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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
呪縛を解き放つ蒼き槍
102/117

無謀

 真っ暗な部屋に目が痛くなるような光を放つモニター。だが、部屋にいる全員が真剣な表情でモニターを見つめる。

 モニターに映るのはインドの沿岸警備隊の船四隻。その中心には中型の漁船と思わしき船の残骸。

 それは酷い有り様だ。最早、跡形もなく瓦礫も人一人が乗れそうにないくらい小さく、例え生存者が残って板といたしても辛うじて浮き具になるかならないくらいだ。

 沈没して数時間くらいなら上半身に乗せて救助を待つことができるだろう。だが、時間が経てば経つほど、冷たい海水のよって体力を奪われ、やがて掴む力さえなくなり、深い海の底に沈んでしまう。


「先日、インド洋にて航行していた漁船の残骸が発見された。乗組員の安否は不明だ」


「不明……か」


 モニターに立つ白鳥から伝えられる残酷な現実。

 正直、不明と言ってもこの状況なら生存は絶望的だろう。

 そもそもここまでボロボロにされるなんて一体何が起きたのか?

 普通の事故か?

 それにしても形が残らなすぎる気がする。

 海賊にでも襲われたのか?

 いや、ここまで破壊する意味がわからない。


「俺達が呼び出されたってことはただの沈没ってわけではないよな?」


 俺が一人で原因を考えている間にも甲太が白鳥に質問を投げかける。


「あぁ。何かに襲われた形跡が確認された」


「ただの鮫や鯨なんじゃないのか?」


「ワシもそう考えてみたが……これを見て欲しい」


 すると、白鳥はモニターの画面を切り替える。

 次の画面には漁船の船首だけが映っていた。


「これは?」


「見ての通り、船首部分だ。気になるところはあるか?」


 その画面を見て、一つ気になったことがあった。


「歯型があるし、何か噛まれた跡がある?」


「そうだ。恐らく後部から一口で食われた見られる。そして、この歯型や食べ後、船の大きさを比べ、体長を計算すると約五十メートルの大きさの鮫になる」


「それってメガロドンレベルの大きさよ!? 今現在、存在している生物の大きさなんかじゃないわ!?」


 キャシーを含めて、予想するその大きさに驚愕する。

 ジンベエザメだって十メートルくらいの大きさなのに倍以上の生物が広大な海を潜んでいると思うと恐怖でしかない。

 そして、そのような生物は現在の地球で確認されていない。

 無論、俺達が呼び出された時からわかっていたがこの事故を起こしたのはメルフェスだ。


「メガロドンだったとしても普通の人じゃ手に負えない。結局、俺達の出番じゃないか?」


「それなら世紀の大発見だな。教科書に乗るだろうな。だが、その可能性は低いうえ、言いたくはないが乗組員の生存は絶望的だ。だから、これより、不明生物をギガースと命名し、作戦に入る。いいな!」


 すると、全員が了解と力強く呼応する。

 再び戦いが始まる。

 そして、今度の戦場は今まで全く経験したことない海上及び海中戦に不安しかない。


「それで、海中ってどう戦闘するんだ?」


「エクスヴァレッドであれば水深一万メートルまでは潜れ、行動することはできるが……地上程動けない。本来であればエクスヴァレッドはマリンカイザーと合体し、海中戦に特化した形態になれるが、残念ながらパイロットが今はいない」


 パイロットがいない!?

 ただ驚くしかなかったし、どう戦えばいいかわからず、不安になる。

 

「いないってそれじゃあ……」


「心配するな。その時は俺が乗るだけだ」


 だけど、甲太が頼もしいことを言ってくれたおかげで多少の不安が払拭される。

 しかし、周りの微妙な反応が事の難しさを物語っている。


『だが、グランドタンクとマリンカイザーでは操縦方法が全く違うか大丈夫なのか?』


「大丈夫……と言いたいが流石にきつい。だから、合体にだけ専念する。それ以外はヴァレッドと勇気に任せるがいいか」


『海中では姿勢制御の問題が大きい。データはあるが、実際は海流等の影響があるから正直、参考にならないと考えている。その中で慣れないメンバーでやるのはリスクはかなり大きい』


 ヴァレッドの冷静な分析。これには甲太も「やっぱり無視はできないか」と小さく呟き、受け入れる。

 この前のディカー戦での戦果はきっと好条件が揃っていたのだろう。

 戦闘経験がある地上。乗り慣れたビークル。だからこそ、初見での合体が成功することができた。

 だが、海中となれば周りに水があり、必然的に動きは鈍くなるうえ、地に足をついておらず、動くにも姿勢制御をバーニアをより使用しなくてはならない。また、ヴァレッドの大きさでも無視できない海流だって。

 俺達の今の状況は訓練も一回も行わずに宇宙に放り出されるようなものだ。はっきり言って無茶だろう。

 それでもやらなければいけないのが俺達だ。

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