ヴァレッドフルバースト
「これが……グランヴァレッド!」
ヴァレッドの新たな姿になり、俺は驚愕する。
『勇気! お前はグランヴァレッドの操作に集中しろ! 火器管制は俺とヴァレッドで行う!』
「了解!」
『了解した!』
脚部のキャタピラが下り、稼働。グランヴァレッドは前進する。キャタピラが地面を抉り、まるで唸り声のように音を出しながら突き進む姿は猛獣のよう。
迫るグランヴァレッドを前にディカーは咄嗟に立ち上がり、頭を突き出し、迎撃体勢を取る。
再び頭部からビームが発射される。そのビームをグランヴァレッドは左右に揺さぶりながら回避。その後、キャノン砲をディカーに向ける。
『グランキャノン!』
前進しながら発射されたキャノン砲はディカーに命中。あまりの威力と衝撃にディカーはよろける。
そして、グランヴァレッドはその間に進み、ディカーの目前まで迫る。
「ギャバッ!」
「迫ったぞ……!」
ディカーは体勢を崩しながらも拳を振るい、反抗する。しかし、腰に入ってない拳など当たるわけがない。
体を傾け、回避すると仕返しと言わんばかりにこちらも重い拳を腹に叩き込む。
最早、声すらでない激痛なのか。ディカーは呻き声すら発しない。
さらにグランヴァレッドは左足を軸にし、右脚を上げ、突き出す。その間、キャタピラが稼働し、足裏まで移動する。
「スクラッチキック!」
キャタピラがディカーに触れた瞬間、轟音と共に動き、鉄のように硬い皮膚を削りながら蹴り飛ばす。
蹴り飛ばされたディカーだが、四つの手足をブレーキ代わりにし、勢い殺す。
そして、鹿らしく四つんばいになり、体勢を安定させながら角からビームを放つ。
グランヴァレッドはキャタピラを逆に回転させ、後退。そうしながらも各部に装備されたミサイルを発射し、牽制する。
こちらが消極的な行動をしたことをディカーは見逃さない。四つの手足を使い、これまでに見たことない驚異的なジャンプをする。ミサイルは先程までディカーがいた場所に着弾する。
当然のようにグランヴァレッドに追いつき、あまつさえ頭上を飛び越える。
恐らく、背後を取るつもりなのだろう。
だが、その策は甘いとしか言えない。
『勇気! ヴァレッド! 急転回だ!』
『「おう!」』
甲太の命令を受け、俺はこれから来るであろうGに備える。
身構えた時、左脚の足裏から杭が飛び出て、地面に刺さる。
そして、左脚を軸に後退の勢いそのままに急速反転。
「ギャバッ!」
グランヴァレッドとディカーは相対し、目が合う。
本来の挙動ではありない。だが、ありえないことを可能しなくてはメルフェスに勝てるわけがない。
「二人共! これで決めるぞ!」
『了解した!』
『あぁ! ありったけの弾をぶつける!』
同様したディカーが空中におり、自由に身動きを取れないこの状況は最大の好機だ。
グランヴァレッドはミサイルポッドを全て開き、腕部ガトリングと肩部キャノンを展開。
そして、キャノン砲を下ろし、ディカーに狙いを定める。
甲太とヴァレッドは火器管制を行い、俺は狙いを定める。すると、目の前に拳銃のような形にスコープの付いた操縦桿が現れる。俺は力強く、操縦桿を握り締め、スコープを除く。
「ターゲットスコープ……オン!」
ロックオンサイトをディカーに合わせる。
大まかな標準はヴァレッドがやっているが細かな調整は俺が行う。
ゆっくりと落下するディカーの挙動に合わせながら、ロックオンサイトを下げていく。
「定まった!」
標準が定まった瞬間、グランヴァレッドの両方の足裏が体勢を固定する為、杭が打たれる。
『ヴァレッドフルバースト!!』
そして、展開した全ての火器が轟音と共に火を吹き出す。
発射の反動は凄まじく、杭で固定していてもグランヴァレッドは後ろへと動いてしまう。だが、それだけの火力ということ。
ミサイルの爆発。
キャノン砲の衝撃。
ガトリングの攻撃力。
この圧倒的を火力をディカーといえども、受け切ることなどできない。
全身がボロボロと崩れ落ち、終いには爆発四散。ディカーは跡形もなく消え、撃破される。




