覚悟を決めろ!
一番好きな勇者ロボはファイバードです
このままだと間違いなく、ヴァレッドは負ける。ヴァレットを倒した後、メルフェスは必ず俺達を追いかける。それまでに逃げ切れるだろうか。
周囲を見回す。周辺は壁と化した瓦礫と火に囲まれており、そう簡単に逃げるはいかない。
……いや、逃げ切ったところで何もメルフェスの驚異は残ったままだ。逃げてもいずれ、また暴れるのは確実だ。
だからと言って、このままここにいれば酸素不足、或いは煙を吸い込みすぎたり、崩れた建物の下敷きになって死ぬ可能性が高い。
ロボットが怪獣を倒し、救助を待つことが最善策だが、現時点で一方的にやられている以上、期待はできない。
だが、可能性はゼロではない。
俺は高嶺を背負ったまま、ブレイブジェットが墜落した場所に向かう。
合体に失敗し、緊急着陸したまま放置されているブレイブジェットを見る。よく見ると、落下の衝撃で偶然にもコックピットのキャノピーが開いていた。
どういう結果になるかはわからないがヴァレッドはこのブレイブジェットと合体するはずだった。
だが、オートでの合体はできないようだ。わざわざできないものを無理に行う馬鹿なプログラミングする研究者はいない。
なら、マニュアルならできるということか?
これと合体できれば、この状況を打開できるかもしれない。
いや、無理だ。戦闘機の操作なんてできるわけがない。ましてや、創作物の世界の話だった合体機構を何の理解もなくこなせるわけがない。
「……一か八か!」
何もしなければ俺達は死ぬ。それは確実。
でも、今アクションを起こせばその未来を変えられるかもしれない。
何もせずに死にたくない。
俺は巻き込めせるわけにはいかないと高嶺をどこか安全な場所に避難させたいと思った。
だが、ここに安全な場所なんてない。この場で置いても死ぬ確率かま高い。
「高嶺、俺に……命を預けてくれないか」
「日登……君?」
俺は高嶺を連れたまま、ブレイブジェットのコックピットに乗り込もうとへりに足をかける。
「このままだと俺達は確実に死ぬ。だから……抗うぞ!」
「何を……する気なの!? まさか」
「こいつを動かす!」
高嶺は突然の行動に慌てふためいている
当然だ。未知の機械を都合良く動かせると誰も思わないだろう。
「無茶だよ! 逃げようよ!」
「やってみなくちゃわからない! さぁ、来るんだ!」
「来るって……私も!」
「ここにいたって死ぬだけだ! だから!」
「でも……」
「約束する! 俺は君だけは絶対に守る!」
俺が説得している間にもヴァレッドとメルフェスとの戦闘は続いている。
この惨状を目の当たりにして、普通に逃げても助からないことを気付かされたのだろう。
弱気だった高嶺は覚悟を決めて、コックピットに乗り込もうとする。




