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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
紅蓮の勇者、大地に立つ!
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崩壊する日常

エヴァンゲリオンはロボットアニメなんだよなぁ……

「本当にありがとう。色々、助けてもらって」


「別に俺が勝手に首を突っ込んだだけだ」


「もしかして、照れてる?」


「違う」


 結局、俺は高嶺の両親が経営する病院に夜食を持って行き、俺のお節介が終わった。

 高嶺はニコニコと本当に嬉しそうに笑っている。

 別に感謝されたくてやっているわけじゃない。ただ、自分が見捨てられなかったから、助けた方が納得できたから手を貸しただけだ。


「それじゃあ、私はこっちだから」


「あぁ……」


 彼女は左に曲がって帰宅しようとしたその時だ。

 どこからか地響きが鳴る。

 地震と思い込んだ俺含めた周囲の人々は咄嗟にかがみ、手に持った鞄やリュックサックで頭を守る。

 大きな揺れに不安の声があちこちから聞こえてくる。

 その不安は揺れが長くなると同時に大きくなっていく。

 ずっとだ。ずっと、地面が揺れているから平衡感覚がなくなっていき、自分が地に足をつけていることすらあやふやになっていく。


「おさまらないね……」


「普通じゃない……何だよ……これ」


 一向に収まらない地震に歪な空気を感じ取ったその時だ。

 北の方角から巨大な爆発音が起きる。

 この場にいる人々全員が咄嗟に音が聞こえた方向に顔を向ける。


「人が……浮いている!?」


 地震の影響で地下を通るガスか何かが爆発したのかと思っていた。

 でも、一見すると火災も煙も上がっていない。上がっているのは瓦礫や砂埃。そして、人間だった。


 宙を舞う人間を目の当たりにし、俺は啞然とした。あの人達は死ぬ。助かる道は決してない。死の果てを見てしまい、昔の事故のことがフラッシュバックする。

 だが、あのトラウマと同等の衝撃が追い打ちをかけるようにやってくる。

 砂埃が薄れていくと同時に巨大な黒い影が浮かび上がっていく。

 ティラノサウルスのような二足歩行のシルエットから恐竜かと思った。でも、体は地上と水平ではなく、垂直。ゴジラやゴメスのような怪獣に近いシルエット。

 それに加えて、十階建ての建物から顔を覗かせる程の巨大な体長。

 まるで自分が創作物の世界に転移したようなそんな非現実感を抱いた。

 もし、恐竜なんてそんなものはSF映画のフィクション。怪獣だって特撮作品のフィクション。

 現実にいるなんてありえない。

 そう考えた。いや、そう思い込みたかったのかもしれない。俺はこの目に映る現実をただ、受け入れらなかった。

 そして、黒い影が動いた瞬間だ。


「グオォォォォォォ!」


 鼓膜を破れるかと思うほどの咆哮が街に響き渡る。

 ただの咆哮に関わらず、周囲の建物に亀裂が入り、窓ガラスが激しく振動する。


「建物から離れろ!」


「危ない!」


 咄嗟に呆然と立ち尽くす高嶺を覆い被さるように抱く。

 咆哮による衝撃波によって建物が倒壊し、大きな音共に破片や砂埃、窓ガラスが粉々に割れ、頭上から降り注ぐ。

 人々は必死に頭を鞄や腕で守りながら、地面に伏せる。

 俺の背中に瓦礫の破片が当たり、微かな痛みを感じる。


「大丈夫か?」


 瓦礫の雨が止み、俺は高嶺から離れる。

 すると、高嶺は見たことのない感情的な表情で俺の肩を掴む。


「それよりも、日登君だよ! 怪我してない!?」


「あぁ、少し破片が当たっただけ」


 高嶺は俺の背後に周って、怪我を負ってないか確認する。


「全然、大丈夫じゃないよ! 出血してる! ど、どうしよう!? 止血しないと」


 庇った上での怪我をさせたという罪悪感とこの異様な状況。そして、苦手な血を見て、高嶺はパニックを陥っていた。

「俺は大丈夫だから、速くここから逃げないと!」

 俺は必死に高嶺を宥めようと無事なことをアピールする。

 だが、俺の努力は嘲笑うかのようにより大きな衝撃が起きる。


「か、怪獣だ!」


 一人のサラリーマンが目を見開き、その物体に指差し、恐怖に震える。

 何物かの咆哮によって、粉塵が消え去り、黒い影か顕になった。

 街の中央にそびえ立つ、溶岩石のような黒と固まった血のような濁った赤が混じった不気味な色をした巨大な異形。

 丸太のような太い脚に申し訳程度の生えている小さな腕。

 トカゲのような頭と尻尾に不気味に光る赤い瞳に。鼻先にドリルが付いている。

 恐竜とは似て非なる姿。まるで特撮作品に出てくる二足歩行の怪獣そのものだ。

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