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超!!! 天才発明令嬢のパワフル領地改革【コミック連載中】マリアンヌシリーズ1  作者: 守雨


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カタリナお姉さまの参戦     ・

ブックマークと評価をありがとうございました。とてもとても嬉しいです。


 本日は王家主催の公式のお茶会ですよ。私はお姉さまと二人で参加です。

 噂では第一王子のお相手を探す会とも言われてます。私は関係ありませんけど。

 そうそう、お姉さまは最近優しくなりました。そう伝えたら「達観したと言ってほしいわね」と返されました。


 達観って。

 理由は聞きませんでした。聞くな、と心の声がしましたので。

 達観したカタリナお姉さまは、今日も完璧な令嬢です。美しいお姿、上品な仕草。

 そのお姉さまが、私と並んで歩きながら笑顔のままお話をしています。


「第一王子はあなたにご用でしたのに、あの日は私に押し付けて逃げましたよね?」

「いえ、逃げたのではなく、アレクサンドル様が無理矢理腕を引いて…」

「嘘おっしゃい! 示し合わせてたのはバレてましてよ」

「あー。アレクサンドル様、お芝居が下手でしたものね」

「あなたもです!」


 ひいぃ。


「まあ、あなたが贈ってくれた本がなかなか興味深かったので、許してあげます」

「『王子とメイドの秘密の恋』ですか?それとも『氷の将軍の熱い愛』の方ですか?」

「なっ! あなたこんなところで!」


 池に渡された小さな橋の上だから誰も聞いてないのに真っ赤になるお姉さま。

 可愛い。

 その時、後ろからタタタタッと走って来る足音。振り向く暇もなく後ろから突き飛ばされました。

 バッシャーン! と池落ちです。これが悪役令嬢お約束の池落ち。小説では自分で落ちる偽装池落ちなのに、私はちゃんと落とされました。


「ああ。私としたことが、抜かりました」


 顔に張り付く髪をかき上げて目を開けたら少し先で、知らない令嬢とお姉さまも池の中にいる。


「え? なんでお姉さままで?」


 カタリナお姉さまは顔に張り付く髪を気にもせず見知らぬ女性の腕を握っていて。


「この方がマリアンヌを突き飛ばして逃げようとしましたから。腕をつかんで引っ張って一緒に落ちて差し上げましたの」


 強い。達観してる人強い。自分は勢いで一緒に落ちてしまったのではない、とおっしゃっている。

 そのあとはワラワラと走ってきた女官さんたちに連行されて湯を使ったり着替えたり。見知らぬ令嬢も別の部屋に連れて行かれました。


 もちろんお茶会は失礼して、姉妹二人で帰ることになりました。つらいお茶会から逃げられてちょっとニマニマしてたら馬車が出る間際にアレクサンドル様が走って来ましたよ。 

 「私たちは大丈夫」と言おうとしたら、お姉さまが先に窓から顔を出して、結構大きな声を出した。


「ご安心下さいませ。池には落とされましたが、王子のマリアンヌは無事でございます。仇もちゃんと取りました」


 お姉さまが凛々しく報告した。

 え? 王子の? 王子のマリアンヌって言った?

 アレクサンドル王子は「お、おう、そうか。でかした」と戸惑ってましたよ、お姉さまったら。


 私が「お姉さま、私のせいで申し訳ございません」と謝ると、正面を向いたままお姉さまは「妹を害する者は私にとっても敵です」と再び凛々しく言うのです。

 もう、もう、私を殺す気ですか。

 髪が下ろされて常より幼く見えるお姉さまに心臓を撃ち抜かれました。瀕死の重傷です。


「あの方はアレクサンドル様に選ばれるようにと、ご両親にずーーっと言い聞かされて育っているの。同級生の間では有名でした。ご自分でもいつの間にかその気になっていたのかもしれません。だからああでもしなきゃやりきれなかったんでしょう」

「あぁ、そういう背景があったのですね……」

「哀れよね。王子はあなたを見ていらっしゃるのに。こんな方法であなたを貶めて」


 驚いてお姉さまを見ると、お姉さまはこんなときでも背筋を伸ばしてまっすぐ前を向いている。


「お姉さま?」

「そしてそれは私も同じ。親に甘えたいのに甘えられず、あなたにだけ優しいお父さまを恨んでたの。あなたの才能も妬んでました。あなたは何も悪くないのにね」

「お姉さま」


 目の奥がキリキリしてきて、鼻の奥がツンとしてきて。

 お姉さまが傷ついてたこと、知ってましたとは言うわけにいかなくて、それはもっとお姉さまを傷つけるから、自分の手を堅く握りました。


「自分の本音を認めたら随分と心が楽になりましてよ。醜い自分を受け入れなければ先には進めないし、醜いままなのは絶対に嫌ですもの。ね、今度、マリー農場の子で刺繍が好きな子がいたら、私にも声をかけて。それなら私もお役に立てます」

「お姉さまっ」


 ものすごく熱い涙が大量に出てくるんですけど。私、人間がこんなに大量に涙を出せるとは知らなかったんですけど。


 お姉さまはこの翌日から農場の子供たちと積極的に関わってくれるようになりました。

 そして意外な才能をお持ちでした。


「マリアンヌ、あなた、卵も山羊ミルクも値付けが少々甘いのではなくて? 市場価格を調べるのは商品を売るときの基本ですわよ」


 お姉さまは数字にとてもお強かったのです。

 最近では数字に明るい子を農場の子達から見つけて帳簿の付け方も教えてくれてます。

 その上、「いずれ計算で身を立てられるよう教えて差し上げますから精進なさい」と男の子を叱咤激励してました。


 他にも「農場の商品に付加価値をつけるべきよ」とおっしゃって、料理長を巻き込んで農場の卵とハーブを使った香り高い焼き菓子を考案してるみたい。

 美味しく焼けたお菓子を子供達と一緒に試食したりもなさっています。


 先日は明るい笑顔で「マリアンヌ、商売は思いの外楽しいわね!」と目をキラッキラさせてました。「わたくし、新しい扉を開いた気がする」そうです。


 あ、そうそう、アレクサンドル王子が池落ちのお見舞いとして隣国から輸入したソバの種を大袋でくださいました。大人の男の人が二人がかりで馬車から下ろす程の量です。


 うわわわ!ってジタバタしました。本で知ってずっと欲しかったソバの実。乾燥に強いソバ。

 日照りの夏が来ても領民が飢えずに済む!


「アレクサンドル様!ありがとうございますっ!嬉しい!」


 胸がいっぱいになってお顔を見上げたら、


「父上に『お見舞いにそれは無いだろう、菓子か花が良い』と言われたけどな。でもお前はこちらの方が喜ぶと思ったんだ」


 そうおっしゃって笑っていらっしゃいました。

 笑うと黒い宝石みたいな目がキュッと細くなってちょっと見惚れましたけど、それは言わないでおきました。


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コミック『超!!! 天才発明令嬢のパワフル領地改革1・2・3・4・5巻』
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