工業地帯戦
新型コロナウィルスにかかって、死にかけてました
俺はメルフェスが現れた海岸沿いの工業地帯にブレイブジェッターで急行すると、ヴァレッドが既にメルフェスと交戦していた。
蟹のような鋏を持つ四足歩行のメルフェス。先程、送られてきた白鳥の通信では「グラーブス」という名称になったと伝えられた。
『ヴァレッドガン!』
ヴァレッドは腰に携帯していた銃を取り出し、グラーブスに放つ。
命中こそするものの硬い甲殻には大したダメージを与えられていない。それどころか殆ど効いていない。
グラーブスは銃弾を諸共せず、ヴァレッドに迫り、その巨大な腕の鋏で殴る。
『グウワァ!』
圧倒的質量を持つ鋏で殴られたヴァレッドは真横にあった建物に叩きつけられる。
「ヴァレッド!」
瓦礫に埋もれたヴァレッドは動けずにいた。
すかさず、グラーブスは刃先をヴァレッドに向け、突き刺そうとする。
やらせはしないと俺は機関砲とミサイルで応戦する。しかし、俺の攻撃は簡単に弾かれて
鋏の先を俺に向ける。何をする気だと考え始めたその瞬間、鋏がゆっくりと開く。そして、開いた鋏の間に電気の糸が走る。
「こいつ! マジか!」
グラーブスは鋏から電磁砲の要領で電撃の銃弾を発射する。電撃の
銃弾は瞬きを許さない程速い。
咄嗟に操縦桿を倒し、機体を真横に傾ける。機体の背面を電撃の銃弾が掠める。
「飛び道具まであるのか!」
横に何回も回転した後に、ブレイブジェッターはピタリと止まり、そのまま、グラーブスの周りを旋回する。
グラーブスが旋回する俺に注目している内にヴァレッドは瓦礫の山から脱出。戦闘機形態に変形すると俺に違反するように飛行する。
『ドウスル! 合体スルカ!?』
さっさと合体して、グラーブスを倒したいのは山々だ。だが、電磁砲の対策を講じない以上、迂闊な合体は死への一通路でしかない。
まだ、勝負を決める場面ではない。
「まずは避難状況だ! 白鳥! 避難状況はどうなってる?」
『今の所、従業員の七割が避難完了している!』
「七割!? あとの三割……いや! ヴァレッド! 白鳥! 北の倉庫に人影が見えた! もしかしたら!」
まだ全員の避難が終わっていないことを知ったその瞬間だ。
少し先のところに建つ倉庫の窓にグレーの作業服姿の男性達が確認した。
それだけならただ救助に行けばいいだけだ。問題はただ一つ。
『不味いぞ! そのままグラーブスの進行を許したら!』
グラーブスが倉庫に向かって進行しているということだ。
まるで倉庫にいる人間をわざわざ狙いに行っているかのように一直線に。
このまま救助に行ったところでグラーブスの妨害は確実。加えて、戦闘を行いながら救助は不可能で仮に行えば数人の犠牲には目を瞑らなければならない。
どうする。いや、考えるまでもない。
同時に行う。どちらがグラーブスを抑え、その間に救助をする。
その為に俺達はいるんだ。
「よし! 俺がグラーブスの揺動する! ヴァレッドは逃げ遅れた人の救助を頼む!」




