憂鬱な夏
マジンカイザーのテーマがアマゾンミュージックにないの許せない
「ごめん、ゆう君!」
くだらない三者面談がようやく終わり、僕は学校を後にする。
校門の前にスーツ姿の女性――磯野真矢さんがいた。
幼い頃、交通事故で両親を亡くした俺は親戚の家に預けられた。その親戚の一人娘が真矢さんだ。
叔父さんと叔母さんは一応、僕を引き取ってはくれたがあくまで世間体を気にしての選択。
家では腫物扱いされる中で真矢さんだけは実の弟のように愛してくれた。
「そんな、無理に来なくても大丈夫だって」
「でも、三者面談でしょ。父さんも母さんも来るとは思えないし」
「先生もそのことはわかっているから」
真矢さんは昨年、大学を卒業して、今では立派な社会人。
今日だって、本当は仕事があるはずだ。でも、わざわざ半休なんか使って俺の面談に出ようとした。
感謝しかない分、その努力を無駄にしてしまった罪悪感が襲いかかる。
「……じゃあ、この後、お昼でも食べる?」
「あぁ……いいや。この後、友達と食べる約束してるから」
嘘だ。俺には一緒にご飯を食べる友達なんていない。
きっと、真矢さんはご飯を食べながら三者面談で話したことや将来についてあれこれ聞いてくるはずだ。
ただでさえ、先生との面談で疲れ切っているのに真矢さんとの第二ラウンドはかなりキツイ。先生なら適当にあしらえばいいとして、真矢さんはそうはいかない。同じ屋根の下で暮らす同居人として、今まで迷惑をかけた身として、無下に扱うわけにはいかない。
それに真矢さんには余計な迷惑をかけたくない。
俺の人生は……俺の将来は俺だけの物だ。例え、気を許している真矢さんでもあんまり干渉して欲しくない。
俺の道は俺自身で決める。
「そう……。わかったわ。また、今度にしましょ!」
何となくだと思う。拒絶の気配を察した真矢さんは作り笑いを浮かべ、身を引いた。
ごめんなさいと心の中で謝った。