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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
呪縛を解き放つ蒼き槍
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だとしても

『勇気、ヴァレッド。準備はいいか?』


「あぁ! いつでもいける!」


 準備を終えた瞬間、タイミングよく博士から通信が入る。

 俺はそれに答えると博士から「ならば、訓練を始める」と通信を返される。

 俺は操縦桿を前に倒す。そして、エクスヴァレッドは海へと飛び込む。巨大な水飛沫……いや、水柱が立ち、凄まじい衝撃がコックピットを激しく揺らす

 重い鋼鉄の塊が水に飛び込んだのだ。それくらい当然だろう。


「これが水中……」


 モニターに映る果てしない青。

 水の中にいるのに息苦しさはなく、濡れる感覚もない。無論、生身で入水してるのではないからそうなのだけど。そもそも何かに乗って水の中に入る感覚というものが初めてだかは違和感しかない。

 この違和感に慣れようとまず、ペダルをゆっくり踏み込む。いつもならエクスヴァレッドが問題なく動くが、水の抵抗のせいでかなり鈍い。限界まで踏み込む、ブーストを吹かすも大して加速しない。


「ヴァレッド。出力上げられるか?」


『それは問題ない。だが、姿勢制御がままならない以上、上げたところで壁に激突するだけだ』


「溺れるだけだな……。了解。それならこのままのペースで行こう」


 訓練と言えど無茶はしない。感覚として限界がわかった以上、それで十分だ。

 そして、操縦桿を傾け、左右に動くもやはりスムーズにはいかない。

 やはり、水中は地上程の自由はない。俺だって水の中ではかなり動きづらい。いくら、各部に姿勢制御用のバーニアがあれど鉄の塊のエクスヴァレッドではより一層動けなくなるに決まっている。

 さらに地上とは違い、三次元の戦闘となり、前後左右だけでなく、上下の位置取りも重要になってくる。

 そうなると地上以上に運動性能が必要となる。訓練でこの様子なは単体での戦闘はほぼほぼ不可能だろう。

 となると合体が必ず必須になるのは明らかだ。


「リーファは大丈夫か?」


 ならば、早速合体に訓練に映るべきだ。

 俺はリーファに通信を繋ぐ。


「リーファ。聞こえてる?」


 ……返答がない。


「リーファ! 聞こえて! 今から合体に移りたい!」


 もう一度、通信を行うも反応は変わらず。

 通信機器に異常があるのかとモニターを確認するがその様子はない。寧ろ、通信が繋がっていることを知らせるマークが点灯しているため、逆に正常に機能していることを知らせている。


「ヴァレッド。どういうことだ? マリンカイザーの異常か?」


『今、確認している。まずは位置を割り出す、少し待って欲しい』


 ヴァレッドは冷静に状況を分析する。

 その間、俺はただ不安を抱き、焦ることしかできなかった。


『……マリンカイザーが下降……いや、沈んでいる!』


「何!?」


 負の感情が一気に爆発する。

 マリンカイザーが沈んでいるという緊急事態。マリンカイザーに整備不良があったのか!?

 いや、メチャーロ達がそんな杜撰な整備をするはずがない。

 それならパイロット……リーファの異常か!?

 何にせよ、今すぐ助けに行かなければならないのは確かだ。


「ヴァレッド! 今すぐ助けに行くぞ!」


『しかし、今の私達はまともに動けない! 海底に向かえば、私達が上がってこれなくなる可能性が高い!』


「だ、だからって、指咥えて見てろってか!?」


『白鳥達もこの状況を予想している。引き上げる手段はある。だが、マリンカイザーよりも重量があるエクスヴァレッドを引き上げるのは困難だ!』


「……だけど!」


『勇気! 焦る気持ちはわかる! しかしだ! こういう時こそ落ち着け! 冷静になるんだ!』


 ヴァレッドの叱責によって沸騰した頭がゆっくりと収まっていく。

 リーファは死ぬ程苦しんでいる。実際に見ているわけではないから憶測になるけど、以前に体験したトラウマを同じ状況だ。その気持ちだけ確実にわかる。

 だから、その苦しみから一秒でも早く開放してやりたい。俺も似たような苦しみを味わっていたからより入れ込んでいた。

 でも、ヴァレッドの言っていることは確かだ。満足に動けない俺達が救助に向かっても足手まといになる可能性がある。いや、それよりも酷く、救助者が二人になる可能性だってある。

 それは本当の悪手だ。

 冷静に考えてここは白鳥達の動くのを待つのが最善ではある。


「わかった! まず白鳥に連ら……」


『……け…………て……!』


「この声は!」


『や……だ! こ……わい……! 誰か……助けて!!』


 突然、リーファの確かな声がコックピットに反響する。

 今にも消えそうなか細い泣き声。過呼吸を起こしているようで言葉の間に苦しそうな呼吸音が聞こえている。


『勇気! ヴァレッド! 訓練は中止だ! リーファのバイタルが不安定だ! 今すぐ上がってくれ!!』


 今度は白鳥の焦った声が聞こえてくる。

 しかし、酷く冷静になら、集中している俺はあまりに白鳥の声は耳に入らなかった。


「……ヴァレッド! わかってるよな!」


『……私の提案は間違っていなかった。しかし、現在のリーファの不安定なバイタル。過呼吸による予想以上に消費される酸素。それから考えると一刻も早い救助が必要と判断する』


「了解! ということだ! 白鳥! 今からリーファの救助に向かう!」


『なんだと! 海底についてから浮上できるのか!?』


「いけるよな? ヴァレッド!」


『あぁ。私と勇気ならばいける!』


「ということだ!」


『そんな根拠のないことを!』


 白鳥は必死に止めようとするも覚悟を決めた俺達はそう簡単に引き止めることはできない。

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