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ワールド・ノーツ   作者: ドラドラ
3/8

3話目

「・・・にしても、ほんとに真っ暗な所だな。日の光がほとんど入って来ないし、なんというか、夜の森の中みたいだ」


 自分はさっきの部屋から抜け出し、眼下に広がっていた黒い森の中を歩いている。

 かれこれ2時間近くは歩いてきただろうか。ほとんど日の光も入らず、わずかに木の葉の間から差し込んでいる明かりを便りに、ひたすら歩き続けているわけなのだが、どこまで進んでも暗黒が目の前に広がっている。

 さらに、この森は自分しか居ないのかと思うほど静かで、落ち葉や小枝を踏んで歩く音が、不気味に響くばかりだ。

 そんな森の中を一人で何時間も歩いていると、寂しさと恐怖を紛れさせるために、自然と独り言をこぼしてしまう。


「ここから出たらどうしようかな・・・。人がいるところが近くにあるといいけど・・・。そもそも言葉とか伝わるのかな・・・」


 ついさっきまで『死にたい』なんて思っていたのが嘘のようだが、今はこの訳の分からない状況を何とかしたいという思いで、頭がいっぱいだった。こんな場所に後数時間もいれば、いつ気が触れてしまってもおかしくないのだから・・・。

 ・・・それからまた1時間後、「もう自分はここで樹の栄養になるしかないんだ」などと絶望していた時だった。正面の樹を通った先を、光が煌々と照らしているのが目に飛び込んできたのだ。

 自分は無我夢中で、その光に向かって走った。たった3時間ほど森の中をさ迷っていただけだか、まるで数日間真っ暗な箱の中に閉じ込められていたかのようだ。一刻も早く解放されたい一心で走った自分は、ようやく黒い森を抜けた出した。

 ・・・はずだった。


「な・・なんだここ・・・」


 たどり着いたそこは、『全てが夕焼け色に染まった森』だった。

 樹や木の葉が紅葉のような、美しい紅色になっているだけでなく、樹の幹から雑草に至るまでの何もかもが濃いめの赤色から薄いオレンジ色になっており、見たこともない絶景を作り出している。

 自分はあまりの美しさに目を奪われ、思わずため息をついた。これはきっと今まで頑張ってき、たごほうびなのだろうか。だが、そんな感動の瞬間は長くは続かなかった。


「・・なんかくさいな、ここ」


 黒い森からでて来た瞬間は気がつかなかったが、空気を吸い込む度に、生臭いような、鉄のような臭いがするのだ。そんなに強い臭いではないが、不快な臭いに若干の吐き気を覚える。


「あんまり長居はしたくないな。綺麗だけど臭いし」


 自分は細長くなった鼻を根本で抑えながら、再び出口を目指して歩みを進めた。

 周りが自分とよく似た色をしているので、万が一の時は保護色っぽくていいかなとも思うが、幸いここにも生き物のいるような感じはない。「まぁこんな臭いのする場所で生活するようなやつもいないか」と勝手に解釈をする。

 それから30分程歩いた所で、自分は少し一休みをした。2年間ベットで生活してきた上に、元気な頃ですらここまで休まず歩き続けたことも無かったので、筋肉痛などを覚悟していたのだが、この体は思ったより屈強で、たいして疲れているといった感じ最もな無かった。

 とは言ったものの、さすがにお腹は減っていて、腹の虫はさっきから鳴りっぱなしの状態だ。

 何となく食べられそうな物を探すためキョロキョロと周りを見てみるが、特に木の実が成っていることもなく、「そもそも知らない木の実とかって、食べてもいいものなのか?」という最もな疑問が浮かんだ所で、食べ物を諦めて歩くことにした。

(森の外に出れば多分なんとかなるだろう)

そう考えなければ、こんなことはやってられない。

 ・・・空腹に耐えながら、何分歩いただろうか。ぐぅ~と鳴る腹をさすりながら進んでいると、臭いがだんだんと薄れているが感じられた。森の出口が近づいていることに安堵した、その時だった。

 突然、背後からドシドシと何かが大きな音を立てているのに気がついた。自分は何事かと驚き、パッと後ろを振り返る。

 数秒後、姿を現したその生き物は、パッと見サイにも似ていた。だが、その大きさと形はは自分の知っているサイでは無かった。まず目についたのは角で、サイは角が1本か2本の大きな角を持っているが、この生き物には5本もの角がある。一番の大きなもので1m程あるように見える。次に色。森の色が写ったような赤黒い皮膚を持っていて、まるで時間がたって固まった血のような色だ。最後に大きさ。まだ距離があるが、遠めに見ただけでも3~4m近くはありそうだ。

 それが猛スピードでこっちに向かってきている。トラックの衝突事故を思わせるような構図に対面した自分だが、横に転がり込むような形で、なんとか回避することに成功した。サイの化物はそのまま直進していき、戻ってくる様子も無さそうだった。


「あっぶなかったぁ・・・。あんなのに・・・ぶつかったら、絶対、死んでるって・・・」


 突然現れた怪物に殺されそうになった自分は、しばらくの間、体をガクガクと震わせていた。


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