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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
シンクロニシティ
57/117

記念撮影

Rgνガンダムの右足作るのに2時間以上かかるんだが……

「日登君!」


「あぁ、高嶺。卒業おめでとう」


 真矢さんと語り合っていると同じく卒業証書が入った筒を胸に抱え、長いスカートをヒラヒラと揺らしながら駆け寄ってきた。

 そして、傍まで高嶺らしい優しげな笑みを見せてくる。

 その姿はまるで大好きな飼い主の元に駆け寄ってくる子犬のようで愛らしく思えた。


「どうしたんだ?」


「うん! 最後に挨拶がしたくて……」


「そっか……」


「何々!? ゆう君、こんなに可愛い彼女がいたのね! 全く、隅に置けないわね」


「違う! 高嶺はそういうのじゃ!」


「あらあら。照れちゃって、可愛い」


「全く……もう」


 すると俺達二人を真横から眺めていた真矢さんがニヤニヤと不敵な笑みを浮かべ、割って入ってくる。

 確かに普通のクラスメートという間柄ではないけど流石に恋人関係ではない。

 いや、傍から見たらそう見えるのかもしれないけど。


「ごめん。真矢さんは色恋沙汰には目がなくて……」


「ううん。平気だよ!」


 高嶺に頭を下げる。変にからかわれて、気を悪くしてしまったら本当に申し訳ない。

 だけど、人間がしっかりしているのか高嶺は頬を赤らめ、恥ずかしがっては見るものの嫌な顔一つ浮かべず、気にしていないと伝えてくれる。


「ねぇ。折角なら二人で写真を撮ったら? というか撮ろうよ」


「何でそんながっつくのさ!?」


「だって、そんなに仲がいいなら一つくらい思い出を作っておいたほうがいいよ」


 もう明らかに俺達のことを照れくさくて、周囲には隠している恋人同士だと決めつけてる。

 はぁと大きな溜息を吐く。


「……高嶺がいいなら、いいけど」


「それじゃあ、高嶺ちゃん!」


 別に写真くらいならいいと思い、承諾すると真矢さんはズイッと高嶺に顔を近づける。

 今会ったばかりの相手にここまで接近され、誤解をされて、さぞ迷惑だろう。


「は、はい! 是非!」


 だけど、勢いに圧倒されながらも高嶺は嫌がるどころか戸惑うことなく承諾した。それなら早速と言わんばかりに真矢さんは俺達を卒業式の立て札が立っている校門の前に連れて行く。


「なぁ、高嶺。無理しなくていいんだぞ」


 俺は歩きながら高嶺に耳打ちをする。

 すると、高嶺は首を横に振る。


「違うの。無理もしてないし、嫌じゃないの。だって、私は……日登君が……」


 高嶺は唐突に目を泳がせ、仕切りに前髪を触り始め、何か言いたげに口を尖らせる。


「俺が?」


 そして、口を開けて何か言葉を発しようとしていたが、堪えるかのように口を閉じる。そして、仕切り直し、口を開けて言葉を発した。


「……日登君は大事な友達だから!」


「……そっか。ありがとうな」


 必死に伝えてくれた思いを噛み締めるように高嶺に感謝の言葉を伝えた。

 俺には親友と呼べる存在はいなかった。

 だから、例え異性だとしても大事な友達として扱われるだけで嬉しかった。


「ほら! 二人共! 早く!」


「わかったよ! 高嶺」


「う、うん!」


 真矢さんが手招きをして、俺達を急かす。

 俺達は小走りで校門の前まで向かう。そして、立て看板の前に並んで立つ。

 真矢さんはスマホを構える。

 思春期特有の照れがあるのかそれとも無意識に立て看板を隠さないようにしていたのか俺と高嶺の間には一人分のスペースが生まれていた。

 どうやら真矢さんのそのスペースが気に食わないようで頬を膨らませる。


「ほら、二人共! 寄って寄って!」


 スマホを持たない手で寄ってとジェスチャーをする。

 俺達は目を合わせる。男女が同じやはり照れが強く、顔が熱くなっていく。

 しかし、真矢さんのことだ。指示通りにしないと絶対にシャッターを切らず、誇張しているかもしれないが永遠と続くかもしれない。

 大きく息を吐き、爆発しそうになる鼓動をできるだけ抑えようと努力する。

 そして、高嶺の制服の袖を引っ張り、画に入るよう、隣に寄せる。


「えっ!?」


「……こうしないと終わらないから」


 隣を一瞥する。

 高嶺は目を見開き、驚いた表情を浮かべた後、今まで見たことない明るい笑顔を浮かべた。


「それじゃあ、撮るよ! ハイ、カマンベールチーズ!」


 俺達が卒業証書の入った筒を上げ、残りの手でピースをする。その瞬間、中学生最後の思い出が刻まれる音が耳に入った。

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