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覚悟を問う

DXデモンズドライバーが届いたぜ

延長ベルトがなくてもギリギリ巻ける

 一通り挨拶をした後、応接用のソファへと案内され白鳥と並んで座る。

 すると、扉が開き、街中でよく見る上半身が人型で下半身が四輪のロボットが二つのコップを載せた御盆を持って部屋に入ってきた。

 そして、司令自らコップを持ち、俺の前に出す。コップの中身はココアでチョコレートの甘い匂いが緊張した心を解す。


「飲むといい……」


「ど、どうも……その……ありがとうございます」


「ちょっと待って、儂の分は?」


「これから日登勇気とヴァレッドとの三人で話す。博士は外で待っていて貰いたい」


「えっ? 大丈夫なの?」


「脅すつもりはない」


「いや、勇気の心配は……わかった。君がそう言うなら」


 すると、白鳥は不安そうな面持ちを浮かべながらロボットと一緒に部屋から出ていく。

 部屋に異様な緊張感が流れる。脅すつもりはないと言っていたがそれなら何をするつもりなんだ。ここで上手くやっていける自信がゼロになる。

 落ち着きなく、指をワキワキと動かしていると司令が対面に座る。

 司令のカップが乗った皿には角砂糖が十個あった。恐らく司令の飲み物も同じココアのようだけど砂糖なんか必要なのかと思った矢先だ。

 そのままだけでは甘さが足りないのかさらに角砂糖を五個もいれる。


「あの……それココアですよね?」


「そうだが」


「……糖尿病には気をつけてください」


「あぁ。それには気をつけている」


 厳つい見た目からして苦いブラックコーヒーを飲みそうだけど、どうやらかなりの甘党らしい。

 別に馬鹿にするつもりはない。

 ただ思うことは滅茶苦茶似合わないし、糖尿病までまっしぐらだろう。

 そして、司令は砂糖を入れすぎてコールタールのようにドロドロになったココアを口につける。


「日登勇気」


「は、はい!」


 カップを置くと俺の目を見る。

 サングラスのせいでどんな目をしているかは全くわからない。それでもわかる凄味というか威圧が俺に襲いかかる。

 流石にここまでは甘くない。


「どうして君は戦う?」


『司令、何故今になって……』


 ヴァレッドの疑問は当然だ。

 この島に来たことが戦う覚悟を決めている証明と言っても過言ではない。

 例え、現実を知り、怖気づいたところで帰りたいなんて思わないし、そんなの情けなさすぎる。


「それは世界を守るた……」


「それは他の人間にもできることだ。現に今は私達が行っていることだ」


 ピシッと本質を貫かれる。

 世界を救おうとしている俺とヴァレッドだけじゃない。だから、このDATという組織が存在する。


「いや、違う! 俺にしかできないことだから! ヴァレッドと一緒に戦えるのは俺にしかできないことだから!」


「そんなことはないと言ったら?」


「何?」


「君の言い方ではヴァレッドに乗れるから戦っているだけにしか聞こえない。他にヴァレッドに乗れる人が現れれば君はどうする? その人間に譲ることだってできる。生半可な覚悟では戦って貰いたくないのだ」


『いや、司令。私は勇気と共に戦いたい!』


「ヴァレッドはそうでも日登勇気は違うかもしれない。ヴァレッドに乗れるという唯一無二の特性に惹かれて戦っているだけかもしれない」


『そんなことはない! 共に生活し、戦ってきた私にはわかる!』


「ヴァレッド……」


「そうか。だが、初対面の私にはそうは見えない」


 ヴァレッドの一生懸命な弁明に心を打たれる。

 感謝しかない。まだ短いながらも一緒に過ごし、戦ってきたヴァレッドからここまで信頼されているなんてパイロット冥利に尽きる。

 なら、今度は俺がヴァレッドの思いに応える番だ。


「ありがとう、ヴァレッド。今からはちゃんと俺の言葉で伝える。だから、見守っていてくれ」


「わかった……」


「信頼関係は良しか」


「……一度知ってしまったからさ」


 俺は真っ直ぐに司令を視線を向ける。

 真剣な俺の思いに応えるかのように司令も同じように視線を向けてくる。


「この世界の何処かでたくさんの人達がメルフェスに殺されていると思うと普通に生きていけないから。そして、俺には殺される人達を助けられる力がある。それなのに見て見ぬ振りをする生きていくなんて、絶対に後悔する! 俺は俺であるために! 後悔しないためにも戦う!」


「そうか。それならこう言える。君は必ず人の死を目撃する。それでも戦えるか?」


 死。

 誰かを守るために戦うとは言え、必ず全員を救えるとは限らない。守れずなかった結果、目の前で死と直面するかもしれない。

 隣で共に戦って組織誰かが突然、メルフェスに襲われて死ぬかもしれない。

 あの日と同じだ。事故で両親を失った時と、初めてヴァレッドと共に戦った時のように前触れもなく、死に触れることなんて当たり前のようにある。ましてや、命を賭けて戦う戦場なら尚更、そんな機会は充満している。


「覚悟はできていると言ったら嘘になります。人の死なんて見たいわけがない。だから、死なせないように戦うだけです」


「君が死ぬことになるとしてもか?」


「死なないように戦った結果、ここにいるんです」


 おかしい話だけど死なない為に死ぬ可能性の高い戦場に足を踏み入れたんだ。

 怖くないわけじゃないけど、そこに関してはやることは一切変わらない。

 一通り、俺の思いをぶつけた後、司令は微笑む。

 そして、サングラスを外す。彫りの深い顔立ちに青い瞳は正しく外国人といった感じだ


「いいだろう。共にDATの一員として戦おう」


 ゆっくりと俺の倍近い大きな手を差出し、握手を求める。

 拒否する理由なんてなかった。


「は、はい!」


 がっちり握手を交わす。筋肉質な手はまるで岩と握手しているかのように大きくて硬かった。


「それでは……さっそ……」


「し、司令!?」


 何かを言いかけたその瞬間だ。

 まるで電源が切れたかのように動きが止まり、そのまま膝から崩れ落ち、ドンと大きな音を立てながら、倒れてしまう。

 急に目の前で人が倒れ、どう対応すればいいかわからず、焦ってしまう。


「ヴァ、ヴァレッド!! 俺はどうすれば!!」


『いや……心配することはない』


「ほら、言わんこっちゃない!」


 焦る俺とは対照的にヴァレッドは酷いくらい冷静だ。

 そして、白鳥が部屋に呆れながら入ってくる。

 さらに白鳥の後ろから先程、お盆を持ってきたロボット三体がストレッチャーを持って入ってきた。

 ついさっき倒れたばかりなのにもう到着するなんて速すぎる。まるでこうなることを予想していかのようだ。


「司令はどうしたんですか!?」


「司令は極度のあがり症なんだ! それなのにカッコつけて!」


 巨体でありながら軽々とロボットに持ち上げられる司令。

 あがり症? あがり症だからって二人きりで話したからって倒れるなんてあり得るのか?

 というか組織を率いる総司令があがり症って大丈夫なのか?


「……俺……ここでやっていけるかな?」


 ストレッチャーに運ばれる司令を頬を引きつらせながら見送った。

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