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チョコレート戦争  作者: 九丸(ひさまる)
6/9

やられたらやり返す。それが僕の流儀。3

 三月に入り、ついに思い描いたチョコが出来たので、僕は母さんと姉さんに試食してもらった。


 ホワイトチョコとビターチョコの二層になっている完成品は、ホワイトチョコにはバニラエッセンスを。ビターチョコには塩と細かく砕いた黒胡椒をほんの少し加えてある。


 二人はひょいっと摘まんでチョコを口に入れた。


「幸一、凄く美味しいわ!」


「うん。これは美味しいね」


 そうか。美味しいか。


 僕の反応の薄さに、二人はクエスチョンマークだ。


 最初に言葉が出てくるようじゃダメだ。本当に感動したら言葉もないはず。


 二人を置き去りにして思案していると、「ただいまあ」と父さんが帰ってきた。


「ほら、お土産あるよ」


 夜の九時過ぎ。少し酔ってるのか、父さんの口調はご陽気だ。


 お土産は、父さん行きつけのバーのマスターからの遅ればせながらのバレンタインデーチョコだった。常連客に毎年あげてるらしい。


「皆で食べよ!」と、黒の紙に赤いリボンの渋い包装を開けた。


 出てきたのは、上にココアの粉末がかかったチョコだった。ふんわりと甘い香りに混じって、どこかで嗅いだ匂いが漂う。


 一つ摘まんで口に入れる。


「んっ!?」


 なんだこれは!? いわゆる生チョコだけど、この風味は?


「なんか保健室の匂いがするね」


 姉さんの一言に僕も納得した。そうだ。保健室や歯科医院で嗅いだ匂いだ。


「そうだよ。これさあ、父さんの大好きなウィスキー入ってんだよね。芸の細かいマスターでね、お客さんに合わせて作ってくれんだよ」


 僕はもう一つ食べて確信した。これだ!


「父さん! マスターに作り方教えてもらって! お願い! 急ぎで!」


「なんだ!? どうした、幸一?」


「頼むよ、父さん!」


「お、おう。じゃあ、明日また行ってくるよ」


 これならいける。これがあれば言葉も出ないはず。フフフっ。


「幸一、キモいよ」


 僕は姉さんのツッコミも気にならなかった。それほどの確信に撃たれていた。

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