62.5話
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隣に横たわる少女から、規則正しい呼吸が聞こえくる。どうやら深い眠りについたようだ。
全身を猫のように丸め、お腹を隠すようにして眠る少女は、まるで母親の胎内にいる胎児のよう。
身体は成熟しても、その愛らしい寝姿は幼い頃と同じだ。そのことに深く安堵する。
寝相は昔から、その人の性格や深層心理を表すと言われている。
確か、胎児のように眠る人は警戒心が強く、依存心が高いんだっけ?
まさに彼女の性質そのもので、僕は思わず笑みを零した。
あどけない寝顔をぼんやりと眺めていると突然、彼女が唸り始めた。
眉間にしわの寄せ、苦しそうに顔を歪めている。
「…うぅ…、や、やめて…」
「…。」
きっと、300年前の夢を見ているのだろう。悪夢に魘される少女を見て、純粋に可哀想にと思う。
僕は上体を起こし、彼女の頭に触れた。すると、淡いサファイアブルーの光が彼女の身体を包み込む。
少女の頬にかかっている栗色の髪を耳にかけ、その露わになった耳にそっと囁いた。
「怖いものは全て摘み取ってあげる。」
湧き出てきてしまった害虫も、知らずのうちに生えていた雑草も、貴女を害するもの全て…。
「だから、何も思い出さなくて良いんだよ。」
そうすれば、僕達の世界は永遠なのだから。
少女は再び穏やかな呼吸に戻る。
少女の中から悪夢が消えたのだ。これで、しばらくは大丈夫だろう。
ホッと一息ついた僕はベッドから降り、少女の身体にそっとシーツをかけてあげた。
「おやすみ、僕のリトルレディ。」
少女の頬に唇を落とし、近くにあるソファーに横たわる。
僕もそろそろ眠りにつこう。明日に響いてしまう。
寝坊した僕を心配する彼女の顔が容易に浮かんだ。そのことにクスリと笑った僕は、青色に煌めいている自身の目を閉じた。
おやすみ、僕達の未完成な世界。




