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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
大地に聳える紅の城
79/117

衝突

水星の魔女のせいでパーメットスコア4に入ってしまい、変な性癖に目覚めました

 ロナルド・レーガンはアメリカ大陸まで後十㎞の沖合で停止する。

 白鳥の話では俺とヴァレッド、兜山甲太は目的地までは単独で向かうとのこと。理由としては基地から出撃した場合、米軍との癒着が疑われる可能性があるとのこと。

 無論、特定の組織との癒着なんてあるわけがない。DATは有事の際、各国との軍と協力することができるなんて条約が交わしているため、今も何も問題はない。

 しかし、DATは持っている技術や情報があまりにも危険なこともあり、機密保持の観点から詳しいことを世間に明らかにしていない。確か、DATの組織自体を公にしたのもつい最近だ。

 そういうこともあってか、メディアからは疑いの目を向けられている。

 例えば、国連の専属軍隊で戦争、紛争が起きた時、圧倒的武力を持って鎮圧する。本当は世界征服を目論んでおり、信頼や実績を得るため、メルフェスを生み出し、いわゆるマッチポンプを行っているなんて最早都市伝説レベルのデマを報道されることなんてあるらしい。

 組織に属しているからそんな事実はないとわかっているが外部から見たらそういうわけにはいかない。

 箱の中身は空けてみるまでわからないということだろう。

 だから、行動するにも細心の注意を払う。特にヴァレッドなんかはオーパーツレベルの技術力で構成されているから詳細を知られたくないため、人目のつかない場所から出撃するらしい。


「かっこいいな。このジャケット」


 出撃直前、ロッカールームで着替えていた俺は姿見の前で支給されたパイロットスーツを身を包んだ自分を眺める。

 パイロットスーツと聞くとなんか無難な感じでデザインも淡色でシンプルな物だと思っていたけど、DATの物は結構派手で個性がある。

 というのも個人の好みや要望をオーダーでき、その通りに仕立てくれる。

 というのもパイロットの精神的負担を少しでも軽くするという意味があるらしい。戦いは命のやり取りであり、どうしても精神的に苦痛が多いこからせめて、好きな恰好をして少しでも精神の負担を和らげる。

 そして、もう一つ。これはかなりネガティブな理由だが万が一撃墜され、パイロットが命を落とした時、身元をすぐに判別するための死に装束の意味合いがある。

 俺は細かなオーダーは出さなかったけど、ただ好きな色の赤を使ってくれと出したところ、上半身は黒、下半身が白のパイロットスーツに赤いジャケットという形になった。

 特に赤いジャケットがかっこいいし、ヴァレッドと同じ色合いでさらに一心同体感がましていい。


『似合っているじゃないか』


「だよな! めっちゃいい!」


 ヴァレッドからお墨付きを貰い、俺のテンションがさらに上がる。

 ただ、戦場に向かう前の心持としてあまり褒められたものではない。


「おい! 浮かれている暇があるならさっさといくぞ!」


「あ! あぁ、すまない」


 通りかかった兜山甲太にかなり厳しめな声色で注意される。

 これは流石に緊張感がなさすぎたと反省し、ロッカールームから出る。

 今までいがみ合っていたにも関わらず、意外にも素直に謝った俺に驚いたのだろう。兜山甲太は少し戸惑ったように頭を掻く。

 そして、「まぁいい」と呟きながらカタパルトに向かって歩き出す。俺もその後を追うように歩き出す。

 ふと、兜山甲太を見る。こいつも俺と同じパイロットスーツを着ている。

 全身濃い緑色のスーツで着用している本人の性格が読み取れるようなこれといった装飾のないシンプルなデザイン。

 だが、丁度心臓のある左胸のポケットは迷彩柄になっている。

 普通に気になったのもあるけど、流石にこれから一緒に戦うのだから少しくらいは打ち解けようと思った。


「胸元のワンポイントの迷彩、いいな」


 だから、ほんの軽い気持ちが聞いた。

 そのワンポイントはどういった意味があるんだと。


「いいな? ふざけるなよ」


 しかし、兜山甲太にとってそれは何か癪に障るものだったらしい。

 兜山甲太は振り返る。その時、俺は絶句した。兜山甲太はまるで鬼が宿ったような恐ろしい表情を浮かべている。誰がどう見ても同じことを思うだろう。

 本気で怒っていると。

 そして、兜山甲太は俺の胸倉を掴んで持ち上げると壁に叩きつける。

 背中に激しい痛みと息苦し差で頭が一杯になる。


「お前に何がわかる!? 甘えるんじゃない!! 俺達は戦いに来たんだ!! 遊びに来たんじゃないだろ!? おしゃれだけしたいなら今すぐ一般人になっていればいい!!」


『甲太! 落ち着け! 勇気はただ聞いただけだ! 深い意味がないのは確かだが、君を貶める意味もない!』


 ヴァレッドが仲裁に入ると甲太は意識を取り戻したかのようにハッとし、俺から手を離す。

 暴力から開放された俺は満足に吸えなかった空気を一生懸命吸いこむ。


「……すまない。やりすぎた」


 これには流石の兜山甲太でも悪いことだと気づいており、顔を逸らす。


「いや、俺も調子に乗った……」


 普通ならふざけるなと怒る場面だろうがそういう気にはならないかった。

 確かに俺も緊張感のないことを聞いたのは不適切だったのは確かだ。

 それに兜山甲太がブチ切れたのは他の理由だと思うからだ。

 それが何なのかは俺には一切わからない。

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