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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
シンクロニシティ
59/117

出発

1月23日日曜日 大田区産業プラザPioで開催される僕ラブで同人サークル「秘密結社シーマーズ」のシママシタとしてラブライブの同人誌を出しますのでコロナが蔓延している状況ですがよろしければ遊びに来てください。

因みに内容は虹ヶ咲学園とグリッドマンユニバースのクロスオーバーです。

もし、参加しないけれど同人誌が欲しい方はなろうの感想やメール、Twitterでもいいので一声かけて頂ければ在庫にもよりますが通販なども行う可能性が出てきます。

「高嶺、待っていたのか」


 家の前には高嶺がいた。

 ここまでストーカーしてきた……ということではない。

 卒業式が終わってからここまでずっと歩いてきた。

 そして、色々と話をした。

 これから向かう新天地のことや高嶺の受験結果のこと。

 後は戦いのこととかヴァレッドのことについて。

 今の環境で腹を割って話せる人間は高嶺しかいない。特に後者なんて高嶺以外には話せるわけがない。

 こう思うと誰にも秘密を二人だけ抱えているということが簡単に触れられない特別感を生み出していた。


「行っちゃうんだよね」


 歩き始めてから暫くして、高嶺が口を開いた。


「あぁ。暫く、会えなくなるな」


 そう答えると高嶺はゆっくりと視線を逸らす。

 何だ? 寂しいのか?

 いや、不安なのか。確かに考えればこれが会話になるかもしれないなら不安になるのも無理はないか。

 最後の別れは笑顔で後腐れなく済ませたい。きっと心残りがあったらお互い後味の悪さを味わいながら生きていくことになる。


「大丈夫だ。死ぬつもりはない。それに離れたって地球にいる限り、必ず会える。この空は繋がっているんだ」


「空……」


 俺は空を指差す。


「ブレイブジェッターで飛んで気づいたんだ。当たり前だけど空は全部同じで繋がっている。どんな澄んだ青空も染められた夕焼けも、星が煌めく夜空だってどこでも見れて、全部同じなんだ」


 今まで空なんてただの風景だと思った。

 だけど、ブレイブジェッターを任され、空を飛び始めた時、果てまで広がる空を目の当たりにした。

 そして、空を飛び色んな所に向かった。

 だから、当たり前だけど空は全部繋がっていることを改めて実感した。


「別に俺じゃなくていい。クラスの奴らで会いたくなったけど会えない時は空を見ればいい。きっとそいつも同じ空を見て、その下にいるんだって思えるはずだから、少し寂しさが紛れると思う」


「……ありがとう。日登君」


 すると、高嶺は何かを決意したかのように顔を上げ、俺の瞳を真っ直ぐ見つめる。


「あの……日登君!」


 高嶺の顔は熟れたりんごのように赤く染まっていた。

 その表情がよくわからないけれどとても魅力的に感じていた。


「その……私……! す………」


「す?」


 『す』の後に何の言葉が続くか俺にはわからない。予想もできない。

 その先の言葉が気になった。だけど、高嶺は何かに気づいたかのようにハッとした後、寂しそうな笑みを浮かべる。

 顔の色はいつもの真っ白に戻っていた。


「……うん。すぐに会えると思う。だから、待ってる」


「……そうか」


 俺でもわかる。高嶺が言いたいことはそんなことじゃないことくらい。本当は別のことを言いたかったんだと思う。

 多分できる男は聞き出すんだろうけど、俺はそんなことはできない。

 だって、高嶺の寂しそうな笑みと諦めが浮かんだ表情を見てしまっては余計なことを言ったら傷つけてしまう。傷つけないよう言葉をかけるなんて器用なこと、俺にはできない。


『勇気。そろそろだ』


「あっ。そんなに歩いてたのか」


 高嶺との会話に夢中になっていたあまり、目的の広場に到着していたことに気が付かなかった。

 住宅街から少し離れたこの広場は東京ドーム一個分の大きさを誇り、普段は家族連れがピクニックやバーベキューを楽しんだり、ボール遊びもできるということで子供達が羽目を外して遊ぶ、憩いの場だ。

