やるしかない!
好きな勇者ロボはファイバードです
その台詞を聞いて、高嶺は目を見開いて驚く。
「日登君!? 無茶だよ!! 操作方法もわからないのに!」
「マニュアルニヨル合体ノ成功率ハ……一%。ダメダ! 許可デキナイ」
ロボットの癖に驚いたようなトーンの音声を発し、まるで人間と喋っているような感覚だ。
高嶺とヴァレッドが拒絶する理由はわかる。素人の俺がこれを浮かせている時点でやっとなのに、それ加えて合体成功する可能性は限りなくゼロに近い。
二人の言う通り、俺はこの戦闘機の操作方法なんてわからない。無謀なことなのはわかっている。
だが、死ぬならせめて今出来る全てのことをしてから後悔せずに死にたい。
我儘なのはわかっている。でも、最期くらいは言ったって構わないだろ。
「できないも何もやってみなくちゃわからないだろ! どうせやってもやらなくても死ぬんだ! それなら今できる最大限のことをして、後悔しないように死にたい!」
思いの丈を全て吐いたその時だ。
その瞬間。体に感じたことのない衝撃が走る。
痛みではない。寧ろ、パズルのピースが嵌ったような爽快感。
今まで足りなかった何が埋まったような感覚。
「何だ……この感じ!?」
「シンクロ率……二十八%……見ツケタ!」
ヴァレッドもロボットの癖に何か感じとったらしい。
「……了解シタ! コレカラ合体シークエンスノマニュアルヲ送ル!」
「いいんだな」
「私モ、今ハ君達ニ頼ル他ナイ」
ヴァレッドも覚悟を決めたようだ。
この絶望的な状況ではいくら成功率が低くても取れる意外にも物分りが良くて俺もやりやすい。
そして、パネルに合体シークエンスのプログラムと図面、手順が映し出される。
「途中マデナラ、オートデドウニカスル。君達ハ合体直前ノ微調整ト座標入力ヲ!」
「複雑だな……でも……やるしかない!」
画面に映し出された圧倒的な量と複雑なものを見て、頭が痛くなる。
俺は操縦桿を固く握り締める。
上手くいくだろうか。
額から滝のように汗が流れ落ちる。
喉に何かがつまったように生き苦しくなって、視界が段々とぼやけていく。
失敗したら死ぬ。成功しなければ明日はない。
ワンミスも許されない極限な状況に過度な重圧がかかる。
あれほど、不可能でもやると豪語した癖にいざとなると縮みあがるなんて、何て小心者かと笑えてくる。
「大丈夫だよ」
意識が奈落の底に沈んでいくなか、温かい感触と優しい声が俺を引き上げる。
「高……嶺?」
「日登君ならできるよ。絶対!」
高嶺は真っ直ぐな瞳で俺を見つめる。
果たしてその瞳にはどんな思いが込められているのだろうか。
成功してくれなくちゃ高峰も一緒に道連れなんだがら、
正直、どんな思いがあろうと関係ない。
高嶺のおかげで勇気を与えられた。それだけで充分だ。
「ありがとう。なんか、いける気がする」
操縦桿を握る手が自然と緩む。
そして、再び握り締める。今度は余計な力が入っていない。




