変人達の巣窟
Aqoursの6thライブ最高だったぜ
人類存亡の最前線に来たかと思えば一番偉い総司令がまさかの人見知り。それも少し一対一で話しただけで緊張のあまり、気絶するレベル。
トップが癖のある人間だとその部下達も一癖もあるんじゃないかと疑ってしまう。実際に白鳥もなかなか癖があるし。
そんな不安を抱きながら俺は白鳥に連れられ、作戦司令室に向かった。
ここは名前通りの役割を持つ。学校の体育館と同じくらいかそれ以上に広い。
横一列に伸びる長いディスクが五列あり、その上にコンピューターと書類が散乱している。
実際に戦闘が起きた時はここに総司令が立ち、ブリーフィングを行ったり、最前線で戦う俺達に指示を出すそうだ。
迅速かつ大量の情報を得て、処理する為に数え切れない量の電子機器と人員が配置されている。
今も休むことなく多数の職員が目の前のコンピューターと睨み合い、キーボードをカタカタと目にも留まらぬ速さでタイピングしている。
また、部屋前部のモニターには世界地図が映り、各都市の街並みと現在の状況をリアルタイムで映している。
今の所、メルフェスの出現はないようで変わらぬ日常が画面に流れている。
まさに人類存亡がかかった砦に相応しい風景と言える。
「あら、あなたが噂のcool Guyね」
「えっと……どちら様で……?」
慌ただしい風景に圧倒されている背後から声をかけられる。
声質に女性だろう。そして、英語が非常にネイティブだ。
振り返るとそこには外国人の女性が太陽のような明るい笑みを浮かべて俺を見ていた。
パット見の年齢は二十代で俺よりも年上なのは明らかだ。
肩まで伸びるウェーブ鮮やかな赤い色の髪。瞳の色は青く、顔の堀も深く如何にも外国人といった顔立ちで、とても美人であった。
顔立ちもなかなかだけど、一際目を引くのがそのスタイルだ。同性だろうと目を引く、とても大きな胸とお尻。特に胸は制服には収まり切らず、上の方が少し露出している。
きっと、同年代の男子にとっては釘付けになるほどの憧れが目の前にはあった。
「my name is Katherine。 どう見た目通りでしょ? まぁ、気軽にニックネームでキャシーと呼んで欲しいわ」
「は、はぁ……」
キャサリン……いや、キャシーという女性の陽気なテンションに圧倒される。
すると、キャシーは俺を見つめてはニヤニヤと笑いながら顔を近づけてくる。
日本人にはない外国人特有の甘い匂いが鼻孔をくすぐり、頭がクラクラしてくる。
「Hotな視線をBinBin感じるわ!」
「はぁ?」
「ねぇ、見たい? 私のか・ら・だ♡」
「は、はぁ……!?」
キャシーは制服の襟を外に広げ、露出した胸を更に露出し、見せつけてくる。
言葉が出なかった。
人類存亡を担うこんな張り詰めた場所で我欲塗れた意味不明な行動を取ったことに。
普通に男子なら目玉が飛び出るシチュエーションだろうが人と会話しただけで気絶した総司令のことや明らかに空気の読めていなさによって欲望よりも失望と拒絶が勝った。
「結構、熱烈な視線を感じたのよねぇ。まぁ、boyだから仕方ないわね」
「あの……大丈夫なんですか?」
「私は年下が大好きだからNo problem!」
「そういう意味じゃないです! こんな真面目な場所で何をしているんですかって!」
「だって、仕事のストレスって結構凄いのよ。特にここはねぇ……」
「本当に頭、大丈夫ですか?」
「こう言われるでしょ? GeniusはCrazyって」
「あぁ……もういいです」
まともな会話ができないと諦める。
確かにこんな奇天烈な言動をしているけど、そもそもここにいるということ優秀であることの証でもある。
ただの変人に世界の命運を託せるだろうか?
託せるわけがない。
だからと言って、優秀な変人を信頼できるかと言うと素直に首を縦に振れない。
「キャシー。勇気をからかわないでくれ。君と違って彼は純粋なんだ」
見かねた白鳥が俺のフォローに入ってくる。
白鳥も大概変人だと思うけど、実はこの組織の中じゃまともなんじゃないかと思ってくる。
「そうだ。あなたのような公序良俗に反するような人間は社会における毒でしかないわ」
白鳥に同調する新しい女性の声がキャシーの後ろから聞こえてきた。
キャシーの後ろには赤髪とは対照的な海のような深い青髪。前髪の右側が伸びてキリッとした吊り目を隠している。
そして、一際驚くのがキャシーよりも……いや俺よりも大きいその背丈。百八十センチメートルは以上あるのだろうか。ともかくデカい。
「Very funny! あなたにしては面白い冗談を言うじゃない、アナ」
「お褒めいただき感謝するよ」
キャシーとは違い丁寧な物言いで非常に好感が持てた。
他にまともな人がいると安心した……はずだった。
「あっ、アナはやばい」
「え?」
白鳥の不意に漏れた本音が俺の安心を根底から崩していく。




