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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
シンクロニシティ
58/117

旅立ちの日に

メリークリスマス

皆様、いかがお過ごしでしょうか?

恐らく、ポケ戦やエンドレス・ワルツ、プレンパワードを見て過ごしていることでしょう


僕はクリスマス関係なく働く予定ですし、仕事が終わっても特に誰とも過ごす予定がないどころか一人で同人誌制作に根を詰める予定です。

 卒業式が終わると真矢さんは急いで会社へと向かっていった。どうやら俺の卒業式に出るために午前中だけ休みを取ったそうだ。

 無理しなくていいのにと思いつつ、無理して門出を祝ってくれることにこの上ない喜びを感じたのは矛盾しているのだろうか。

 真矢さんとの別れを惜しんだ後、足早に家に帰った。俺は今日の内に新天地であるエーオン島へと向かう。

 旅立つ為の荷造りと準備をしなくちゃいけない。と言ってもある程度の大きい物は既に送っている為、直接持っていくのは着替えと財布、スマホくらいだ。

 リュックの中を確認し、取り敢えず最低限の物が入っていることを確認すると、チャックを閉じる


『持っていくのはこれだけでいいのか?』


 腕のブレスレットからヴァレッドの声が聞こえてくる。

 半年間、共に生活してきたことで言語能力がかなり発達し、人間と話しているのは変わりないくらい流暢になっていた。


「あぁ。いいんだ」


 まだまだスペースがあるものの無理にでも持っていくような思い入れのある物もない。ある程度の物は向こうが用意してくれるのでわざわざリュックをパンパンにする理由がない。

 荷造りが終わると制服を脱ぎ、私服に着替える。制服は来年度から入学する新入生に譲るらしく、記念に置いておくことはできない。記念の品として埃を被るくらいなら制服らしく袖を通された方が制服も喜ぶだろう。

 一度、部屋を見回す。この部屋も今日が見納めになる。だが、特にこみ上げるものは何もない。この居心地の悪い家の中で唯一の居場所であるこの部屋も俺が旅立った後は叔父さんの書斎にすると本人の口から告げられた。

 つまりはこの家に俺の帰る場所がなくなる。そして、もう二度と帰ってくるなとやんわりと言ってきたのだ。

 別に俺だってこの家に戻ってくるつもりは毛頭ない。真矢さんと一緒に生活できないのは寂しいが俺だってもう高校生だ。甘え続けるわけにはいかない。


『ここで色々と語り合ったな』


「あぁ。ここでしか話せなかったからな」


『寂しい夜を情熱的に変えたこともあったな』


「お前……その言い方は誤解を招くから止めてくれ」


 ヴァレッドの存在が重要機密ということでおいそれと他人に存在を知らせるわけにはいかない。共同生活するにしても真矢さん達の前では会話なんかできるはずがなかった。

 だがら、誰も入ってこない……たまに酔った真矢さんが突然入ってくることがあったけど、基本的に邪魔の入らないここで俺達は色々と語り合った。

 戦いのことやメルフェス、DATのことについてなどの真面目な話をした。

 それだけじゃない。ヴァレッドに世間の流行だったり、ささやかな疑問。時には俺の初恋について聞かれたことがあった。

 別に初恋なんてしたことないと否定したら嘘をついていると疑われた。

 本当に恋なんてしたことないんだよなぁ。

 それからくだらない雑談だったり、色んなことを話した。きっと友達とお泊まり会でもしたらこんな感じなんだろうなと味わえなかった青春の一片を味わった気分だ。

 まぁ、稀にお互いがお互いを遠慮しないあまりに空き放題言った挙げ句に喧嘩したこともあるねど、今となってはいい思い出だ。


「……行くか」


『そうだな』


 リュックを背負い、ドアを露骨に音を立てて、閉める。宴会での一本締めみたいな感じに。

 階段を降り、玄関に向かう。

 家の中はしんと静まり返っている。

 叔父さんは仕事に行っていて、叔母さんは俺が家に帰ってきた丁度のタイミングで買い物に行った。

 個人的には……いや、お互いに都合がいい。余計な気を使わなくていいからだ。

 本来なら挨拶をするべきだろうが、特に何もしてくれなかった二人に感謝の念なんてこれっぽちもない。だから、節目だからと感謝をされても二人は困るだろうし、不快になるだろう。

 強いて言うなら家から出ていくということが感謝を示すことになると思う。

 靴を履く。

 色々と考えながらも何もしないのはそれで後味が悪いので取り敢えず、誰もいない家に向かって、軽く会釈をして、玄関の扉を開け、外に出た。

ブレンパワードのクリスマスプレゼントだろぉ!の英語吹き替えのシーンが好き

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