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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
呪縛を解き放つ蒼き槍
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ノブリス・オブリージュ

勇気爆発バーンブレイバーン……

あれは一体なんなんだ……

 不気味な赤い光に包まれた狭いコックピット内。モニターにCAUTIONの文字が点滅し、危険を知らせる甲高いアラームが鳴り続け、気が狂いそうになる。

 圧迫感しないこの密室はやっぱり怖かった。 

 だけど、あまりにも恐怖を感じ続けると一周回って虚無と成り果てるらしい。

 今の私はただ死者のような虚ろな瞳で虚空を見つめていた。


「私って……なんなんだろう……」


 ふと、私を手を目の前に出す。

 私は何で生きているんだろう。力がありながら、何もできず、勝手に一人でパニックになって、死にかけている。

 混蛋(フンダン)でしかない。私はあの日から何も成長していないただの子供だ。

 何も掴めない手を見つめながら、あの日のことを思い返す。


♢♢♢


 私が言うのもあれだけどかなり恵まれた生まれだと思う。

 中国……世界でも有数の大企業「流金グループ」の一人娘。家族からは愛され、社員含めた周囲の人間は宝のように大切にし、甘やかしてくれた。

 欲しい物は何でも手に入れられた。

 やりたいことは何でもできた。

 好きな場所にいくらでも行くできた。

 全てを手に入れている私には殆ど不自由なんてなかった。

 だけど、不自由がない代わりに必ず守らなければいけない成約があった。

 ノブリス・オブリージュ。そして、他人を尊ぶこと。

 特に他人を下に見て従わせること、顎で使うことは決して許されなかった。普通のお金持ちならば身の回りのことは執事とか使用人にやらせて自分達は楽をする。後はそういう金持ちはその財力と地位の高さから他人を見下し、常に上から命令し、手駒のように扱うもの。

 しかし、私にはそれを許されなかった。いや、流金グループにはそんな傲慢は許されなかったというほうが正しいか。

 過去に言うことを聞かない学校の友達に対して、一度だけ私はグループの一人娘なんだから言うことを聞きなさいと地位を振りかざして、従えようとしたことがある。

 その後、話を聞いた両親は初めて私を殴って叱った。あの時の両親の怖さは今でも忘れない。いつもは私のやること成すこと全て受け入れてくれるくらい優しいのにあの時はまるで鬼のような形相を浮かべていたこと。「恥を知れ!」等と厳しい言葉と共にビンタを浴びせられた。

 そして、私達の生き方を教えられた。

 私達の家族は世間的に見ても富も名声、地位も全て持っている。故に尊敬もされることもあるが必ず嫉妬されることもある。上に立つと自然と他人を見下してしまう癖がある。それは破滅の始まり。私達は決して私達だけの力だけで今の生活を手に入れたわけではない。力を貸してくれた社員や信頼し、利用してくれる顧客がいて成り立っている。だからこ、他人を尊び、人々の規範となるように振る舞わなければならない。

 両親は自他共に厳しい人だった。だけど、嫌われていなかった。町の人も会社の人の誰もが慕っていた。

 厳しいけど、筋の通った信念を持つ両親が大好きだった。そんな両親のような人になりたいと思った。

 だけど、その高潔な精神を持っていたあまり、家族は皆死んだ。

 もう一年程前の話になる。私の故郷にメルフェスが現れた。クワヴェルというクワガタを無理矢理人型にしたようなグロテスクな見た目の怪物だった。

 まるで食べ物を探すかのように建物を壊し、中を探す。中に食べ物---人がいれば口から触手を出し、吸い込んで丸呑みにする。町の人はみんな恐怖に怯え、悲鳴をあげながら逃げ惑う。それが普通だ。

 でも、両親達は違った。パパが殿(しんがり)を務め、流金グループ重役達や流家の親戚達が自分達を他所に住民を避難誘導を行った。

 私は子供だからって社員の女性によって町の人達と一緒に避難することになった。

 あの日、両親が言い放った最後の言葉は今でも耳に残ってる。


「生きて!」


 二時間後。クワヴェルは討伐された。これはDATに入隊してから聞いた話だけどクワヴェルを倒したのは中国陸軍とその援護を受けた甲太のグランドタンクだった。

 DATと軍、そして両親のおかげで多少の犠牲で済んだ。

 その多少の犠牲という襲撃直後にクワヴェルに食べられた人。

 そして、両親を含めた避難誘導を行った英雄達だ。

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