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見晴らし

アーマードコアが新作出るとか驚いたわ

これを気にアーマードコア、初めてみようかな

「こっちこっち! 早く早く!」


「わ、わかったから……ちょっと……それは……キツイ……」


 先往くナナを俺はゼェゼェと激しく息を吐きながらついていく。

 投げたボールを追いかける犬のように走るナナ。多分、ここが平地なら俺だってついていけるだろう。しかし、今俺達が進んでいるのは山道だ。一応、道は整備されていて、階段こそあるけど、それなりに傾斜があって登るのは結構キツイ。そのはずなのにナナはまるで跳ねるかのような軽い足取りでどんどんと先を行く。

 俺だって、戦うようになってから体力は必要だということで走り込みや自重トレーニングをして、多少は体力に自信が付き始めたのにもう塵となり、どこかに吹き飛ばされていった。

 お気に入りの場所だから登り慣れているのだろうから疲れにくいのかもしれない。いや、そう考えても体力お化けなのは普遍の事実だ。


「ほら、後少しだよ! 頑張れ! 頑張れ!」


 前を行きながら後ろでノロノロと歩く俺を応援する程の余裕があるなんて凄いとしか言いようがなかった。


「到着だよー!」


 最後の一段を登った瞬間、頑張った俺を労るかのように潮風が吹く。流れた汗がいい感じに冷えて心地よいけど、ただ、少し強くて思わず目を閉じてしまう。


「ここが私の好きな場所なんだ!」


 風が止んだ時、俺は目を開ける。


「……確かにこれは……いい景色だ」


 俺はそれを見て、今までの疲労も苦労なんてネガティブな感情が一気に吹き飛んでいった。

 視界の下には先程まで俺達がいたかなり発展した街。そして、視線を少し上に上げると地球の果てまで広がる海。太陽の光が反射した海はキラキラと輝いていて、まるで小さな宝石が一面に散らばっているみたいだ。

 高い場所にいるから曲線になっている水平線がよく見え、この地球がちゃんと球体であることを実感できる。


「私ね。ここに来て、初めて知ったんだよ!」


「何を?」


 すると、ナナは海へと向かって指をさす。


「ここがずっと広いんだよね! 手が届かないくらい広くて、海の先にも街や森があって、みんな生きてるんだって! それを初めて知ったんだ!」


「そっか……」


 ナナの言葉には共感できた。

 俺も今までは生きていた世界は狭かった。

 ニュースで流れる国外の事件なんて他人事で俺なんかは関係ない話だった。そんなことよりも明日の授業のことだったり、夕方の天気の方が重要なことだった。

 だけど、今は違う。世界は一気に広がった。

 一般人では見ることも知ることもできないものに触れてしまったから。それこそ今みたいに見ていなかった景色を見てしまったから俺は今ここにいる。


「私ね、ここに来て幸せなんだ! たくさんのことが溢れていて、たくさんの人と出会えて、美味しい物もかわいい物もあって、幸せ! そして、勇気にも会えた! 私って世界で一番幸せなんだよ!!」


 自分が世界で一番幸せ。そんなことを言い切れる人なんてそう多くはない。


「そうか。世界で一番、幸せなのか」


「うん! だから、勇気は世界で二番目に幸せ!」


「二番目なのか?」


「だって、今日は楽しかったでしょ? でも、ナナが一番だから二番目!」


「同率一位でよくないか?」


「ドーリツ?」


「俺もナナに負けないくらい楽しかったから同じ一番でいいと思うんだけどな」


「そうだよね! 私達二人が一番でいいよね!!」


 そう言うとナナはニカッと満面の笑みを見せ、美しい景色を目を向ける。

 俺ももう一度海へと目を向ける。

 ナナは変わっている。

 だけど、少しだけだけどナナと同じ目線に立てた気がした。

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