訓練直前
訓練が始まると俺は小さな空港にあるような早速エクスヴァレッドに乗り込む。合体状態でも腹部のコックピットに届く高所があれば乗り込むことができる。
ここには空港でも使用されるタラップ車があるため、それを使って乗り込む。
コックピットに乗り込むと、早速ボス達が用意してくれた海中戦のOSを確認する。
すると、通信が入る。
『よろしくね……勇気』
モニター越しにでもはっきりとわかるくらいリーファの顔色が悪い。
無理もない。あんな事故を体験したんだ。トラウマになるのも当然だ。
「こちらこそ。だけど、顔色良くないけど大丈夫?」
『……久々で緊張してるの。だから、エスコート頼むわよ』
「うん……でも、無茶はしないで」
『……もしかして知ってる?』
リーファの問いに俺は目を伏せながら首を縦に振る。
『無問題! 気にしてないわよ! 寧ろ、知るべき事実よね。大丈夫、覚悟は……あるから!』
「リーファ……」
気を使われないようリーファはぎこちない笑みを見せた。
本来は俺が気を使わなくちゃいけないのに、逆に気を使わせるなんて……。
そうして、リーファは手を振りながら通信を切る。
「本当に大丈夫かな……」
『心配なのか』
「そりゃあ、そうだ。トラウマってのはそう簡単に乗り越えられないよ。俺だってそうだ……」
トラウマというのはそう簡単に克服できるものじゃない。いや、簡単に克服できたらトラウマなんてものは人間には必要なくなる。
これは本能なんだ。もう二度と命の危険を晒さないように備わった生物の力だから。
俺も事故にあってから数年は乗り物に乗ることすら怖かった。そして、誰かと
『そうなのか……』
「ヴァレッドはあんまりトラウマとかイメージつかないか?」
『あぁ。私は確率を見て、行動を決めるからな。そこは勇気達、人間とは相容れないところだと思う』
「……きっとそれもヴァレッドの役割なのかもな。俺が怖くて動けなくなった時にトラウマなんか抱かないヴァレッドが引っ張る。相容れないからこそお互いの欠点を補えるんじゃないか」
ヴァレッドは何処か寂しげな様子だ。
確かに感情で行動を縛られるのは人間特有の欠点だ。それをカバーするのがきっとヴァレッドの役目なんだろう。
だから、俺がいて、ヴァレッドがいる。一緒に戦う理由なんだろう。
すると、ヴァレッドはどこか嬉しそうにした。
『中々、いい事を言うじゃないか』
「だから、頼むぜ。ヴァレッド!」
『おう!』
俺はモニターを小付き、気合を入れた。




