はみ出し者の食事
最近、アイプラのゲームずっとやってる
因みに一ノ瀬怜ちゃん推し
ハルレイ、流行れオラ
カチャカチャと食器と箸の接触する音がリビングに響く。
テーブルの上には白いご飯に豆腐の味噌汁、サラダに焼き鮭と日本らしい食べ物が並んでいる。
日本らしい健康的な食事。何となく、日本のごく一般的な食卓に思えるがその空気にはあるべき団欒はない。
正方形のテーブルに俺と真矢さん、叔母さんと叔父さんがそれぞれ座っているが、誰一人言葉を発さない。ご飯時は黙っているというルールがあるわけではない。食事時とは思えないピリピリと張り詰めた空気が流れていた。
「ゆう君、その腕時計は何?」
そんな空気を崩そうと真矢さんが俺に話しかけてくる。
「これは……退院祝いに院長さんがくれたんだ。よく生き残れたお祝いにって」
俺は腕につけたヴァレッドブレスを上げ、真矢さんに見せる。
「そうなんだ! でも、食事中は……」
「な、なんかヘルスケアがどーこーってのがあるらしくて試してみようかなって。多分、明日からつけない予定」
「そうなの!? それじゃあ、ダイエットにも使えるの!? もしそうなら商品名教えて!」
「あぁ、うん。調べてみる」
「何? 自慢したいの?」
俺は普通に真矢さんによく見て貰おうと腕を上げただけ。
だけど、叔母さんにとってはそんな些細な動作ですら、気に食わないようだ。
「お母さん! ちょっと!」
「私達は退院祝いも何もなくて薄情とでもいいたいのかしら」
嫌味ったらしく言っているけれどまさにその通りだ。
叔父さんと叔母さんが薄情だ。見舞いも一回も来ないし、それどころ退院したことに喜びも心配の声一つもない。本当にどうでもいいと思っている。それどころか死んくれた方が助かると思っている可能性が高い。
だからと言って傷ついているわけではない。俺はこの二人に何求めていないどころか何もしないことを求めている。
「それを売れば治療費や入院費の足しにはなるわよね」
そう言って叔母さんは神経を逆撫でする笑顔を浮かべる。
どうやら今回の件については一切手を出さないつもりのようだ。
別にそれでいい。実は今回かかった費用は全部DATが負担してくれることになる。
寧ろ、貰った方が後のトラブルが増えると思うからこっちから願い下げだ。。
「別に叔母さん達に集るつもりはないですから」
「……そうね。あいつらの遺産がまだ残っているもんね。子供には勿体ない大層な金額が」
「あれは日登家のだ。叔母さん達には関係ないだろ」
心の中で舌打ちする。
こんなに俺を毛嫌いしている叔父さんと叔母さんが何故俺を引き取ったのか。それは遺産だ。両親が事故でなくなったことで保険金や事故相手の賠償金で多額のお金が振り込まれた。
二人はそれに目を付け、俺を引き取り、子供の俺から何とかして騙し取ろうと試みた。でも、俺は当時まだ生きていた祖父から「決して誰も渡してはならない」という言いつけを愚直に守った。子供を騙せず、当初の目的を果たせない二人は腹いせと言わんばかりに俺を虐めてきた。
大人気ないとしか言えないが幼い頃から今も狙い続いていることを考えると相当執念深い。
「今まで誰が面倒見てやったと思っているんだ」
「もうお前も子供じゃない。それならわかるよな?」
「そうやって善意を押し付けて、見返りをふんだくるなんて……最低ですよ」
「うるさいな。あのまま死んでおけばよかったの」
「お父さん!!」
「真矢。こいつの肩を持つのは止めろ。あんなクソ兄貴に売女の息子だ。死んだところで誰も悲しみはしない」
「そうね。あいつらのせいでこっちは色んな迷惑をかけられたんだから」
俺の両親は所謂駆け落ちと同然のことをしたらしい。
と言うのも父には家が取り決めた許嫁がいた。父さんや叔父さんが生まれた磯野家というのはどうやらそれなりに大きな家だった。
許嫁なんて時代遅れの古い慣習だけど、時代に取り残された磯野家はそんなくだらないことに縛り付けられていた。
どうやら父も僕と同じことを思っていたことと、そもそも許嫁のことを快く思っていなかったようで、父は許嫁を他所に高校の同級生である母と付き合い、結婚し、勘当覚悟で家を出たらしい。
そして、その数年後に事故でなくなり、磯野家にとっては碌でもない二人の息子が残ったのだから大迷惑。
なら、引き取らずに施設へと預ければいいものの、くだらないプライドと世間の目。何より金という下心に目を眩んでの結果なのだから自業自得でしかない。
「二人共、いい加減にしないと怒るよ!」
二人の言いように実の娘である真矢さんでも流石に擁護できず、鬼のような形相を浮かべる。
どうして、あんな二人の娘がこんなに人格者なのかと思いがちになる。しかし、二人は真矢さんや他人相手では普通にいい人で俺にだけ当たりが強いだけ。ただただ、俺の事が気に食わないのだ。
「……ご馳走様」
ここは俺の居場所じゃない。喉が締め付けられるような息苦しさに堪えられない。
早々にご飯をかき込み、米粒一つ残さず食べ終えるとさっさと食器をシンクに置いてリビングを後にする。
「どうだ、ヴァレッド。これがここの食事風景だ」
階段に上りながら、今まで一切言葉を発しなかったヴァレッドに話しかける。
『勇気……大丈夫カ?』
開口一番、俺の心配を口にするヴァレッド。身近に俺のことを気づかってくれる誰が増えて、言葉では言い表せない安心感を抱いた。
「平気だよ。いつものことだから。それより、どう感じた?」
『イツモノコトカ。私ハ食事ヲスルコトハ出来ナイ。DATノ基地デノ食事風景シカ知ラナイ。ダカラ、仲良クシナガラ行ウモノバカリト……』
「それが一番いいんだ。ここが良くないだけ。でも、それも人間なんだ。最善を実行できないのが」




