信頼
アーマードコア、楽しすぎぃ!
戦場に到着した時は肝を冷やした。
グランドタンクがミサイルの雨に襲われ、絶対絶命なのは見て明らかだった。
すぐさま空中でエクスヴァレッドに合体。自由落下しながらキックを繰り出し、何とかディカーを止めることができた。
「大丈夫か!? 甲太!?」
俺は地面に着地したと急いで同時に通信を送る。あれだけの攻撃を受け続けていたんだ。コックピットへの衝撃だって半端なものじゃない。死んだっておかしくない。
不安を募らせていると、グランドタンクのコックピットがモニターに映る。
そこには俺の心配とは真逆に安心したような笑みを浮かべた甲太とあ然とした表情で俺を見る泣き腫らした少女がいた。
『遅いんだよ……全く。もっと早くいてくれれば……いや、後悔しても仕方ないか……』
「よ、よかった……。無事で……」
モニター越しに見るに目立った外傷もないことが確認でき、取り敢えずホッとした。
「その女の子は?」
『あぁ。多分逃げ遅れた子供だ』
「助けたのか!?」
『当たり前だろ!? 救える命を救わなくて、どうする!?』
「そうだけど……」
一つ前の戦闘で多数の命を救う為なら一人の命など見捨てると言っていたから少し驚いてしまった。
いや、甲太の言う通り、助けるのが当然なんだが。
『お前が来るとわかっていたから』
「えっ!?」
『今までの状況ならこの少女を救ってしまえば他多数の人を救えなかった。だが、お前が来るとわかっているなら話は別だ。一人で全てを救うことはできない。でも、二人なら別だ』
「……そうだな。そうだよな!」
『甲太の言う通りだ。私もそれを実際に体験した。私達は一人ではない。助け合っていける』
そうだ。一人ではできないことでも仲間がいればできることだってある。
一人が手を伸ばしたところで届く距離に限界はある。でも、一人の仲間がその手を取って、反対の手を伸ばせばその距離は長くなる。一人では届かない救いの手も二人なら届く。
この上ない喜びを噛み締めているとディカーが立ち上がり、鬼の形相でこちらを睨んでいた。
しかし、ディカーからは何も恐怖を感じない。
今の俺は……俺達は無敵だから。
『勇気、一度俺はここを離れる』
『甲太、動けるのか? グランドタンクはかなりのダメージを受けているようだが』
『少しくらいなら動く。問題はない。だが、動きにくいのは確かだ。だから、俺を狙ってくるかもしれない。背中は任せるぞ……二人共!!』
『了解した!』
「あぁ……任された!」
あんだけ戦うなと言ってきた相手が俺達に背中を預けてくれた。
そう言われて気合が入らないわけがない。
「いくぞ! ヴァレッド! 期待に答えないとな!!」
『おう!』
俺はヴァレッドと共に気合いを入れ、ディカーに相対する。
そして、背後ではグランドタンクが動きだす。
グランドタンクの動きは幾分、鈍い。まるで死にかけの虫のような動き。
そんな動きをするものをみすみす見逃すなんて敵なら絶対にしない。
予想通り、ディカーはグランドタンクに狙いを定め、走り出す。
『勇気! 来るぞ!』
「触れさせるか!!」
俺達は割って入るかのようにディカーの目前に立ち、腕を掴む。
ディカーはエクスヴァレッドの手を振り解こうとする。やはり、そのパワーは凄まじく、エクスヴァレッドの巨体ですら抑え込めず、左右に大きく揺さぶられる。
『こちらが僅かにパワーが劣っている! どうする!?』
「だからと言って、距離を取るわけにはいかないだろ!」
『しかし、グランドタンクが離れるのを待っていれば負けるのはこっちだ!』
純粋なパワー勝負だとエクスヴァレッドは負ける。
このまま抑え込もうとしてもいつかはパワー負けし、後ろに行かせてしまう。それがヴァレッドの予想。
しかし、距離を取って、射撃戦を行ったところでそれなりのリスクを背負い、寧ろ後ろに通しやすくなる。
ならば、どうするか。
「ヴァレッド! 小難しいことは考えるな!! こっからは強引に……行くぞ!!」
小手先のやり方ではどうにもならない。
ならば、一か八か、ダイナミックに攻めた方がリターンは大きい。
俺はペダルを強く踏み込み、出力を上げる。
エクスヴァレッドのバックパックのエンジンが轟音と共に激しい炎を吐き出す。
「ここから……出ていけ!!」
「グゥォ!?」
少しだが、ディカーを押すことに成功。
強引に吹かせたブーストの推力を合わせることで一時的にディカーよりもパワーが上回った。
このままいくしかない。俺はさらに出力を上げる。
エクスヴァレッドのパワーに対し、ディカーは力強く踏ん張るものの、上体がゆっくりと後ろに倒れていく。そんな無茶な体勢で踏ん張ることは難しく、終いには完全に体勢を崩して膝を付いた。
この一瞬の隙を逃さない。
ディカーの手を離し、変わりにディカーの体を抱きかかえる。
そして、ディカーを抱えたまま一気に前へと全力のブーストをかける。そのまま誰もいない街の外へと押し出した。




