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鋼鉄の勇者 ヴァレッド  作者: 島下 遊姫
紅蓮の勇者、大地に立つ!
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闇に潜む災い

 しんと静まり返った真夜中の山中。

 そっと吹く夜風は心地よい。今の季節が夏とは思えないくらい涼しい。

 木々が擦れる音と焚き木のパチパチと弾ける音はまるで子守の歌のように気持ちがいい。

 そんな静かな森の中で一人の男性がキャンプしていた。


「今宵は月が綺麗だなぁ」


 チェアに座りながら、夜空を見上げる。

 木々の隙間から顔を覗かせる黄金色の満月を肴に淹れたて珈琲を嗜む。

 自然に囲まれ、全身で感じ、心を癒やす。

 ここには男性と静寂の邪魔をする人はいない。

 星の輝きを霞ませる灯りもない。

 空気を汚す排気ガスもない。

 決して、都会では決して味わえない幸福。この幸福を味わう為に男は生きていると言っても過言ではない。


「幸せだ……」


 誰にも邪魔されない幸福に浸る男性。

 その最中。大地が揺れ、ドスンと重い何がバウンドしているような地響きが聞こえてくる。


「な、なんだ!?」


 地震か何かと思った男性は咄嗟に身を屈める。

 早く収まってくれと心の底から願うが一向に収まる気配ない。それどころか揺れと地響きは大きくなっていくばかり。

 ふざけるなと理不尽に対して怒りを抱く。

 揺れが始まって、約五分後。ようやく揺れが収まり、男性は九死に一生を得たと安堵の息を吐く。

 そして、ゆっくりと立ち上がった時。辺りが暗くなっていることに

 満月を影が覆う。当初は雲がかかったのかと思っていた。

 だが、雲にしては動きが速すぎると不可解に思ったその時だ。

 月が血のように赤く輝いていた。 


「何だ、これは?」


 可笑しい。そんな数分で月は赤く輝くものなのか。

 それに先程まで眺めていた月とは思えない程の違和感があった。あくまで衛星という物体でしかない月だが、今見ているものは潤いや光の反射があり、瞳のようだった。


「……変な日だ」


 次から次へと可笑しなことが起きると不思議に思った瞬間だ。生暖かく、生臭い風が吹き荒ぶ。

 今度は何だと再び雲を見上げる。

 男は目を見開き、絶句した。赤い月は消えていた。代わりに見えたのは白い牙と赤い舌。見間違うことのない大きな口だった。


「うわあぁぁぁぁぁ!」


 男は尻餅をつき、失禁する。

 今まで自分が見ていたのは生物だった。それもとてつもなく巨大な。瞳だけで男と同じくらいの大きさ。それなら全体の大きさは一体如何程のものか。

 想像するのなら子供の頃、夢中になった巨体ヒーローの敵である怪獣の設定程の大きさだろう。

 もし、そうなら何故この世界にいるのか。あれは創作物の世界の話じゃないのかとパニックに陥る。

 残念なことに男の目の当たりにしている怪獣は現実であった。怪獣は男に狙いを定め、大きく開けた口を近づける。

 男は咄嗟に立ち上がり、生物から逃げる。だが、男の逃げ足よりも怪獣が襲いかかる速さの何十倍も速かった。


「し、死にたく!」


 それが男の最期の言葉であった。

 次の瞬間、男はまるごと怪獣に食われた。

 怪獣は咆哮をあげる。胃が満たされないことに怒っているかのように。

 そして、次の獲物を探しに行こうとそのまま何処へと移動しようとゆっくりと歩き始める。


「行かせるかよ!」


 その歩みを止めようと言わんばかりに怪獣に砲弾が直撃する。

 

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