練度不足
8月にHGドムの再販は嬉しい
でも、一番欲しいのはリックドムⅡなんだよなぁ……
限界を超える為に限界を知るか。
確かに今回の訓練で無理にドリラを引っ張ったおかげで機体がガタついてしまい、合体にも失敗し、失敗後のリカバリーも行えなかった。
やはり、機体に無茶をさせるようなやり方は積極的にやらない方がいいか。
「今は二人とも戦闘の経験が少ないからミスも仕方ない。特に勇気はまだ素人でしかない。だが、全て都合よく済むとは思うな」
「手厳しい……」
ブレイブジェッターのパイロットに選ばれてもなお、素人呼ばわりされるのはまだ十分に認められていないような気がして、ショックだ。
でも、そんな程度でへこたれるつもりはない。
なら、認められるよう強くなればいいだけの話だ。
「ヴァレッドはあまり建物を盾にしてくれるな。まだ避難が間に合っていない可能性もあるからな」
『了解シマシタ』
ヴァレッドもまだ未熟だった。
確かに建物の中に人が残っている可能性もゼロではない以上、安易に盾代わりにするのは得策じゃない。
それに建物が破壊されればされるほどそれだけ復興に時間がかかる。
と言っても俺達だって命を懸けて戦っている以上、完全に守りながらというのは少し厳しいことではある。
「それなら、被害が出る前にメルフェスを倒すべきじゃないか? もう少しアグレッシブに攻めて好機を作る。攻撃は最大の防御と言うだろ?」
正直、今の俺達では合体しないとメルフェスとは互角に戦えない。
あんまり長く見合っていても不利でしかない。それなら開始直後から疾風怒濤と言わんばかりに攻めて、メルフェスの動きを止める。
そして、その隙に合体して、一気に畳み掛けるのがいいと俺は思う。
だが、ヴァレッドはその戦い方に難色を示す。
『シカシ、闇雲ニ攻メレバ返リ討チニナルカモシレナイ。ソノリスクヲ考エレバ慎重ニナッタホウガイイ』
「だけど、持久戦になったところでこっちが有利になるとは限らない。なら、攻めてもいいんじゃないか」
『勇気ハ攻メスギダ。モウ少シ状況ヲ見極メテモ問題ハナイハズダ』
「避難する人達の為にメルフェスの注意を引き付けるのも俺達の役目だろ」
『我々ガ墜チレバ元モ子モナイ』
「わかってる! でも……」
「二人とも熱くなっているな」
ヒートアップする口論を仲裁するかのように白鳥が割って入ってくる。
子供同士の言い合いに白鳥は呆れて仲裁に入ったのかと思っていたが、その表情にはそんなマイナスなものは浮かんでおらず、寧ろ、喜んでいるように見えた。
「ヴァレッドは確かに慎重になりすぎるきらいがある。シミュレーションでも攻める機会があっても攻めない部分はあった。それは改善すべきだ。逆に勇気は攻めすぎだ、撃墜されてもおかしくない部分は少なからずあった。君達が墜ちれば間違いなく世界はメルフェスに蹂躪されるだろう」
『プロフェッサー。ソノ見解デハ私達ハドウ戦エバ宜シイノデスカ?』
「それは二人で折り合いをつけろ。残念ながら戦うのは私ではない。君達だからな」
『デスガ!』
あくまで一人の大人として、技術者としてのアドバイスで留めておくか。ただ、受け入れ、求められた答えを提示するのが大人の役目ではない。敢えて、突き放し、答えを出させるのも大人の役目というのか。
特に俺達は戦闘中に幾度となく決断をしなければいけなくなる。いちいち白鳥に問うのも時間の無駄であり、それに一番納得のいく答えを出せるのは紛れまなく、戦いの空気を味わっている俺達だ。
ヴァレッドは自律し、思考することができるがあくまでAIだ。俺達人間のようなゼロから思考し、反射的に坑道するのはかなり厳しいだろう。
逆に人間で一以上に発展させるのは厳しく、そこは演算能力の高いヴァレッドの独壇場だろう。
人間の柔軟性とAIの予測を合わせることでエクスヴァレッドは真の力を発揮する。だからこそ、俺達はお互いを理解し合い、戦いで息のあったコンビネーションを行う為に四六時中、共に生活しているんだ。
「わかりました。後は俺達で何とかします」
『勇気! イイノカ!?』
「ここで躓いたら、俺達である意味がなくなるだろう?」
不安になっているヴァレッドに喝を入れるように俺は少し強めに言ってみる。
そんな俺を見て、白鳥は安堵の笑みを浮かべた。
「やはり、私の目に狂いはなかった」
「自己陶酔はいいよ」
「ふふ。まぁ、冗談はいいとしてだ。勇気はメルフェスについては何も知らないだろう?」
「あぁ、地球に攻めてくる何かってことしか」
そういうばメルフェスについては何も聞かされてなかった。あくまで人類の敵という立ち位置しか知らない。
一体、どういう存在でどういった意思で人間を襲うのかなんて何も知らない。
「それなら。教えないとな。メルフェスとはどういう存在なのかを」




