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その男、凶暴につき

あけましておめでとうございます!

今年もよろしくお願いします!

今年は頑張って更新頻度をあげたい

「なんか……嵐のような一日だった」


 暖かな夕焼けに照らされた道を歩きながら俺はポツリと呟く。


『だが、面白い子じゃなかったか? ナナ君というのは』


「面白いんだが……振り回されるのはなぁ……。たまには悪くないんだけどさ」


 ヴァレッドの言う通り、ナナは面白い人だ。それはわかる。

 でも、これが毎日ってなると結構辛いとは思う。例えるなら毎日ロースとんかつを食べるみたいな感じだ。

 とんかつ自体は美味しんだけど、毎日食べるとなると脂っこくて流石に辛い。

 だから、毎日は関わりたくない。だけど、たまに関わるくらいならいい刺激になると思うけど。


『たまにならいいんだな』


 すると、画面に映るヴァレッドが口角を上げる。


「何笑ってんだ?」


『いや、勇気がこんなに人に興味を持つのを初めて見たからな』


「そんなことはないだろ?」


『いいや。高嶺君含めて他の人達と比べても接し方が全く違った。いつもは素っ気ないのにナナ君にはかなり優しくて、お熱じゃないか』


「それは高嶺が大人でナナが子供だからだよ!……それ以外は何もないさ! てか、お熱って死語じゃないか!?」


『どうかな? 満更でもないんじゃないか?』


「いい加減しないと電源落とすぞ」


 怒る素振りを見せるとヴァレッドは『すまない』と言い、ピシャリと黙る。しかし、画面の表情は相変わらず口角を上げたまま。

 確かにヴァレッドの言っているように他の人とは接し方は違うのは自分でも間違いではないと思う。

 それはナナが目を離すと何を仕出かすかわからないからであって、別に特別な感情があって贔屓しているわけじゃない。

 そのはずだ。


『でも、魅力がないわけではないだろう?』


「そんな言い方されたら逃げ場がないだろ……」


『フッフッフ。AIならではの綿密な囲い方だ』


「世界唯一の自立AIの活用方法がしょぼすぎる!」


 こんなくだらない会話をしているが、よくよく考えてみれば話し相手がロボットなんだよな。

 人間相手と変わらないくらい自然な会話。なんなら、冗談まで言ってくるもんだから、会話だけ聞いていたら何も変わったところなんてない。

 出会った時は話し方も音声読み上げソフトみたいで受け答えも英語の教科書の構文のようで面白味がなかったから、相当成長したんだなってしみじみに思う。

 そんなことを考えていると、ようやく家についた。


「ただいま……って靴がある」


 早速、家に入り靴を脱ごうと下に視線をやると、出掛ける時にはなかった黒いスニーカーが綺麗に並べられていた。


『この靴は……』


「白鳥かボスが来てるのか?」


『いや……これは』


 ヴァレッドが靴の持ち主の名を言おうとした時、


「お前が……日登勇気か」


 ドスが効いた低い声で俺の名前を呼んだ。

 ゆっくりと顔を上げる。

 目の前にいたのは体格のいいいかつい男だった。

 濃い眉毛と鋭い目つきに彫りの深い顔立ち。オールバックの黒髪には赤いメッシュが入っている。

 ゆったりとした真っ黒のズボンと赤と黒のパーカー、首から垂れるネックレスがいいアクセントになっている。

 俺はビビった。もう見るからに普通の人間ではなく、いわゆるヤのつく職業の人間にしか見えない。それかそこに繋がり、素行の悪い人。

 それこそヤンキー漫画や任侠映画に出てくる登場人物の恰好と言われても普通に納得できる。


「あんた……誰だよ!?」


「必要ないと思うが、これは礼儀だ」


 その風貌に見合った低い声で彼は以外にも律義に俺の疑問を受け止めた。

 そして、自身の名を告げる。


「俺の名前は兜山甲太。お前と同じDATのパイロットだ」


 兜山甲太。DATのパイロット。その二つの言葉を聞いて俺の心はふにゃりと柔らかくなった。

 目の前にいるのが唐揚げを作ってくれた人なのか。料理ができる男と聞くと、優しそうな線の細い人を思い浮かべていたからそのギャップにかなり度肝を抜かれた。人は見かけで判断してはいけないようだ。

 何より安心したのが俺達と一緒に戦ってくれる仲間なら、怖がる必要なんてない。寧ろ、命を預ける間柄として仲良くならなくてはいけない。


「そ、そうなのか! この前、唐揚げ作ってくれた人か! あの唐揚げ、本当に美味しかった! それならよろしく……」


 共に戦う仲間として挨拶も兼ねて、握手を交わそうと手を出す。

 

「慣れあうつもりはない」


 しかし、その手はかなり強い力で払いのけられる。

 手のひらにジンジンとした染みるような痛みが大きくなっていく。

 それと同時に怒りが燃え滾ってくる。


「この対応はなんだよ! あんたさぁ! 少なくとも一緒に戦うんだろ!! 慣れ合わなくていいけど、付き合い方ってものがあるんじゃないか!!」」


 俺は身を乗り出し、兜山甲太を睨み付ける。

 兜山甲太は俺の怒りに一切動じず逆に睨み返してくる。


「俺はそのつもりなどない」


 すると、兜山甲太は意味がわからないことを言い出す。

 戦うつもりはない? 未曾有の危機だと言うのに何を言っているんだ。

 そんな疑問が俺の表情に出ていたのか、兜山甲太は呆れたように溜息を吐き、はっきりと告げる。


「単刀直入に言ってやる! 日登勇気! お前は今すぐDATを抜けろ! お前みたいな奴は戦場に必要ない! 言っておくがこれは嫌味でもなく優しさだ。お前みたいな軽い覚悟の人間が戦えばただ苦しむだけだからな!」


次回予告


守れなかった街。救えなかった命。

戦う者故の苦しみと罪はたった一人の少年が背負うにはあまりのも重いすぎる。

それでもなお戦い続けるのは決して破れぬ約束と壊れぬ覚悟があるから。

その業を知った勇気は自身の認識の甘さと孤独の弱さを知る。

そして、弱さを克服したその時、

鋼鉄の巨人に新たな力が目覚める。


次回  鋼鉄の勇者 ヴァレッド


「大地に聳える紅の城」


荒れる大地を駆け抜けろ! グランヴァレッド!

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