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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
シンクロニシティ
56/117

大切なもの

RGゴッドガンダム欲しい

 卒業式が終わり、教室に戻って最後のホームルームを行った。

 色々と思うこと、言いたいことを言い合った。

 どうしてあいつが死んでしまったのか。どうしてメルフェスが現れたのか。理不尽な悪意に対して、思いの丈をぶつけ合った。

 言い合ったところで結局は心を纏った錆を落とすだけにしかならない。だけど、それだけでも心を軽くするには十分だった。

 最終的には生きていて良かった。これからも亡くなって人達の分まで生きようと先生が胸を張って語り、俺以外は笑顔を浮かべ大団円で終わった。

 俺には痛い話だ。亡くなった人達の分までは生きることができないかもしれない。

 それもわざわざメルフェスがいる戦場に出向いて、命を賭けて戦っているんだから。

 大事にすべき命を大事にしない。だけど、変わらないたくさんの命を救う。悪いことじゃないし、寧ろ、いいことなんだけど、最後の最後に普通の人とは違う立場になってしまったことを痛感した。

 俺はただ中学校だけでなく、普通から卒業するんだと物寂しい気持ちになった。


「卒業おめでとう〜!」


「真矢さん……泣きすぎだよ……」


 そして、ホームルームが終わり、卒業証書が仕舞われた筒を片手に校舎から出ると白い正装姿の真矢さんが泣きながら俺の傍に来た。


「だっでぇ! あんなにちっちゃかったゆう君がこんなに大きくなってぇ! それで、家から出ていっちゃうだから! もう!」


 まるで本当の姉……いや、母親のような反応をする。

 両親が亡くなって、磯野家に引き取られてから殆どの面倒を真矢さんに見てもらった。

 厄介者であるはずの俺を血の繋がった弟のように接してくれて、今でも感謝している。

 だけど、それも今日で最後だ。

 俺はこの後、この街を出る。そして、新しい新天地へと向かう。

 真矢さんと別れるのは寂しい。もしかしたら、今生の別れになるかもしれない。

 戦うことを選択しなければこれからもずっと真矢さんと一緒に生きられたかもしれない。そういう未来も選べた。

 それでも戦うことを決めた。そこには何も後悔はない。


「真矢さん。今までお世話になりました」


「……待って! 涙が止まらなくなるぅ!」


 頭を深々と下げ、今まで面倒見てくれたことへの最大の感謝を伝える。

 真矢さんはまるで決壊したダムのように大量の涙を流す。

 ここまで泣いてくれる程、大切に思われていることがとても嬉しかった。


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