 その場所は今だけ封鎖している。広場の入口には立入禁止の立て札が立っていて、周りには私服の男性と女性が等間隔で並んでいる。この人達はみんなDATの職員達だ。

 この広場にはブレイブジェッターが止まっている為、一般人が入って目撃されると不都合なことからこうやって厳重に管理している。

 本来は仮の基地から出発する予定だったが、卒業式が終わってすぐ、場所を近くにして欲しいと我儘を言った。

 全部、俺の我儘というわけじゃない。高嶺が最後まで見送りたいって言ったから。その我儘を聞く義理が俺にはあると思った。

 それなら白鳥から連絡があり、僅かな時間なら広場に待機させておくと渋々了承を受けた。

 白鳥に感謝しながら俺達は広場に入る。そして、広場の中央にはヴァレッドと連結したブレイブジェッターが待機していた。


「……お別れだね」


「あぁ」


 高嶺が寂しそうな顔を浮かべる。

 お互い、生きているとはいえ、すぐに会えなくなるからな。


「それじゃあ、行ってくる」


『高嶺君。体調に気をつけるんだ』


「ありがとう。日登君。ヴァレッド」


 そして、俺はゆっくりとブレイブジェッターに向かおうと足を踏み出す。


「いけね。言い忘れてた」


 俺は振り返り、ニッと笑う。


「ありがとうな! 高嶺がいたから今の俺を取り戻せた!」


 高嶺には感謝している。

 あの時、高嶺と一緒じゃなければきっとあそこまで生きようと思わなかった。そのまま死ぬか、あるいは無気力なままつまらない人間として、つまらない人生を送るかの二択だった。

 高嶺がいたから生きようと思ったし、俺西ができない使命を見つけられた。

 その代償は大きいけれど、それでも俺は受け入れたから。


「あっ! ……うん!」


 高嶺はキョトンとしていた。

 その顔を見つめた後、俺はブレイブジェッターに乗り込み、起動させる。

 クリアコーティングを使用し、ゆっくりと上昇させる。コックピットの外にいる高嶺の姿が段々と小さくなる。

 見えないとわかっていながらも何となく敬礼をする。

 そして、ブレイブジェッターは一気に加速し、空へ飛翔した。


『よし、早速向かうぞ』


「いや。その前に……一回でいいから旋回してもいいか?」


『構わないが、何の意味が?』


「最後に街を見たい。俺の育った街をさ」


『わかった』


 俺はゆっくりと街の上を旋回し、見下ろす。

 特徴的な建物も施設もない、普通の街並み。

 だけど、旅立つとなるとそういう特別じゃない普通こそが何よりも特別に思えてくる。

 もう二度とこの街の土を踏めないかもしれない。嫌でも最悪の未来が頭をよぎる。

 だから、せめて目に焼き付けて置きたい。

 そして、見下ろす中でドリラの襲撃によって生まれた瓦礫の一帯を見つめる。

 あんな死んだ街はここで最後しないといけない。拳を固く握り締める。


『もう少し見ていくか?』


「いいや、満足だ。行こう、俺達の新天地へ」


 十分、街を見下ろすと俺はペダルを踏み、一気にブレイブジェッターを加速させる。

 そして、俺の新たな住処と生活の場であり、DATの本拠地である島、「エーオン島」へと向かうのであった。

次回予告


勇気は新天地「エーオン島」に到着し、世界が一変する。

新たな人々との出会い。

差し迫る危機と世界の真実を知り、より一層戦う覚悟を決める。

そして、勇気はエーオン島で不思議な雰囲気を漂わせる美少女「ナナ・マリエル」と出会う。


次回 鋼鉄の勇者 ヴァレッド


「邂逅」


その出会いが導くのは希望か絶望か。

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