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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
大地に聳える紅の城
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迫る選択

因みにシン仮面ライダーも観ました


俺の中での仮面ライダーとはこういうものだよなっていう理想像が合致していて、滅茶苦茶好きよ

「お前……何言ってんだ!? あいつを斬っている間にあの車は合うのか!?」


 その想定外の指示につい口調が荒れる。

 ディカーを倒せ? 確かに最終的な目的はディカーの討伐。完全に車に気を取られている今は倒すのに絶好の機会だ。

 だが、ヴァレッドの言う通り、倒す前にミサイルを発射された時点であの関係のない人間が死ぬ。そのリスクを背負ってまであいつを倒すべきなのか?

 まずはあの車の安全を取るのが最優先じゃないのか?

 ふざけたことを言いやがってと思いながらサブカメラでグランドタンクの現状を確認する。

 ミサイルによって高台が破壊されたようで、崩れた瓦礫の中にグランドタンクは埋もれていた。

 あいつ自身は何かしたくても何もできないってわけか。


『だから……見捨てるんだ……!!』


「お前!!」


 そして、その本位を聞かされると俺の怒りが沸騰する。


「俺達は人を守るために戦ってんだろ!! 人を見捨ててどうする!!」


『だからだ!! ここでディカーを仕留められなければこの後に何百……何千の人間が死ぬかもしれない!! それと比べて四人の命だ!! わかる……だろ!!』


「ふざけんな!! 命は平等だ!!」


『平等だからこそ!! 数で比べられるんだろ!!』


 俺と兜山甲太は譲れない信念を真正面からぶつけ合う。

 人を見捨てるなんて俺にはできない。ましてやヴァレッドと一緒にいて、誰よりも救える力を持っているのに諦めてしまったら、俺が戦う意味がなくなる。

 人を守るために戦ってんだ。当然の信念だ。

 だが、兜山甲太の信念は受け入れないとしても否定することはできない。

 これは現実だ。万人を救うことができるとは限らない。必ず犠牲が出るのかもしれない。

 もし、犠牲が出るとわかっているならそれ少ないに越したはない。


『いいか! 戦うということは残酷なことだ! 他人の命を無関係な俺達が勝手に取捨選択をすることだ! 全て守るなんてことは空想だ! できたところでその甘い考えで全てを失うことだってある!! なら、多少の犠牲を払ってでも、多くを救う!! それにこっちは世界の命運を背負ってんだ! 人のいない世界が成り立つと思うか! 人があっての世界だろ!!』


「……でも!」


『お前があいつらを救うのは間違いではない。その結果、それ以上の犠牲を出してしまったらどうする!?』


「そう言うのは……卑怯だろ!」


『それが現実だ。頼む……それが今の最善だ!』


 俺は歯を喰いしばり、操縦桿を固く握り締める。

 初めてだ。選ぶということを放棄して、逃げ出したくなるのは。

 昼ご飯にハンバーグかステーキを迷うとか、くじ引きで赤か青の紐のどちらを引くか、そんなしょうもないものじゃない。

 選ばれなかった方が死ぬ。そんな重圧を背負える気がしない。

 違う。背負わなければならないのにその覚悟がまだ足らなかった俺が悪い。

 もしかしたら兜山甲太の見込みと俺は調子に乗っていたのかもしれない。ヴァレッドと一緒にいて、力を手に入れて、何でもできると思っていたのかもしれない。今までは運よくうまくいっていただけで本当は今の状況が普通なのかもしれない。

 心臓が今にも破裂しそうなくらい激しく動いている。

 どうすればいい?

 俺は他人の命をどう扱えばいい?

 そうだ。命を平等であるなら……犠牲は少ない方が……。


「ヴァレッド……剣を……」


 振り絞るような声で心苦しく、ヴァレッドに指示を出そうとした時、一瞬だけ車を見る。

 最悪な思い出がフラッシュバックする。

 昔、俺自身も巻き込まれ、両親を失った事故の映像が目の前に流れた気がした。

 あの時に味わった苦しみと今でも味わう後悔が同時に襲い掛かる。


「今すぐ助けに行くぞ!! ヴァレッド!! 全速力だ!!」


『了解!』


 俺はその不愉快な味を吐き出すように叫ぶ。

 ヴァレッドは超加速を行い、ディカーの傍らを通り過ぎる。

 その瞬間にディカーからミサイルが車へと発射される。急に兵器を向けられ車はパニックになったようで急停止してしまう。

 加速度はヴァレッドの方が上であり、余裕でミサイルを追い越す。ヴァレッドは炎神剣を抜き、地面に突き刺し、かなり無理矢理な急停止する。

 土煙と若干の瓦礫が宙を舞う中、ヴァレッド車の前に立ち、両手を横に広げる。

 そして、ミサイル全弾がヴァレッドに命中し、爆煙が視界を覆う。


『グウゥ!』


 衝撃がコックピットまで伝わってくる。

 しかし、倒れるわけにはいかない。ヴァレッドは踏ん張り、俺も操縦桿を限界まで前に倒す。

 そうして、十秒程耐えると爆煙が晴れ、視界が露わになる。

 元凶であるディカーの姿は煙と同じように跡形もなく、あるのは大きな穴だけだった。


「それより……車は!! 人は!!」


 慌てて、サブカメラに切り替え、守るべき車を確認する。


『どうやら守れたようだな』


 俺は長く息を吐き出す。

 車の中から四人の男女が飛び出してきて、その場にヘナヘナと座り込んでいた。

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