溶解熱戦
ゲッターロボvsネオゲッターロボのオープニング好き
「高峰! 走るぞ!!」
本能が警鐘を鳴らす。これから最悪の事態が引き起こされると。
高峰の腕が引き継ぎってしまうのではと思う程の力で引っ張り、全速力で走る。
そして、嫌な予感は当たってしまう。
怪獣は口からレーザー状の赤い熱戦を逃げ惑う人々を辿るように吐く。
俺は咄嗟に高嶺を地面に伏せさせ、その上に俺が覆う。
肌を焼くような熱と風が数メートル離れている筈の俺達を襲う。
高嶺は恐怖で小刻みに震えていた。
熱と風が収まり、俺は恐る恐る立ち上がり、後ろを確認する。
絶句した。今まで俺達がいた道は熱線によって人々諸共、跡形もなく消滅し、傍らに建っていた建物の表面は水飴のようにドロドロに溶けていた。
それだけでなく、熱線によって崩壊した建物の下敷きになって潰されたのか瓦礫の山から手と血の川が流れている。
「そんなの……」
先程まで悲鳴と恐怖が広がっていた街が一瞬の内に静寂へと変わった。
あっけなかった。こんな簡単に人が死ぬのか。それも遺体も何も残らないなんて。こんな死に方があるのか。
これでは死んだことすら気づかれない。残されていた者にとっても最悪の事態だ。
「人が……死……」
直視していないとは言え、死を感じてしまった高嶺は恐怖で力が抜け、その場でへたり込んでしまう。
「おい、高嶺! 逃げるぞ!」
ここにいては彼らの二の舞になってしまう。それだけはダメだ。
高嶺の震える手を強く握り、引っ張るが、まるで脚がコンクリートの道路と一体化しているかのように固く、全く動かない。
「高嶺! 落ち着け! 今ここで立ち止まったら次に死ぬのは俺達だ!」
「日登君は痛くないの!? 苦しくないの!?」
パニックに陥っている高嶺はガン開いた目を浮かべながら支離滅裂な言葉を吐くが大体の言いたいことは理解している。
近くで人が死んで平気な訳がない。正直、俺も膝が笑っていて、動かすのがやっとだ。
「痛ましいさ、それは! でも、死者に引っ張られて自分が死ぬんじゃダメだ! いいか!? 俺達は幸運にも生き残った! だから、生きるんだ! 何があっても!」
今は死者を悲しみ、弔う暇はない。俺達が今出来ることは増えるであろう死者の仲間に入らないようにここから逃げること。
ただ、それだけだ。
「割り切れないよ……」
「割り切れないと死ぬんだぞ! そんなの俺は嫌だ! それに折角残った命を無駄にする方が死者への冒涜だ!」
俺は一度、大事故に遭い、多数の犠牲者の中から生還してしまった。
天涯孤独となった俺の周りには敵と呼べる存在しかいなかった。何度も痛くて、苦しい思いをした。その度に死を望んだ。あの時、家族と一緒に死んでいれば良かったなんて思っていた。
今思えば死者に手を引かれていたのかもしれない。
だけど、その手は振り解いた。
そして、振り解いた手で高嶺の手を引く。
生きるために。
俺は生きる。生きて、誰かが生きたかった明日を生きるんだと覚悟を決めた。




