く。
「えっと、春人くん」
「お久しぶりです」
「うん。そうだね久しぶり」
「どうしたんっすか、こんなところで」
?
特に変わった、久しぶりに会う知人に対しての質問にしてはまった実のないものだったが、彼女はとても困った表情をしていた。
「ううん、なんでもないよ」
優しい声で安心させてくる。
昔見た、いつもの先輩の微笑み。
「春人くんこそ、こんなところでどうしたの?」
「あ、いや。帰る途中だったんっすけど、雪か雨降りそうな天気だったんで」
先輩も俺につられて空を見上げる。
「ほんとだぁ。気づかなかったや」
質問の答えにはなってなかったが納得したのか、真っ直ぐにこちらに向き直りそのまま立ち上がる先輩。
1年前より少し低く見えた。というより、俺の身長が伸びたのだろう。
目線ぐらいにあった先輩の頭が、顎あたりにあった。
同じ感想を抱いたのか先輩は
「大きくなったね」
と、笑った。