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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
シンクロニシティ
36/117

人とロボット

ダイナゼノンの最終話良かった……


蓬君に甘えて面倒くさい女になる由芽ちゃん可愛い

 何というか凄いことになった。

 俺は何にも見返りもなく、ボランティアで戦うものだと思っていたから尚更驚きが大きかった。

 確かに世界を守る為、命をかけて戦うのだから何にも見返りがないのはおかしい。それにだ。対価や報酬を払う方が寧ろ安心なのだろう。成果や結果に対する見返りが不相応であれば、人というのは次第にやる気を失い、おざなりになる。見返りがあれば達成感ややる気が上がる。組織としても見返りを与えるという使命感やプレッシャーを与えることができる。

 必ずしも無償やボランティアが綺麗事とは限らない。時にはそう言ったやり取りが組織を円滑に回す潤滑油になるんだろう。

 特に俺は数少ない戦える存在。例え、どんな出費や不利益をこうむることになっても俺が組織に存在していることが何よりも利益になるんだろう。


「そう思うと重いな」


 とてつもない期待を背負わされていることに気づいて、頭が痛くなる。

 決して、俺だけの問題ではないんだ。


『脈拍ガ早イナ。不安ナノカ?』


 ヴァレッドの心配そうに問いかけてくる。

 俺は舌打ちを一つする。


「ヴァレッド。あんまり、心を見透かすようなことはしないでくれ」


『ダガ、君ノ体調ヲ管理スルノモ私ノ仕事ダ』


「……ロボットにはわからないか。心ってのは時には隠す物なんだ。何でもかんでも晒すものなんかじゃない。ヴァレッドだって、戦っている最中に思考が読まれたら嫌だろう? それと同じだ」


 このブレスレットには装着者の脈拍や発汗により体調を調べる機能がある。ヴァレッドはその機能を使って俺の体調の変化に気づいた。

 別にヴァレッドはただ純粋に機械的に自分のことをしたまでだ。悪気なんてない。でも、俺にとっては余計なお世話どころか癪に障ることだった。


『ソウカ……。理解シタ。君ハ中々ニ難シイ人ダ。ダガ、一緒ニイルト楽シイ』


「……そりゃあ、多感な思春期な男だ。面倒に決まっている。」


 ヴァレッドの声色は確かに笑っていた。

 一緒にいると楽しい。体がむず痒くなる。嘘のつけないロボットだからこそ純粋な言葉。

 自分でも思う。自分自身でも難しい人間だって。普通の日常を求めていたはずがいつの間にか非日常を思い求めたり、本気になるのが嫌いなのに何もせずに負けるのが嫌だからという理由で本気出したり。

 そんな俺だから寄ってくる人はそう多くはない。だから、楽しいといってくれるのは少し嬉しかったりする。


「あとさ、ヴァレッド。君というのは何か距離を感じて嫌だ。普通に名前で読んで欲しい」


 そんな時に俺は言った。

 これから共に生活をし、命を共にして戦う仲なのに君と呼ばれるのは他人行儀な気がしてあまりいい気分にならない。


『ソウカ。ナラ、勇気デイインダナ』


「よくできました」


 ヴァレッドは俺の我儘を素直に聞いてくれた。

 遠慮がないところや素直なところが妙に子供っぽく見えて、俺は冗談で子供扱いするとヴァレッドはムッとする。


『……勇気。子供扱イハ何カ距離ヲ感ジテ、嫌ダ。普通ノロボットトシテ扱ッテ欲シイ』


 俺は驚愕した。この短時間で皮肉やからかいなんてものを言えるようになるのか。


「からかったのは悪かった……。というか普通のロボットってなんだ!?」


『ソレハPepperサンニ決マッテイルダロウ? 一家ニ一台、アルノダロウ?』


「……確かに社会では馴染みのあるロボットだが、ヴァレッドみたいにそこまで流暢に喋らないし、そもそも一家に一台はないぞ」


『ナン……ダト!?』


 どこで得たのか全く見当がつかないが自分が常識だと思い込んでいたものが常識じゃなかったことにヴァレッドは絶句した。

 確かにPepperは画期的なロボットだが、自分で思考し、饒舌に喋るヴァレッドと関わった後では流石に霞む。


「俺にとっても殆どの人にとっても人間以外でここまで会話するのは初体験だ。だから、試行錯誤しながらになるけどヴァレッドのこと、理解していくつもりだ」


『初体験。ナルホド、私ハ勇気ノ初メテト言ウコトナンダ』


「お前! その言い方はやめろ! 色々と語弊を生むから!」


 突然、馬鹿げた発言に俺は慌てふためく。

 俺だって思春期の男子だ。そういうことの知識はあるし、興味はなくはない。

 だから、冗談でもその言葉は気になってしまう。


『何故ダ? 別ニ問題ハ無イト思ウガ?』


「いや、その……何というか……とても言いづらいが……」


「勇気? 何騒いでいるの?」


 どう説明すればいいのかと言葉に詰まっていると部屋の外から真矢さんの声が聞こえてきた。

 ナイスタイミングだ。


「あぁ……うん! 声に出して勉強してた!」


「そうなんだ! 邪魔してごめん! でも、ご飯できたからキリのいいところでこっちに来てね!」


「わかった!」


 そして、部屋の外からドタドタを階段を降りる音が段々と小さくなっていくのが聞こえる。

 フウと一つ息を吐く。タイミングが良かったがその分不審に思われることとヴァレッドのことがバレるリスクがあった。ハイリスクハイリターンか。いや、意外とローリターンだったかもしれない。


『食事時カ。私モ同行サセテ貰エナイカ?』


「ヴァレッド?」


『一度、家族ノ食卓トイウノヲ見ミタイ』


 俺は口を閉じる。本当に見せるべきかどうか迷う。

 というのもヴァレッドとの望む一般的な食卓というのここにはない。

 違うか。俺という不純物があるせいで暖かい食卓が一気に冷えてしまうのだ。

 そんなものを見せていいものか?

 見せる必要があるとは到底思えない。

 でもだ。俺のことを理解して貰うにはやっぱり、今の現状を見てもらう必要があるかもしれない。


「いいさ。でも、ヴァレッドが望む食卓なんて、ないけどな」

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