相反
グリッドマンユニバース、最高やった……
よもゆめはやっぱ最高やで!
爆発を受けたディカーは素早い動きで後ろには跳び、俺達から距離を離す。
俺は画面を操作し、サブカメラで砲弾が飛んできた方向を確認する。距離約三キロ先にある高台の上でどっしりと構えるはグランドタンク。
車体上部に装備されたニ問の砲身から煙が出ている。
「あの距離からの砲撃を与えるのか!」
『余所見をするな!』
細見かつ素早いディカーに命中させる正確な射撃制度の高さに驚いていると今度は俺に向け、甲太の激が飛んでくる。
咄嗟に視線をディカーに向けると、勢いのある飛び蹴りが迫っていた。
俺とヴァレッドは左に跳躍し、回避する。その回避から三秒後、グランドタンクが放たれた砲弾がまたもディカーに命中し、地面に叩き落とす。
動いている相手にも当てるのか。俺よりも前からメルフェスと戦っているからか経験値の差は比べ物にならないか。
『こっちは勝手に援護する! だから、お前達も勝手にやれ!』
「そうかい!」
甲太の命令に俺は少しイラっとする。甲太がこっちに合わせるというのは俺としてはやりやすいかもしれいない。
だけど、きっとそれは信頼されていないからだ。細かい命令をしても、その通り動かない、動けないと判断しているのだろう。
今までのやり取りからして当然だが、俺と甲太の間に信頼なんて皆無。
今回の戦闘もあくまでお互いがやれることをやるだけ。協力なんてあったもんじゃない。
「アームドガトリングだ!」
『おう!』
砲撃を受け、倒れるディカーに両腕から追撃のガトリングを入れる。
ディカーは即座に立ち上がるものの、流石に回避行動までは取れず、両手を前に出し、銃弾の雨を受けることしかできない。
『その足止めは使える!』
足が止まっているディカーに何もしないわけがない。
兜山甲太は再び砲撃を放つ。当然、止まっている相手に外すわけなどなく、命中する。
だが、流石のこの攻撃は読まれているようでディカーは踏ん張って、転倒を防ぐ。
その隙に俺達はガトリングを放ちながら突撃し、近接戦に持ち込もうとする。
「これならば!」
『待て! そのまま距離を取っていればいい!』
兜山甲太の怒気の籠もった指示が飛ぶが、俺の耳に入らない。いや、入れたくなかったというのが正しい。
しかしだ。安易な接近が状況を悪い方へと傾かせる。
拳を振り上げようと右腕のガトリングを止めた瞬間をディカーは逃さない。
弾の数が減ったのを見計らい、ディカーは体を傾け、銃弾を交わす。そして、勝手に接近してくる俺達に回し蹴りを叩き込む。
『ぐわぁっ!』
『おい、邪魔だ!』
ヴァレッドの叫びと兜山甲太の舌打ちが重なる。
グランドタンクの射線上にエクスヴァレッドが入り、援護ができなくなっていた。
なんと、ディカーはわざとグランドタンクのいる方向に向かって、俺達を蹴り飛ばした。
流石に巨大なエクスヴァレッドをグランドタンクのいる位置まで蹴り飛ばすことはできない。
だが、一瞬の隙を作り、なおかつ射線を切るには十分だった。
グランドタンクは即座に位置を変えるものの、その間にもディカーの立て直しは終わっていた。
そして、枝分かれした角の先からミサイルを発射した。
『ミサイルまで出るのか!?』
『チッ! 迂闊なことをしたから!』
ミサイルは誘導し、俺達と奥のグランドタンクに目掛けて飛ぶ。
俺達は空中で回避行動をするも間に合わず、命中。
グランドタンクは回避行動と機関砲を放ち、迎撃するも周りに着弾し、爆煙と土煙に囲まれる。
「これはまずい!」
地面に叩きつけられエクスヴァレッド。
なんとか立ち上がるもののディカーは既に俺達ではなく、別の物へと興味を示していた。
「おい! なんでこんなところに車が走ってんだ!」
ディカーの視線の先にあるものを見て、俺は目を見開く。
荒野の中、真っ直ぐに伸びた道路を走る車があった。
この周辺は確かDATによって通行止めになっていた。にも関わらず、車が走っている。
咄嗟にカメラを拡大して、車をよく観察すると若い男女四人組が乗っており、後ろにいる男女一人ずつ、笑いながらスマホのカメラをディカーに向けていた。
それはそうだ。見たこともない巨大生物を見て、好奇心が湧かない人間などいない。
だが、対象の生物は極めて危険だ。平気で人間を殺す。その恐怖を知らないからこそ、あぁいう軽率な行動をする人間が現れる。
ディカーの口角が僅かに上がる。
そして、角の先端を車に向け、ミサイルで爆殺しようとする。
「まずい! ヴァレッド! 止めるぞ! ヒートキャノンだ!」
『いや! ミサイルが発射されたら間に合わない!』
「なら、どうする!」
『ミサイルの弾速は私の全速力よりも遅い! そして、幸いだが車はこちらの近くに向かっている。全速力で向かって、車の盾になれば、防げるかもしれない!』
「なるほど……なら!」
俺達と車の距離は近づいている。ヴァレッドの言う通り、これは不幸中の幸い。
ならば車を守ろうとペダルを一気に踏み込んだ直後だ。
『ヴァレッド! 炎神剣を抜け! そして、ディカーを斬れ! 今なら奴を仕留められる!』
兜山甲太の無常な指示がコックピット内に反響した。




