シンクロニシティ
スーパーミニプラのファイバードが完成した
かっこよすぎて俺のフレイムソードがチャージアップした
「きっかり二分か」
『遅カッタカ?』
「十分だ!」
モニターに表示されたタイマーを見て、一秒もズレもなくちょうど二分で来たヴァレッドにロボットらしいと思った。
ヴァレッドはブレイブジェッターと並び、並列飛行する。
俺は気合を入れ直す。ヴァレッドが来たからにはやることは一つだ。
「行くぞ! 合体だ!」
『オウ!』
ブレイブジェッターとヴァレッドは急上昇し、合体の準備を行う。
グラーブスが混乱し、鋏が閉じられている今がチャンスだ。
「ドッキング……オン!」
座標を入力し、操縦桿を握り締める。
ブレイブジェッターはゆっくりと変形を開始する。
初戦闘の時とは違い、何度も訓練し、緊張も薄れていることもあって、変形は問題なく完了する。
『トゥ!』
ブレイブジェッターの変形が完了すると今度はヴァレッドが体を畳み、変形する。
そして、ブレイブジェッターの凹みに合わせようと各部の姿勢制御用バーニアを吹かす。
ここの合体は訓練中でも何度も失敗した。成功率よりも失敗率の方が高い。訓練でできないことは本番でも簡単に上手くいかない。
そんなことはわかっている。失敗する確率が高いことがわかっていてもそれが諦め理由にできない。
人を救う為には戦わなくちゃいけない。例え、自分の命が危険に晒されることが明白でも。俺は……俺達は戦うことを望んだ。
だから、ヴァレッドは何も言わなかった。変形できるのかと。
違う。出来るかどうかじゃない。
やるんだ!
「後は勇気と気合で!」
ヴァレッドの僅かなズレがモニターに表示される。俺は操縦桿を固く握り締め、細かな微調整を行う。
そして、モニターにヴァレッドとのズレがなく、完全に一直線になった時、
「『今だ!』」
俺とヴァレッドの声がズレなく完全にシンクロする。
ヴァレッドはすかさずブレイブジェッターと合体する。
モニターには合体成功を伝える「Perfect」の文字が表示されている。
『フォームアップ!』
ヴァレッドの掛け声と共に赤いヘルメットを被る。
その瞬間、合体は完了する。
『巨大合体! エクスヴァレッド!』
真の姿に合体したエクスヴァレッドはそのまま大地に着陸する。
エクスヴァレッドの別物とも言えるプレッシャーを感じ取ったのか、暴れるグラーブスはピタリと動きを止めると右腕の鋏で大地をガンガンと殴り、無理矢理巻かれたアンカーを衝撃で外す。
そして、自由になった鋏を閉じたり開いたりしながら、俺達を睨みつける。
「どうやら本気になったみたいだな。行くぞ!」
俺はペダルを踏み、エクスヴァレッドの出力を上げ、グラーブスと戦闘を行うその直前だ。
『待テ!』
敵を前にしながらエクスヴァレッドはその場から動こうとしない。
「何だ!? グラーブスに何か変化があったのか!?」
「イヤ……名乗リヲシテイナインダガ……」
ヴァレッドのひょんな台詞に俺はコックピットの中でひな壇芸人のようにずれ落ちる。
てっきり、俺には気付けなかったグラーブスの変化や技を発動しているかと思いきやそんな戦闘に関係ないことを気にするのか。
「戦闘前に何言ってんだ! 悠長に構えている暇はないだろ!」
「ダガ、博士ハ名乗リヤ見得切リハ日本ノ素晴ラシイ文化ダカラヤルベキダト」
「そんな小説やアニメの話じゃないだろ。こっちは本当の命賭けているってのに……」
創作の世界ではかっこよく見せる為の名乗りをする時もある。戦う前にそんな悠長なことをしている暇なんて俺にはないと思うが、実際、昔の武士は戦う前にお互いに名乗ってから刃を交えたなんて話を聞く。
確かにその方が正々堂々としている気がするし、人々の希望であるエクスヴァレッドが名乗りをし、安心を与えるなんてメリットは無いわけではない。
だけど、そのメリットを取る為に今から名乗りを考える暇はない。
『ダメナラコノ前ノ……』
「却下だ! あれはダサすぎる」
「ナラ……」
「……わかった! 今から俺が思いつきで言うから勝手に動け!」
『ワカッタ!』
気にしているところを見ると名乗りがないとエクスヴァレッドは本調子で戦えないような気がした。
プロスポーツ選手でもルーティンと呼ばれる行動をする選手が多い。ルーティン自体は一見無意味な行動に見えるが、ルーティンを行う者の集中力を高めたり、緊張を抑えたり、精神的な部分で大きな影響があり、ある意味で精神統一に近いと言える。
ヴァレッドにとっては名乗りがルーティンなんだろう。それを取り上げられれば調子が狂うのも頷ける。
最も、ロボットが精神統一というのは少し引っ掛かるが殆ど人間と同じような思考回路があるから不思議ではない。
「行くぞ! 希望の天を駆けるは紅と白の翼! 二つの翼が合わさる時、一騎当千の力が大地に立つ! その眼に焼き付けな! 俺達は……エクスヴァレッド!」
やけくそになって吐いた台詞。冷静になっていくととてつもない恥ずかしい台詞だと実感が湧き、体が沸騰しているかのように熱くなっていく。
『勇気! イイジャナイカ! 少シ、修正スレバイイ決メ台詞ニナルゾ!』
「う、うるさい! さっさと倒すぞ! あの蟹を!」
あまりのダサさに煽っているのか。それとも純粋に褒めているのかヴァレッドはフォローする。
多分、ヴァレッドのことだから断然後者だろう。
俺はこの恥ずかしさをぶつけるかのようにグラーブスに敵意を向ける。
ヴァレッドは調子が良くなったようで『オウ!』と勇ましい声と共にグラーブスに突撃する。




