ようこそ
俺は境界戦記の二期は楽しみだよ
「はじめまして。私はアナだ。キャシーと共にオペレーターを任されている」
俺の目の前に来るとキャシーは優しげな笑みを浮かべ、手を出し、握手を求めてくる。
一見するとまともそうな人だ。
だが、白鳥とキャシーは終わったと言わんばかりに深い溜息を吐いている。
関わるのが怖くなる。
だからと言って、握手を求められて、それに応じないのは例え、どんな変わった相手でも失礼だろう。
まるで腫れ物を触るかのような扱いで手を出す。
そこからは一瞬だった。
アナはまるで油断して現れた小動物を狩る肉食動物のように目にも留まらぬ速さで俺の手を取る。
「ヒッ!?」
思わず悲鳴を上げてしまった。
まさか、あんな勢いよくいきなり手を掴まれるなんけ思いもしなかった。
それにだ。アナの目はガン開いていて、血走っている。まさに目の色を変えていた。呼吸はまるでたった今フルマラソンを走りきったかのように激しくて、口の端から涎が垂れている。そして、俺の手の感触を確かめるかのようにスリスリと撫で続けている。
初めのクールな印象はどこかに吹き飛ばされた。今の印象はただの不審者でしかない。
「おほほほほ! 少年ん! 若いぃ! 少年!」
「いや……離れてくれませんか!?」
「若い子はいいねぇ! お肌スベスベぇ! 匂いもンンいい! 結婚したいぃぃぃ! 可愛がりたぃぃぃぃ!」
「ヒイィィ!」
本当に食われるかと恐怖した。
きっと食べられるとしたら頭から丸呑みされるだろう。
最早、目の前にいるのは人なんて存在じゃなくて、メルフェスみたいな化け物にしか思えなかった。
直ぐに離れようと手を引くも、まるで一体化しているかのようにガッチリと掴まれていて、びくともしない。
DATのオペレーターは腕力も化け物なのか……。
「That's enough!」
見兼ねたキャシーが制服のポケットから催涙スプレーを取り出してはアナの画面に吹き掛ける。
これはアナでも流石に効果抜群で俺から手を離し、両手で顔を覆うと悲鳴を上げながら、その場に倒れて、のたうち回る。
「すまんな。アナは年下の男が好きでな。変人ではあるが、オペレーターとしてはキャシーと同じで相当優秀だ」
「は、はぁ……」
俺はふと周りを見る。
周りには沢山の職員がいるにも関わらず、大声を出して、のたうち回るアナを誰も見ようとしない。
まるでこういう喧騒ご日常茶飯事であるかのようだ。
『勇気……大丈夫か?』
「いや……俺、上手くやっていける自信がなくなったよ」
心配になって声をかけてきたヴァレッドにこれ以上にないくらい素直な不安をぶつけることしかできなかった。




