その決着は一瞬
「ギィガァッ!」
ギガースは再び逃げる小型船を睨む。執念深い奴だ。絶対に逃さないとアンカーを発射する。
「させるかっ! ガンバレット!」
だが、ヴァレッドが目を光らせているのだ。護衛対象を再び危険な目に合わせることはありえない。ヴァレッドはホルスターから銃を取り出し、アンカーに向け放つ。銃弾が命中するとアンカーを撃ち落とす。
ヴァレッドを攻撃の手を緩めない。アンカーの次にギガース本体に狙いを定め、トリガーを引く。銃弾はギガースに直撃。初めて受けた攻撃にうめき声をあげる。
「グゴォッ!」
「よし!」
怯んだ隙にレーダーを確認。レーダー上に小型船を表した緑の点が無事、戦闘海域から脱出できたことを確認。これでまず一安心。心置きなく戦える。
操縦桿を握り締め、眼の前の敵に集中する。対するギガースは俺達を交互に睨みつける。真っ赤な目には明確な怒りと殺意が映る。完全に俺達を敵と見なした。
お互いの敵意が激しくぶつかり合う。
「これでいい……うわっ!!」
「勇気!!」
コックピットが上下左右に激しく揺れる。ギガースがブレイブジェッターを海中へと引きずり込もうとする。三半規管がおかしくなり、強烈な吐き気が襲いかかる。
腹から込み上げる物を吐き出さないよう左手で口元を抑えながら、残る右手で激しく揺れるモニターを操作。現在使用できる武器を確認する。すると、一部ミサイルハッチがアンカーに絡まれていない為、使用できるようだ。
「武器は……一部使える! いけっ!!」
このままなら胃の中がシェイクになるどころか俺自身もなりかねない。急いでボタンを押すと同時にミサイルハッチが展開。数十発のミサイルが発射され、ギガースに直撃。
「ギガァァァァ!」
ミサイル攻撃にギガースが怯む。痛みに悶える。その一瞬、拘束が緩む。この隙にペダルを一気に押し込む。ブースターから炎が噴き出て、加速したブレイブジェッターが弾丸のような勢いよく飛び立つ。
「勇気! 無事か!」
「あぁ! まだ目眩はするけど問題ない! それより、どうする!? このまま消極的じゃ、勝てない!」
揺れる脳味噌で必死に考える。
このまま牽制してばかりではギガースを仕留めることはできない。だからこそ、決断しないといけない。
「選択肢は二つだろう。一つは一時撤退。だが、それは事態の先送りにしかならない」
「なら、残りの選択肢……一か八か、合体して仕留める……だな」
「そうだ!」
「なら……やるしかないな! 行くぞ、ヴァレッド! 合体だ!」
「了解した!」
結局、俺達が取る選択肢は一つしかなかった。ここで撤退しても、また同じことを繰り返すだけで被害が増えるだけ。
なら、腹を括ってここでギガースを倒す。
正直に言えば、勝てる見込みは低い。だけど、ゼロではない。何とかして海中での戦闘をを控え、短期決戦で挑む。
それなら……やれる!
震える手を抑えるように操縦桿を固く握りしめる。
そして、モニターを操作し、空中でブレイブジェッターを変形させる。同様にヴァレッドも変形。
「巨大合体!! エクスヴァレッド!!」
「よし! 炎神剣で一気に決めるぞ!」
「炎神剣! チャージアップ!」
空中での合体を終え、間髪入れず炎神剣を抜き、刀身にエネルギーを送る。赤熱した剣先をギガースに向ける。




