身の丈
そうして、DATへスカウトされた私は直ぐに荷物をまとめて、エーオン島に向かった。
島での生活はてっきり一人暮らしかと思ってたけど、まさかの寮での生活。それも現状は男の甲太の二人きりで。初めこそ私の町で戦ったあの英雄と尊敬の眼差しで見ていたけど、真面目で細かい、母親のような感じが一緒に生活していると面倒くさくなってきて、今となって尊敬の「そ」の字もない。
まぁ、家事は趣味とは言わんばかり勝手にやってくれるし、何よりご飯が美味しいから文句は言えないけど。
その後、覚悟やら適正を確認され、DATで役割が決まった。それはパイロットだった。晴れてマリンカイザーの専属パイロットに任命されタ私は日中は学生として学校に通い、大して特別でもない生活を送り、放課後は世界を守る兵士として厳しい訓練に勤しんだ。
意外と辛くはなかった。両親が死んでから一人ぼっちだったら、周りに人がいる安心感とか、賑やかさが心地よかったから屁でもなかった。
正直、甲太は色々と鬱陶しいけどその鬱陶しさが寂しさを紛らわせてくれる時もたまにあった。
たまにだけど。
そんな充実な日々を過ごしている中。訓練の休憩時間が甲太と被った時があった。そして、私ははっきりと物申した。
「あんたって意外と単純なのね」
「はぁ? どういう意味だ?」
甲太は私を睨む。
「基本的に冷静なのよ。作戦とか立てるけどちゃんと理論的で悪くはないわ。ただ、戦闘中にあんな無茶なやり方や動きをしてたら機体に負担がかかって肝心な時に動かくなるわよ」
「多少の無茶は仕方ないだろ?」
「それは理解できるわ。でも、あんたの無茶は多少じゃなくて、『余計』なの。その余計な動きは機体に大きな負担を与えるはず。その負担が足元を救う結果に繋がるのはいくら馬鹿でもわかるはずよね?」
マニュアル通り、セオリー通りの動きというのは手堅い分、読まれやすい。メルフェスには知性があるため、ずっと同じ攻撃や行動を行えば対策されてしまう。
だから、別の動きや作戦、攻撃を絡めないといけない。
私の見る限り、甲太は動きに関してはかなりアドリブを入れる癖がある。
しっかり距離を取りながら砲撃をしているかと思いきや突然、敵に突っ込み、股下に潜り込んで砲撃。走行中に地面に砲撃し、機体を無理矢理でも跳躍させる。
確かに手堅い動きをする相手がそんな予想外の動きをしてくるのはかなり効果的ではある。ただ、動きが無茶すぎる。
だけど、私達の機体は性能が高くても所詮は機械だ。ただでさえ、普通に動かしていても不具合が起きる可能性があるのに機械も想定外の動きをすればさらに確率は高まる。命をやり取りする場所で一つの不具合、違和感で命を落とす結果になりかねない。
いつもは食って掛かる甲太も私の指摘には思い当たる節があるようで気まずそうに視線を逸らす。
「お前って何も考えてなさそうに見えて意外と考えてるんだな」
「何を言ってるの? 私は流金グループの一人娘よ。人々の上に立つ者として他人に気を配るのは当然の使命よ!」
心外な言葉だ。人の上に立つ者は下にいる者の面倒をしっかり見て、育てるのも使命だ。
自分のことばかり考える者は人の上に立つ資格はないと思う。
「人の上に立つか……てか、さり気なく俺を下に見るんじゃねぇ!」
「怒る必要はないわ! 寧ろ、いい上司に恵まれたと喜びなさい!」
「全くそんな立場にこだわって……もしかして、お前は戦うのも使命だと思ってるのか?」
「えぇ。そうよ。それがどうかしたのかしら?」
甲太の問いに私は即答する。
すると、甲太は溜息を吐いた後、真っ直ぐな瞳で私を凝視する。
「……お前からしたら俺が言う事じゃないかもしれないが無茶はするなよ」
「無茶って、あんたに言われたくはないわよ!」
この時、私はどの口で言うんだって甲太の言葉を軽く受け流してしまった。
今覚えばちゃんと受け入れておけば良かったと後悔している。
そうしていれば、私は私に押し潰されることはなかった。




