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「うわぁー! すごい!!」
ホテルの部屋にはいると冬乃が感動の声を上げていた。
軽く巻いたハーフアップの髪が揺れる。
「確かにすげぇ……」
俺も背後で釣られるように驚く。
一面真っ青だ。
海に空に境界線。雲ひとつない。
辺りは静かで波の音が聞こえてきそうだ。
「ベランダに出てみようか」
「うん」
冬乃の手を繋ぎ、反対の手でガラス扉をスライドさせる。
ベランダに出てみると夏のむわっとした空気に犯されるが、すぐに潮風が頬を撫でる。
しばらく二人でぼーっと海を眺めていたが、少し遅くなった昼食の約束をとなりの部屋のカップルたちとしていたの思い出す。
『綺麗な景色だわ』
『あぁ、写真でみたよりえぐいなこれ』
そのカップル達の会話が聞こえてきた。同じくベランダに出てきていたようだ。
「智明たちも出てきたのか」
「あれ? そっちもか。まぁこんな風景みたら出ちゃうよなぁ」
「あぁ」
「俺と香、部屋見回ったし先に2階のティーラウンジにいってるわ。春人たちはみてないかもしれないが風呂もすげぇーよ」
「風呂? 見てみるわ。俺たちも部屋の確認したらすぐいくわ」
「おう、じゃあまた後でな~」
智明はそう言い残して静かになった。
風呂の何がすごいんだろうって想いながら部屋に戻ると、すぐに分かった。
バスルームもオーシャンビューを売りにしているため隣接しているのは知っていたが、部屋とバスルームの間に透明な窓がついてた。
なるほどね……。
最初に景色に見とれたせいか気づかなかった。
俺らは同棲してるからそこまでじゃないが、向こうのカップルには難易度高いかもなぁー。
旅行する前に冬乃から聞かされていた藤井さんの相談というのを思い出す。
幸運を拾っただけの俺にはアドバイス出来ることはないが、智明から聞いた話だとこの旅行で決めるとかのたまっていたから心配することはないと思う。
彼らが泊まるほうの部屋の壁をみやり「どうなんだろうなぁ……」とつぶやく。
「どうしたの? 春人くん」
「いや、向こうの部屋さ」
「あぁ~。うまくといいね?」
腕に絡みつく彼女を撫でながら苦笑い。
恋人同士の問題だ。失敗するようなことがあってもあの二人なら大丈夫だろう。
でも、今俺が気にしているのは。
「防音の話だよ」
「……え? そっち?」
「漏れ聞こえてたらなんか気まずいじゃん?」
「私はあんまり聞かれてもあんまり気にしないかな?」
くすっと小さく笑い目を細める冬乃。
ん? 聞かれる? 聞こえるじゃなくて? なにか勘違いしてるような気がする。
「結構いいホテルだし大丈夫か」
「うん。それに私の喘ぎ声ってそんな大きないと思うし」
「やっぱ冬乃勘違いしてるよな?」
何が? という表情だ。
「藤井さんの声が聞こえてきたら気まずいって話」
「わっ……」
「もしかして俺たちがやってること想定してのか」
「……もう、いいじゃん。私は最初からそのつもりで準備してたよ」
彼女は耳まで真っ赤に染めて呟く。
俺の腕をぽかぽかっ殴るおまけ付き。
「わかった。こうなった本気で喘いでやる! 私だけ恥ずかしいのは不公平」
「ちょ……やめて、ホント、マジお願い」
「しょうがないなぁ~。本気で困った顔の春人くんが可愛いから許してあげる」
「あざっす」
たじたじだ。
敵わない。




