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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
シンクロニシティ
51/117

無力じゃない

スーパーミニプラのファイバード、制作中です

「ふぅ。ヒヤヒヤしたな……」


 墜落を寸前で回避し、俺は額から流れる汗を手の甲で拭う。


「グラーブスはどうなった?」


 俺は操縦桿を倒し、ゆっくりと旋回する。

 すると、視界にひっくり返って倒れるグラーブスが入る。

 空中で銃弾を放ち、その反動で反転し、そのまま倒れたのだろう。このままヴァレッドが来るまで倒れたままでいてくれと願いがそれは淡い願いだった。

 グラーブスは鋏の刃先を地面の向け、銃弾を放つ。すると、その衝撃で跳び上がり、空中で半回転して、地面に着地する。

 蟹の癖に器用なことをする。


『勇気! 大丈夫カ!?』


 ヴァレッドから通信が入る。


「あぁ。何とかそっちは?」


『救助ハ滞リナク進ンデイル! アト二分デ終ワル計算ダ!』


「二分か。俺としては一分で終わらせて欲しいが……」


『善処ハスル!』


 取り敢えず救助は問題なく進んでいることに一先ず安心する。

 二分。短いようで長い時間。いや、一秒でも気を抜けば死ぬようなこの戦場では気が遠くなる程の長い時間だ。

 この二分間。俺はしっかりとグラーブスを抑えることができるだろうか。


「違うだろ。日登勇気。やるしかないだろうが」


 気弱になった自分を鼓舞するように言い聞かせる。

 ヴァレッドが必死になってやっているんだ。俺もそれに答えなくてどうする。


「グジャアァァァァ!」


 鉄の当たる甲高い音が俺を現実に引き戻す。グラーブスは鋏を閉じたり開いたりして、俺を威嚇する。


「やってやるさ!」


 操縦桿を固く握り締める。ペダルを踏み込む。

 たった二分くらい、遊んでやる。


「くらえ!」


 機首から機関銃を撃ちながら、グラーブスに突っ込む。直撃し、煙が上るが相変わらずダメージにならない。

 迫るブレイブジェッターをグラーブスは叩き落とそうと鋏を振るう。俺は旋回で回避する。

 グラーブスに背を向けながら距離を取る。そして、後方に向け無数のミサイルを放つ。

 ミサイルのスコールはグラーブスに降り注ぎ、グラーブスの動きを止める。


「次は!」


 次の攻撃は何かと身構えた時。煙を払い銃弾が飛んでくる。

 しかし、煙が邪魔で狙いが定まらなかったのか銃弾はブレイブジェッターの横を通り過ぎる。


「雑に撃ったところで! でも、それは厄介だから!」


 俺はペダルを踏み、加速する。


「アンカーショット!」


 ブレイブジェッターから運搬用のアンカーを放ち、グラーブスの右腕の鋏に取り付かせる。そして、鋏を中心を周り、巻き付かせる。


「ググガ!」


 強制的に鋏を閉じられたグラーブスはアンカーを引き千切ろうと鋏を開こうするが、何重にも巻かれたアンカーの強度は強く、簡単には引き千切れない。

 ならばとグラーブスは残った左腕の鋏を振るってブレイブジェッターを落とそうとする。

 俺はアンカーを切り離し、回避する。

 そして、アンカーを今度は左腕に取り付かせ、一気に上昇する。


「スモーク散布!」


 機体後方に装備されたスモークディスチャージャーから煙幕が放たれ、グラーブスの視界を塞ぐ。

 煙に隠れる前にグラーブスが煙を払おうと腕を振るうのが見え、さらにアンカーで繋がれていることもあって、ブレイブジェッターが激しく振り回される。

 本来ならば腕を振らせないよう、ブレイブジェッターで引っ張るのが正しいかもしれない。

 しかし、過度な無茶はブレイブジェッターに余計なダメージと不具合を与え、メインである合体が行えなくなる可能性が高くなる。

 ならば、無理に動きを止めるくらいなら、落とされないように敢えて動きについていくほうがいいと判断した。

 グラーブスは払うのを諦めたのかピタリと動きが止まる。

 そして、アンカーに僅かに引っ掛かりを感じた。恐らく、銃弾を撃つ為に鋏を開いたのだ。


「それを待っていた!」


 ペダルを踏み、ブレイブジェッターは加速し、右腕の鋏と同様にアンカーで左腕の鋏を縛る。

 しかし、右腕とは違う点は銃弾を放つ直前だったということだ。

 銃弾を放つ直前に鋏を閉じられ、発射口を失った銃弾は鋏の中で暴発する。

 その威力は高く、鋼鉄の鋏を粉々にふっ飛ばした。


「ギィグゥゥゥゥ!」


 左腕を失ったグラーブスは悲鳴を上げ、その場で暴れ散らす。


「俺を甘く見るなよ!」


 俺は確かにヴァレッド程の戦闘能力はない。

 だからと言って、ヴァレッドがいなければ戦えないような軟弱者でいていい理由にはならない。

 俺一人でも戦えるだけの力をあっても悪いことはない。


『勇気!』


「やっと来たか!」


 俺はその通信を聞いて、笑みを浮かべる。

 目視で確認する。

 背後から救助を終え、戦闘に再び戻ってきた戦闘機形態のヴァレッドが向かってきていた。

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