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憧れの彼女  作者: 「」
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やばいな……。

何がやばいかと言うと。

大学生活になれるのに必死になり、初めての一人暮らしということもあって彼女に会う時間があまりない。

高校の頃はやってこなかったバイトを始めてしまったのも追い打ちを掛けた。そして今は、桜も散り終え青々とした葉に衣替えし、空も青々としている。

夏の気配と言うべきか日差しも強い。


しかし、すごいよなぁー。冬乃先輩。

こんな忙しい生活を送っていたなんて。

俺の忙しさとは違い、彼女のほうが今は時間にもお金にも余裕が出てきているらしい。

午前中に勤めていたウェイトレスのアルバイトを辞めていて、4月末の俺の誕生日には先輩とお揃いのアクセサリーをプレゼントされていた。

彼女の元の状態を考えるといくらしたのか心配になるのだが、『心配しなくていいからね? 大丈夫。これは日頃の感謝と私と繋がっているていう証が欲しかったから』と、笑いながら送ってくれたもの。

あとで調べるとブランド物の黒いリングで一個8万円以上するという代物で腰を抜かした。

今も俺の右手の薬指に嵌められている。

確かにこのリングをみるだけで冬乃先輩の顔を思い浮かべるのだから繋がりというものは確かに感じる。

バイトを始めたのはこれのお返しと、夏休みにもでなれば自分の稼いだお金で彼女と旅行をしようかと検討している。


今日は午前だけの1コマを受けるだけで終わり、バイトも休みだ。貪るように寝たいところだが前々から約束していたことがあった。

待ち合わせ場所の学食にたどり着き、あたりを見回しても目的の人物はいなかった。

というわけで先に昼食にしようとからあげ定食を頼んだ。


「おい、春人。なぁーにのんびり飯食ってんだよ」


あんまりな台詞である。

これが付き合いの長い友人言葉である。


「智明か。腹減ったからな最近忙しくて手抜きばっかりしてからさぁ」

「そーじゃなくて、お前今日約束してただろ」

「なにが?」

「なにがって……」


呆れたっといった感じで智明が染色のし過ぎで傷んだ金髪の隙間から睨んでくる。


「今日紹介してくれる約束じゃん。白雪先輩」

「あぁ」


高校の卒業した後、彼女と何回目かのデートしていたときに偶然、智明と遭遇してあっけなくバレた。

隠していたわけじゃないが。

彼女の職を考えると、知り合いに合わせないほうがいいのかもなぁーと思った。


「飯にも行くって言ったじゃん。まじで忘れてんの?」

「大丈夫だよ、智明。ちゃんと覚えてる」

「お前たまにガチなのか冗談なのかわからんときあるからな。びっくりさせんなよ」


といって横に座る智明。

カバンからペットボトルを取り出し炭酸飲料を飲んでいた。

「げぷっ」

きたねぇな。こっちは飯食ってんのによ。

臭い漂ってきたらどうする。


「しっかし、白雪先輩と付き合ってるなんてなぁー。言ってくりゃ祝福したのに。つかダブルデートとか出来たじゃん。俺親友とダブルデートすんの夢だったんだよなぁ」


人の肩をばしばし叩きながら言ってくる。

智明にも彼女がいた。高校2年から付き合っている同級生で、智明との繋がりで俺とも仲がいい。軟派なイケメンチャラ男みたいな見た目をしている智明だったが別に中身は普通にいいヤツである。彼が惚れた彼女もいい人で、お似合いのカップルだと思っていた。


「そうね……」

「なんだよ気のない返事しやがって。いいじゃん人の夢語っても」

「俺もダブルデートは賛成だよ。ただな、冬乃先輩働いてて忙しいからさ」

「単純に彼女の心配してたわけね。惚気じゃん」

「惚気じゃねーよ。忙しい時に会って余計に疲れさせるわけにはいかねーじゃん。俺もバイトして疲れて帰ってきて誰かと話すよか寝たい」

「アホか……。俺も友達とかその辺の連中だったら面倒だけどよ。親友とか彼女とかは別だぞ」

「確かに?」


アホみたいに笑う友人の横で苦笑いを浮かべる。

親友はともかく、冬乃先輩が会ってくれるならむしろ自分から行く。


「彼氏に会いたくない彼女なんていないわよ。それは私が保証する」

「……藤井さん」

「なんだ香ももう来てたのか」


新たに会話に参加してきたのは、智明の彼女。藤井香さん。

少しきつい印象を持たれる切れ長の目に栗毛のショート。目立つタイプの美女。

イケメンに美女が並べば華やかにもなるというものだ。

どこから話を聞いていたのか、


「市ノ瀬くん、私も早く知りたかったわ。白雪さんとのこと」


割りと最初のほうから聞いていたらしい。


「それにたまにはダブルデートもいいわよね、気の知れた友人だけで遊ぶって。わたしも市ノ瀬君の彼女と話したいし」

「なして?」

「秘密。女同士にしかわからない話ってあるわ」


いたずら笑う藤井さんだったが、左手に輪っかをつくり右手の中指を作った輪の中で前後に揺らす。


「藤井さんに彼女を会わせる気失せたわ」

「半分、3分の1冗談よ」

「……勘弁して」


力なくため息をつくのだった。

もう3人ここに集まっていたので冬乃先輩にメッセージを送る。

『今日の約束大丈夫? 俺の家に集合ってことになってるんで』

とだけ。

量も少なめなのですぐ終え、流し場にトレーを持っていく。ごちそうさまーとだけ言って置いてきた。

お茶で一服。

二人の雑談に混じり、のんびりとして1時間過ぎた当たりでようやく返事が帰ってきた。

『ごめん、寝てた。すぐに春人くんの家にいくねー♡』

合鍵を渡しているので待たせることもないだろうし、軽く買い物してから行くか。

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