舞い降りる紅の希望
ウルトラマンのガイア着地は美しい
嫌だ……死にたくない。
足元に落ちていた瓦礫を拾い上げ、怪獣に投げつける。当然、石をぶつけたところで怪獣は倒せない。
無論、こんな行動に意味なんてない。でも、何もせずに死にたくない。
悪足掻きくらいさせてくれたっていいだろ。
「グオォ!」
怪獣はゆっくりと俺達に視線を向ける。
無機質で作り物のようなその顔がニヤリと笑う。まるで人を殺すことを楽しんでるかのように。
ただただ、恐ろしい。悪意を持って命を奪う等とは。
こんな危険な生物が人間以外にもいるなんて思いもしなかった。
怪獣は笑みは浮かべたまま、脚を上げ、俺達を踏み潰そうとする。
絶望の底に沈んでいく。
このまま、肉の塊として死んでいくことを覚悟したその時だ。
「サセルカッ!」
機械音声と共に怪獣の画面に巨大で人型の何かが豪快に飛び蹴りをかます。
蹴りの威力は凄まじく、巨体であるにも関わらず怪獣はゆっくりと背後に倒れる。
倒れた衝撃で大地が揺れ、風が起こる。俺は右腕を顔の前にかざし、風圧から目を守る。
「何が……起きた?」
風圧が止み、俺は状況を確認する。
俺の視線の先には立つ赤く鋼鉄の背面装甲。
大きさは怪獣の半分しか程しかないが、それでも十分インパクトのある巨体だ。
前に立つ鋼鉄の巨人はゆっくりとこちらを向き、
「ダイジョウブカ?」
と声をかけてくる。
「ロボッ……ト!?」
俺達の目の前に現れたのは二足で立つ巨大ロボットだ。
ボディは赤と白ツートン。頭は青く、口ら辺覆うマスクのようなものは銀色で、瞳のようなメインカメラは黄色に光っている。
「助けて……くれたのか?」
「ソウダ!」
ロボットは喋ると同時に目を点滅させる。
いくら、現代の科学が発達しているとは言え、巨大二足歩行ロボットが実現しているなんてありえない。
気付かない内に突然、SFの世界に転移してしまったようなそんな感じがした。
「何なんだよ……これは!」
「私ハ、ヴァレッド。"メルフェス"ヲ討伐シニキタ!」
「ヴァレッド? メルフェス?」
俺が話を理解する暇を与えないかのように怪獣−−メルフェスは立ち上がる。
ヴァレッドと名乗るロボットは俺達の前に守るようにファイティングポーズを取り、メルフェスと相対する。
「君達、早ク逃ゲルンダ!」
「あ、あぁ!」
現実離れした光景を飲み込めず、俺達はただ戸惑うしかなかった。だが、守ってくれるならこれはチャンスだ。俺は恐怖で力が抜けた高嶺に肩を貸し、ヴァレッドに促されるまま、再び逃げ始める。




