戦いの虚しさ
境界戦記のブレイディハウンドが滅茶苦茶好き
あの量産機らしい地味さが素晴らしい
グラーブスを倒してようやく戦いが終わった。
俺達は静寂に包まれた戦場をグルリと見回し、万が一逃げ遅れた人達がいないかを目視とレーダーで探す。
しかし、その不安も杞憂で終わった。
逃げ遅れた人も怪我人もいないことを確認すると合体を解除。お互い戦闘機形態に変形し、再度ヴァレッドと合体し、巡航形態へとなり、戦場から飛び去る。
「酷いなぁ……これは……」
『ナニガダ?』
「だって、こんなに壊れてんだ。元通りになるのに一体どのくらいかかるんだろうな」
俺はふと今までいた工業地帯を見下ろす。
まるで子供が玩具を散らかしたように瓦礫が散乱している。ここを復興するのにきっと相応の時間がかかる。
確かに今回は誰一人として犠牲者を出さなかった。誰がどう見ても十分過ぎる結果だと褒めてくれる。
だけど、崩壊した建物を見ると何だか複雑な気持ちになる。
無論、換えの効かない命と建物では価値は比べ物にならないのはわかっているけれど、これがもし、家とかなら、そこで暮らし、守ってきた思い出や生活が奪われることになると思うと、なるべく被害を少なくすべきなのかと思った。
だからって被害を最小限に抑えようと気にするあまり、肝心な命を守れないようじゃ意味がない。
「ヴァレッド。俺は気づいたよ。戦うことは難しいな。上手くいかないことばかりだ」
『……ソウダナ。全テヲ守ルコトハ私達デモ出来ナイカモシレナイ』
ヴァレッドは噛み締めるように語る。
全てを守ることはできない。
俺達の力を持ってしても命とその場所全部を守ることはできない。現に俺達は周囲の建物や地域を犠牲に命を救った。
その選択は間違いじゃない。だけども、万能でもない。それをちゃんと理解しないといけない。
戦うことの責任を改めて認識した。
「でも、悪いことばかりじゃない。今回の俺達は本当に上手くやれた」
『アァ。同感ダ』
俺達の認識はガッチリと噛み合っていた。
今回で二回目の実戦だったがかなりの手応えを感じた。
ヴァレッドと俺が二手に分かれ、片方が救助に着手し、残った方がメルフェスの相手をするという想定されていた運用方法を問題なくこなせた。
戦闘も訓練よりも上手くやれて、後半ではピッタリと息が合っていた。だから、グラーブスを倒せた。
この調子ならいけると思った。
俺達は戦える。そして、命を守れる。
「なぁ、ヴァレッド」
『ナンダ?』
「俺達はいいコンビになれるよな」
『アァ! 必ズダ』
俺の言葉に力強く頷くヴァレッド。
おかげで不安と暗くなった心が払われ、清々しい心になった。
力強くペダルを踏み、速度を上げた。




